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全員で加護をいただいた後の、先生の神学会への報告は混乱を極めた。加護の件もそうだし、教会の名前が違っていたことも大問題だったらしい。
わたしは先生と美の女神様だと言われていた教会へ一緒に行き、奥の間の古い古いぼろぼろの書簡をいくつも、インベントリの中に収納して復元させた。司祭様や神学会の先生方が読み解いたところ、どうやら600年ほど前に取り違えが発生したらしいということがわかった。この教会自体は1000年以上前に出来たそうだ。600年以前の文書には、ちゃんと日/夜の女神様とお名前が明記されていた。
どうやら、女神の加護が『老いにくくなること』であり、また日/夜の女神像が物凄く美しいものだったことから、誤解され、それが真実であるように風潮され、だんだんそうだったのではないかとなっていき、美の女神様の方が、信者が増えお布施が増えるのではないかと思った司祭の一人が書き換えたのではないかと推測された。
書簡を読み込んでいくと、昔、800年ほど前は今よりもっと加護を持つ人が多かったと記載されていた。毎日のようにみんなが教会に真摯に祈ることが多かったからではないかと推測された。
神学の生徒たちの加護も上級鑑定士の方に観てもらった。加護をいただくまでの経緯やその時どんなことを祈ったのかの聞き取り、その後同じように祈った人が、同じように加護をいただけたのを確認し、正式に発表することになった。
神様のお名前の間違いと加護について公表されると毎日のように教会へ行く人が増えた。皆エゴは入れないこと、真摯に感謝することを心掛けているそうだ。
今後は加護持ちの人が増えそうで、わたしとしては自分が特別じゃなくて少しほっとする。
もちろん、お母様の呪いも調べたところ、やはり呪いではなかった。『日/美の女神様からの目印・興味 マイナス感情を消す』とあったらしい。
それを聞いてお母様が復活したらしい。神様からの加護と同じで、神様から目印・興味をいただいているというだけで、ステータスがあがるというもの。
黒い目も黒い髪も、夜の女神様の写しだとすれば人の目を惹くし、賞賛される。手のひら返しというものだ。
ただし、お母様の虚栄心、無駄に高いプライド、ヒステリー等の悪感情はほぼ消え、普通に普通の落ち着いた品のある公爵家の奥様といったところにバージョンアップされているそうだ。
びっくりである。
まぁ一度も会ったことがないから、前の状態も知らないから今がどう変わっていても結局わたしには関係ないんだけどね。
お母様も黒目黒髪になって5年間、人目を避け、何故自分が呪われなくてはならないのかを嘆き、華やかな王都から逃げるように閉じこもり苦しまれたと思う。八つ当たりしたり、わたしのせいにしないと精神も持たなかったのだろう。だからといって、無視され放置されてきた10年間は戻らないから、お母様に今となっては何の感情も湧かない。まぁ絶望して死ななくて良かったねとは思うけど。
お父様は自分の妻が呪われていたのではなく、神様からの興味であり目印だったと聞かされて、すぐに会いに行かれたそうだ。君を信じていた。君が一番大事だとか言ったらしいが、お母様からは拒絶されているそうだ。
何故に捨てた女にまだ好かれていると思うのかな。不思議だ。
お父様、お母様は社交界にはもう一度出てくるかと思われたけど、そのまま領地にいるそうだ。あまり派手にすると、過去に10年間わたしを軟禁した事実まで穿り出されると怖いからだ。お父様にはスライム魔石の件でまだ働いてもらうし、お母様は領地でうふふ。ほほほと小さなお茶会で人と会え、楽しい時間を持てるだけで満足できると聞いて、本当に母上は変ったのだなとお兄様は感心しておらえた。
そして、二人してわたしに謝罪があった。お父様からは、スライムの魔石と宝石を使った豪華な装飾品が贈られてきた。身につけるかどうかは未定である。お母様からは、長い長いお手紙をいただいた。そこには後悔と懺悔とが入り混じった謝罪ものだったけど、最後の最後でわたしのこれからの幸せが祈られていた。
お母様は成長したんだなって思えた。結婚して子ども産んでも上位貴族のお母様は精神的にお子様だったんだ。だから黒目黒髪の子どもが生まれてきてどうしたらいいのかパニックになっちゃったんだろう。お父様には頼れなかったのも不運だよね。
でも、ちゃんと謝罪して娘の幸せを祈ることができるようになった。
わたしたちは血の繋がった親子だけど、親子として暮らしていなかったから、何の情もないけれど、遠い親戚の方みたいな距離感でこれからもいこうと思う。
お父様はもういいや。頑張って働き続けてくれ。
この後、お兄様がお母様の黒髪に映えるスライムの魔石の髪飾りを贈ったお陰で、スライム魔石のアクセサリーが爆売れし、お父様は更に激務になったとか。
お父様は最愛の溺愛していたお母様に拒絶されたのが一番堪えただろう。自分から呪われたから離れたいといっておきながらだ。
夜の女神様のようだと持ち上げられているお母様だけど、もう天狗になったりしないみたいだ。常識ある慎ましい生活をしていると聞いた。それで更に持ち上げられそうになっているらしいが、王都には出て行くことは無いと聞いている。
呪いの話が呪いではなく神様からの興味、目印だったと公表されてから、お母様を持ち上げる人がいるのと同時に、グレイ様への批判や陰口も無くなっていった。もともと呪われてもいなかったしね。
そうなると、伯爵家の嫡男で、かっこいいグレイ様に女子が群がりかけた。
それをグレイ様は華麗にスルー。
今日も2人で図書室に行く。
「今回の件もあったので、国中の古文書や古い書簡を復元して、いつか、私設図書館を作りたいです。」
と、わたしが将来の希望を述べると、グレイ様が耳元でささやく。
「俺の領地で作るといいよ。」




