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神様の目印  作者: ヒロ
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家令と次の日の朝、一緒に薬草採取に行った。春の野原は一斉に芽吹いていて、風に吹かれて伸びた茎がそよそよしている。わたしは鑑定スキルを使ったけど、家令は鑑定スキルがないはずなのに、さくさくと採取していく。年の功ですよと笑うが凄い。二人で100本採取してギルドに向かう。


「おじいちゃんはギルドに登録するの?」


「昔、登録したことがございますから、無効になっていなければそれを使おうと思っております。」


そういえば、家令だった時のように今もきりりといた服装をしているが、森の裾野だといえ、薬草採取したのに、足元も服も汚れていない。なんか凄いね。

家令の、ギルドの登録は生きていて、シルバークラスだと判明した。いやいやおじいちゃん!若い頃登録したって何していたの?!


「先代旦那様のご依頼でいろいろと・・・。」


お爺様何させていたんだろうか?まぁお仕事じゃ仕方ない?二人で薬草を納品して外に出ると、少しうるさい声がする。何か男女が言い争いしているようだ。



「わたしはこの人のところへ嫁ぎません!」


「な、何を言っているの!お父さんと一緒にお金持ちの良い家を探したのよ。」


「金持ちなら、おまえが幸せになれるだろうと思って契約したんだ。親の苦労を何だと思っているんだ!」


「お父さん、お母さん、この人にわたしを売ったでしょ。知っているんだから。」


「そうだ。わしはその女に30万ノンナ支払ったのだ。早く、その女を寄越せ。」


脂ぎったぶよぶよの中年男がお姉さんの手を取ろうとしたが、お姉さんの近くにいた男の子たちが邪魔をしだす。


「ねえちゃんを連れていくな!父ちゃんと母ちゃんの馬鹿!!」


30万ノンナって、前世でいえば300万円ぐらいだよね。それでこの若くて可愛いお姉さんを、こんな脂ぎってぶよぶよの中年男に渡すって、酷い親だ。


「そこまでだ。そこの君、衛兵に連絡を、背の高い君とそっちのベストを着ている男性はそのご両親を抑え込んでくれ。」


家令がてきぱきと周りの人に指示を出しつつ、脂ぎったぶよぶよの中年男を押さえ込む。手際が良い。周りの人も感心している。凄いぞ!おじいちゃん!


「な、なんだ。は、離せ、俺を誰だと思っているんだ!!」


「周りの人もみんな聞いておられたと思う。あなたは人身売買の取引をしたと明言されました。それはこの国では罰せられる。あなたは罪人です。証人として周りの皆さん残っていてください。」


「おう、わかったぜ、俺らも協力しよう!」


「そうよ。人身売買は犯罪よ。わたしも協力するわ。」


周りの野次馬さんたちが、脂ぎったぶよぶよの中年男の付き人みたいな人たちも拘束しはじめる。

家令は脂ぎったぶよぶよの中年男を押さえ込んでいる。家令に指示されたおじさんやおにいさんは被害者の女性の両親が逃げないように捕まえている。そうこうしているうちに衛兵がきたので、この3人は人身売買をしていたと報告をした。


周りの野次馬たちも、『俺も女を寄越せって聞いた!』『俺も、そいつが30万ノンナ支払ったって言っていた!』『契約したって聞いたわ!』とか口々に言い出し、両親と脂ぎったぶよぶよの中年男は最後までうるさかったが、支払った30万ノンナも没収されて、しょっ引かれていった。やれやれ。


緊張の糸が切れたのか、道に座り込んだ被害者のお姉さんとその弟妹らしき子ども達。みんなでぎゅうぎゅうお姉さんを抱きしめている。怖かっただろうな。と、見ていると、座り込んだお姉さんが弟君に手を貸してもらって立ち上がって、


「あの、助けていただいて、ありがとうございます。わたし宿屋のエットです。」


お姉さんと弟妹たち全員で周りの皆さんやわたしたちにぺこりと頭を下げていったので、こっちが逆におろおろしてしまった。ああ、助けたのは家令だ。わたしじゃなかった。


「いえ、どういたしまして。わたくしはトマスと申します。つい、乱暴な声が聞こえてしまって、勝手に手が動いてしまいまして、お節介をしてしまいました。」


ぴしっと立ち少し微笑む家令はカッコいい。被害者のお姉さんも少し頬が赤い。さすがわたしの家令はおじいちゃんだけどイケオジだ。めっちゃくちゃカッコいい。でも、あげないよ。わたしの家令だからね。お姉さんは常日頃しっかりされているんだろう。家令に頬を赤らめながらもきりりとした表情で、


「あの時、間に入っていただけなければ、わたしはどうなっていたのかわかりません。ありがとうございます。」


「いえいえ。でも、大丈夫ですか。わたくしが余計なことをしたことで、あなた方のご両親は罪人になってしまいました。」


「父も母もどうしようもないので、仕方がないです。それに遅かれ早かれ我が家は終わりなのです。」


「どういうことですか?」


「こんなところで立ち話もなんですので、我が家に来ていただけますか、その方が説明も簡単だと思います。我が家はここからすぐそこの宿屋をやっています。」


お姉さんとご弟妹たちに着いて歩いて行くと、本当にすぐそこにその建物は建っていた。ほんと、辛うじて建っているようなぼろぼろの宿屋だ。営業しているのか?大丈夫?

みんなが中に入っていくので、ついて行くと、宿屋の中の食堂に辿り着いた。外はかなりぼろぼろだけど、中は綺麗に掃除されていて、清潔感はある。

どうぞとお茶を出されて素直に飲んでみる。


「あ、美味しい。」


「ありがとうございます。美味しいお茶を出せるように努力したかいがあります。」


「それにしても、先ほど、我が家は終わりというのは一体何故でしょうか?」


「見てのとおり、ぼろぼろの宿屋です。どれだけ安くしても、もう宿泊する人はいません。母が作る料理もいまいちの味で、各部屋も鍵もかからないようなところで、ベッドも藁にシーツが掛けてあるだけ、トイレも共通でお風呂もない。冒険者になりたての人が仕方なく泊まるような宿です。虫に刺されたり、夜に物音が響いて喧嘩になったりもします。ギルドの宿評価も最低で、建物が崩れ落ちる可能性があると先日、営業停止処分が出ました。


それなのに、父が、お酒好きで博打もするので、借金が40万ノンナほどあるのです。それでわたしを30万ノンナで売ったのでしょう。取り立ても数日後です。30万ノンナ払って取り立てをしばらく延期してもらおうとしたのかもしれません。今まで家のために、結婚もせずに働いてきましたが、家のために我慢して後妻に入るのはどうしても出来ませんでした。」


「姉ちゃん、仕方ないよ。あれはダメだ。あんな、ぶよぶよで太って脂ぎったあれはないわ。あんなの、よく父さんや母さんが探してきたよ。酷いよ。」


「借金を払う当てはありません。うちは父や母が次々子を作るので、7人兄弟です。上の弟二人は住み込みで弟子入りしていますが、残り5人でこの宿を修繕してその後再開して切り盛りするのも難しいです。もう終わりなんです・・・。きっとみんなばらばらに働きでることになるでしょう。」


お姉さんも弟妹たちもみんなで固まって抱き合って泣きだしたけど、どうしよ。

んー。


「ねえ、お姉さんとご弟妹たち、うちに来ない?うちで働かない?人手が欲しいの。」


「え?」


「うちは郊外の広い土地におじいちゃんと二人で暮らしているの。これから野菜も作りたいし、料理を作ってくれる人や下働きをしてくれる人がいないの。お給料は出すよ。まずはこの宿の借金も払うよ。おじいちゃん、ご先祖様たちのドレスを持っているんだけど、売れる?」


「奥様のドレスは1着作るのに40万ノンナはしましたね。でも、買うのと売るのは違いますから、少し買い取りはお安くなるでしょう。」


「ドレス2枚ならどう?小さい宝石たくさんついているのもあったよ。」


「それならいけるでしょう。今、お持ちですか?」


「うん、今の家に置いていない物は全部持っているよ。はい。この2枚でどう?」


インベントリの中から濃い紫のパールの飾りのついたドレスと、これまた濃い緋色の小さな宝石がたくさんついたドレスを取り出した。このドレス胸元に大き目の宝石も縫い付けられている。家令が真剣に見て、家令のマジックバッグに仕舞った。


「すぐに出かけて参ります。念のため借金はどちらに?」


「あ、カジマール商会です。」


「サンディ様、しばしこちらでお待ち下さい。」


「おじいちゃん、気をつけてねー。」


家令が宿を出て行ったあと、弟妹のうち、下の女の子二人が騒ぎ出した。


「すっごい綺麗なドレスだった!初めてみた!」


「お姫様みたいなドレスだった!」


「あんなの一度でいいから着てみたいなー。」


「うん、着たい。わたしも着たい。凄く綺麗だった!」


「ん?着たいの?ドレス?」


「うん、だって、色がとっても綺麗で、レースも素敵でふわふわだったもの。」


「ん-、ちょっと待って、えっと、子ども用のドレスもあったはず。根こそぎ持ってきたからね。ほらこれなんてどう?」


インベントリから、何代か前のどなたかの子ども時代のドレスを2枚出してみる。収納した時は、結構古いなって思っていたけど、出したら新品同様だ。ピンク色のシフォンのようなふわふわのものと、黄色い元気な感じでレースが可愛いものだ。今いる二人の妹たちに合うサイズだと思うんだけど、どうかな。


「うわ、凄い!お兄ちゃんはお貴族様なの?なんて素敵なドレス!!」


おう、髪が短いままで、男子の恰好をしていて、そう見せようとしているけど、面と向かってお兄ちゃんと呼ばれるのは少しくる。

できれば名前で今後は呼んでもらおう。そうしよう。


ドレスを出したところ、二人は目を見開いた。顔が輝いたように見える。

女の子はみんなドレスが好きなんだろうか。わたしも綺麗なものは好きだ。

でも、前世でドレス着たことないし、今世でも着たことがないから、自分とは関係ないものって思っている。この子たちみたいにはしゃげないな。

今はドレスのことは、元手タダで、売れば儲かる商品だと思っているんだけどね。


「どっちも素敵!見せて、うわー。可愛いーー。」


「二人とも静かに、落ち着いて、こんな上等のドレス汚したら弁償できないわ。」


「いいよ。二人がこれ着ることできるならあげるよ。」


インベントリにはまだ子ども用のドレス100枚ぐらい入っているからね。離れはいらない物の置き場みたいな感じになっていたからか部屋にぎゅうぎゅうにドレスが詰め込まれていたね。


「ダメです。ダメです。こんな上等なものいただけません!」


「「お姉ちゃん!!」」


「じゃ、お試しで着るだけ着てみたら?」


「「いいの?!」」


「いいよ。着ておいで。」


「あの、一体・・・。」


「うちで働いてくれるなら、全部ちゃんと説明するよ。今はちょっとまだ言えないんだけどね。おじいちゃんにダメって言われているから。あ、妹さんたち、着替え手伝ってあげた方がいいと、思う。ちょっとドレスは一人で着づらいと思うよ。」


「は、そうですね。ちょっと席をあけます。フェムとセクス、後よろしく。」


お姉さんが妹たちを追ってばたばたと食堂から出ていくと、フェムとセクスと呼ばれた弟くんが残った。


「俺がフェムで、弟がセクスだ。今日は姉ちゃんを助けてくれてありがとう。」


「いや、助けたのはおじいちゃんだから、わたしは何もしてないよ。」


「でも、トマスさんもおまえも一緒だろう。今も助けようとしてくれているのはわかる。」


「フェムは賢いね。フェムの兄弟は7人って言っていたよね。」


「ああ、一番上が姉ちゃんでエット22歳、次が外で働いている兄ちゃんたちが、上がトゥヴォ19歳で、下がトゥレー16歳、さっきドレス持って走っていったのが、すぐ上の姉フューラ14歳で次が俺13歳で、すぐ下の弟のセクスが8歳で、一番下の妹がシュー6歳だ。」


「本当兄弟多いね。紹介ありがとう。」


「さっき、おまえの家で働かないかって言っていただろう。何が目的だ。」


「え?目的?人手が足りないからだけど?引っ越ししたばかりで、おじいちゃんと二人で大きな家に住むことになったんだよ。

ギルドに薬草納品したり、ご飯作ったり掃除したり洗濯したり、ポーションを作る練習をしたりしていると時間がないんだ。

本も読みたいし、野菜も植えたい。やりたいことがいっぱいで。

おじいちゃんとどうしようかなって思案していたところだから、手伝いに来てくれると助かる。給与はちゃんと渡すよ。」


「お、そうか・・・。うちなんか、宿屋で働いても小遣いもくれなかった。

働いても、働いてもちっとも生活は楽にならないのに、ぼろぼろの宿を修繕もせずに父ちゃんは酒ばかり飲む。

母ちゃんは父ちゃんの言いなりだった・・・。この宿屋にはいい思い出がない。おまえのところに俺は行ってもいい。」


「フェム兄ちゃん。僕はご飯がちゃんと食べられたら一緒に行くよ!」


「そうか、ご飯はたくさん作ろう。お金はあるよ。」


遠くできゃーっていう声が響く。女の子たちがドレスを着ることができたようだ。ばたばたと足音が聞こえる。


「ねぇ見てみて!素敵でしょ!!」


「わたしも見て!可愛いでしょ!!」


「うん、いいね。二人ともとても似合っているね。」


「フューラ、シュー。待って、なんて早いの、ドレスを着たのなら、お上品にして!」


「あ、そうだ。ドレスを着ているんだもの、お嬢様にならないと!」


「フューラ姉ちゃん、わたしもお嬢様する!」


「ほほほほ、って笑わないと!」


「ほほほほほ?」


ふふふ。ははは。みんなで何だか面白くなって笑ってしまう。

ドレスを着た二人はとても可愛かったけど、小芝居めいた、お嬢様ごっこが可愛すぎた。

笑っているうちに、家令が戻ってきた。


「サンディ様、ドレスは良い値で売れました。そしてこれが借用書です。40万ノンナとおっしゃっていましたが利息がついて、65万ノンナになっておりました。こちらはこちらで宿屋の土地を狙っていたかもしれません。建物はボロですが、立地は良いですし他のお店に作り直そうとしていたのかもしれません。綺麗にすべて支払ってきたので、ここはサンディ様のものとなりました。」


「そうなんだ。おじいちゃんありがとう。ねぇ、みんな、さっきの話の続きだけど、宿屋の借金は無くなったから、ここで働こうと思えば働けるけど、どうする?うちで働く?宿屋はしばらく保留にしていても良いよ。」


姉と弟妹がみんな目を見合わせている。こんなにボロの宿屋、まずは崩れ落ちないように修繕しないといけないし、働いても利益は出しにくいだろう。一度インベントリに入れればなんとかなるけど、こんな街中でやると目立つから、今は無理だ。


「もし、良ければ、サンディ様の郊外のおうちで働かせて下さい。わたしたち宿屋で手伝いをしていたので、家のことは一通りできます。お給料がいただけるのであれば、それを貯めて、この宿屋の借金を返したいです。」


「よし!じゃ、家に帰ろう。持っていく荷物はおじいちゃんに渡して。マジックバッグに入れてもらうから。あ、上のお兄さんたちには連絡しなくて良い?」


「トゥヴォとトゥレーの住み込み先の工房に連絡を入れておきます。」


「サンディ様、帰る前に食料を多めに仕入れておきましょう。」


「あ、そうだね。5人増えるもんね。それに、さっき、セクスとご飯たくさん出すって約束したしね。」


セクスがふふふと笑っている。隣でシューもふふふと笑う。

妹二人とも、先にお着換えしないとね。

あとは、みんなで手分けして、荷物を片付けて持ってくる人、野菜を買う人、肉を買う人、調味料を買う人、お兄さん二人の住み込み先に連絡入れる人と別れて散らばった。

買い物も連絡も終わって、全員集合して、食べ物は全部家令のマジックバッグに仕舞うと家に向かう。


「うちの家、本当郊外の田舎だからねー。一ノ門の向こうで、ここから30分は歩くから疲れたら遠慮なく言ってね。」


「大丈夫です。みんな働き者で体は鍛えていますから。」


エットは笑いながらみんなの気持ちを代弁した。みんなそうだ。大丈夫だというような顔をしている。本当か。まぁダメでも家には帰らなくちゃいけないんだけどねー。

徒歩30分はちょっと遠い。ちびっ子二人が少々ばててきた頃に家に到着。到着したら、みんなが家の前で驚いている。


「すげー。大きいー。それにぴかぴかだ。」


「新築?凄いところに住んでいるんだね。」


「うわー。豪邸か。田舎の家って聞いていたけど、思っていたより凄いな。」


「でも、お庭や畑は草ぼうぼうだねー。」


新築みたいに見える家は、確かに立派に見える。豪農だったんだろうな。10年前何で家を手放したのかは知らないけどね。

急に遠慮しだした姉と弟妹たちを家に招き入れる。


「どうぞ、入って。食堂なら10人座れるから、まずそこに。」


全員がきょろきょろしながら、家の中に入っていく。大きな台所に食堂、ああ、食堂の大きさなは宿屋の食堂並みかも。馴染んだ大きさじゃない。大丈夫。


「ええっと、ようこそ、我が家へ。ここで働いてくれるということで、面倒だけど、契約して欲しい。おじいちゃんが契約スキル持っているから。ちゃんとした真っ当なものだから大丈夫。しっかり読んで良いと思ってからでいいから。」


契約書をみんなに渡す。これは家令のスキルで出てくるのだ。不思議。


「この”主人の不利になることをしない“という主人とはサンディ様のことですか?」


「そう、わたしがこの家の主人になるサンディです。」


「トマス様ではなくサンディ様がご主人様なのですね。」


「はい。サンディ様がご主人様でございます。」


家令が当然ですという顔をして伝えると、エットは恥ずかしそうに少し下を向いたが、契約書に何度も目を通した後、


「わかりました。契約します。あの宿屋で働いてもこれだけ稼げません。借金で弟妹ばらばらに売られるかもしれないと思っていたことを考えれば、全員揃っていることが奇跡です。わたしたちは。ここで働かせていただきます。」


「「「よろしくお願いします!!!」」」


お姉さん、ご弟妹順番に家令の契約スキルで契約していく。あくどい契約はしていない。お互いを守る契約だ。

初めての契約にどきどきする弟妹達が少しテンション高くなってしまったけど、すべての契約が全部終了した。

上から長女のエット、次女のフューラ、三男のフェム、四男のセクス、三女のシュー。セクスとシューの契約はお姉さんが内容を二人に読んであげて、しっかり働くこと、ご主人様の不利になることはしちゃダメだと教えていた。


「改めて、わたしがここの主人サンディです。公爵家の縁の者です。といっても昔のことだけどね。おじいちゃんはその時の家令です。わたしの唯一の家族です。」


わたしにとっては、離れを出てから、この新しい家で家令に教えてもらうまで自分がどのくらいの地位のお貴族様かも知らなかった。公爵家は自分にとっては過去の記号だ。ぜんぜん自分のものだと思えない。でも、この子たちが今後何かに巻き込まれたら危ないから身の危険を避けるためにも、事実として公表したところ。知っていたら逃げられることもあるだろうしね。


「こ、公爵家!公爵家って王家の次に偉いところだよね!!」


「えー。お貴族様なんですか!!!」


「どうなんだろう。今は貴族なのかな?保留中っていう感じ?逃げ出したの。逃亡中かな。だから、不利なことしないっていう契約してもらったの。」


「「「あー。」」」


「別に悪いことはしていなかったけど、軟禁されたうえに、命の危険感じて逃げたっていう感じかな。」


「そこまで内情は知りたくなかったというのか・・・。」


「まぁ契約したから、外には話せないから大丈夫!」


「サンディ様も大変だったんですね。」


「ちなみにサンディも偽名です!本名は知らないの。おじいちゃんは知っているかもしれないけど。」


「サンディ様の本名は、この際必要ないでしょう。」


「そうだね。今はサンディなんで、よろしく!」


「「「こちらこそ、よろしくお願いします!」」」


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