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シスターズアルカディアSideC-妖獣ハイスクール物語-  作者: 藤本零二
第1章~妖狐のプライド~
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第14話「“シスターズアルカディア”VS魔王軍⑤」

*


『そして俺が魔王軍幹部が一人、バートラ。

 “ワールドジュウラン”の獣人種、“狼人ウルフェン”との“半魔人ハーフ”だ』



 アタシことハルカと、キョウカの前に立ちはだかるのは、紫色の狼耳に『獣人化』させた両手足からバチバチと紫電を放出させる“半魔人ハーフ”の男、バートラ。



『いささか想定外ではあるが、お前達を倒す計画であったことには変わりはない。

 わざわざ乗り込んできた勇気には敬意を表するが、手加減はせんぞ?』


「ええ、こっちも全力で相手をさせてもらうわ。

 いくわよ、キョウカ!!」


「りょーかいだぞ!!」



 早速キョウカは、両手足を『妖獣化』させ、戦闘態勢に入った。

 アタシも、いつでも精霊術を使ってキョウカをサポート出来る態勢でいたのだが、バートラが先手を打ってきた。



『ふむ、ニ対一ではいささかこちらが不利なので、こちらも一体、追加させてもらうぞ』



 そう言うと、バートラの足下の地面に魔法陣が出現し、そこから魔獣が現れた。

 高さにして3メートル程のアシカのような見た目の魔獣だ。



『我が使い魔“ウォータリア”だ、コイツは、』


「水の魔術を扱う魔獣なんでしょ?

 知ってるわよ、アタシが【グランドクイーン】なんて呼ばれてた頃、何度か戦ったことがあるわ」


『そうか、お前の前世は、“ワールドフラワレス”の魔獣ハンターだった』



 魔獣ハンターチーム“デスサイス”。

 それは、“ワールドフラワレス”のフラウ歴570年~580年代において、特に魔獣の活動が多かった“大暗黒時代”と呼ばれる時代において活躍した、当時最強と呼び名の高かった魔獣ハンターチームの名前だ。


 “デスサイス”は四人組で、メンバーは、【雷神】ヨウ・レーゲンス、【グランドクイーン】ミハル・レーゲンス、【ファイヤーガンマン】ガンジ・ブライア、【モノアイス】カエデ・メイプリル。


 【雷神】ヨウは当然アタシのアニぃのことで、ミハルというのがアタシのことだ。

 ガンジさんはアタシ達の兄貴分で、カエデはアタシ達のカワイイ末っ子という感じだった。

 アタシ以外の三人は、それぞれが単体でも強力な魔獣を撃破出来る程の実力者揃いで、アタシはこのメンバーの中では必要無いのではないか、と思う場面が多々あった。


 でも、そんなアタシにだって必要とされる場面はあった。

 それは―――、



『だが、経験があるからと言って有利だとでも思っているのか?

 ここは、“ワールドフラワレス”とは違うのだぞ?』



 バートラに言われるまでもなく理解している。

 ここは“ワールドアイラン”、“ワールドフラワレス”のように精霊力が無限に存在している世界ではない。

 おまけに、前世とも違い、魔獣ハンターとしての仲間がいたあの頃とも違う。



「ええ、ご忠告どうも。

 でも心配は御無用よ、今のアタシなら、ウォータリア程度の魔獣、どうってことないもの」


『その余裕…、後悔するなよ?』


「それはこちらのセリフよ。

 キョウカ、あの魔獣はアタシが相手をするから、それまでバートラの相手をお願い。

 さっさとウォータリアを倒して、加勢するから」


「大丈夫だぞ!

 自分だって強くなったんだから!

 あんなヤツ、一人でも余裕だぞ!」



 まぁ、確かに単純な強さで言えばここにいる誰よりも強いのがキョウカだけど…



「…分かった。でも、決して無理はしないこと、いい?」


「りょーかいだぞ!」



 こうして、アタシとキョウカの戦いは始まった。




*


『クルルルギャァアアアッ!!』



 アシカのような見た目をした魔獣、ウォータリアの武器は、内側に鋭い刃の付いた両手のヒレと、上顎から伸びた二本の鋭い牙、そして腹に埋め込まれた石から放たれる水の魔術だ。

 とはいえ、水の魔術はほとんど使うことは無く、基本はヒレの刃で獲物を切り刻み、上顎の牙でトドメを刺す、というのがヤツの攻撃パターンだ。



『クルルルルルゥッ!!』



 ウォータリアが左腕のヒレの刃を振りかざしてきたので、アタシはそれに合わせて土の盾を貼る。



「土の精よ、集え!『サンドシールド』っ!!」



 ウォータリアのヒレの刃と、アタシの土の盾がぶつかり、鈍い音が響く。

 大木すら一刀両断するそのヒレの刃は、しかしアタシの盾を一切傷付けることはなかった。



『クルルルルルゥッ!!』



 だが、ウォータリアの攻撃は一撃では終わらない。

 今度は右腕のヒレの刃を振りかざし、アタシの土の盾にぶつけてくる。

 だが、それでも土の盾は破壊出来ないので、交互に左右の腕のヒレの刃をぶつけてくる。


 すると、徐々に盾にヒビが入っていく。

 さすがにこれだけ連続で攻撃を受ければ、アタシの盾はもたない。



 ウォータリアの何撃目かの攻撃で、とうとう土の盾は砕け落ちた。

 だが、砕けるところまでは計算の内!



「砕けし土の盾よ!敵を討つ石片となれ!『ストーンエッジ』っ!!」



 砕けた土の盾の破片に、再び精霊力を込めると、バラバラになった岩石の破片一つ一つがウォータリアへと向かって飛んでいく。



『クルギャァアアアアアアッ!?!?』



 相手が盾を破壊した直後のスキをついての石片攻撃。

 最初のいくつかをまともにくらったウォータリアの皮膚は、石片によってわずかに傷が付くが、その皮膚は厚い脂肪で覆われていて、石片程度じゃ大したダメージは与えられない。

 しかし、バラバラに砕けた石片はまだまだ数があり、大したダメージは無くとも無視は出来ないのだろう、その後も続く石片攻撃に、ウォータリアは両手のヒレの刃を体の前でクロスさせて、防御体勢を取る。

 皮膚よりさらに硬いヒレの刃で受けることで、そのダメージはほぼゼロになったと言えるが、それこそがこちらの狙いだ。

 


 砕けた盾を攻撃術に再利用するというのは、土の精霊術や氷の精霊術に特有の手法だが、少しでもタイミングを間違うと、砕けた盾が消失してしまって、不発に終わってしまうので、なかなかに難しい術ではある。

 なので、複数人パーティでの戦闘においては、ほとんど使うことは無い(使う必要が無い)術なのだが、単独での戦闘においては、こうして敵のスキをつき、次の攻撃に移るための時間を稼ぐためにとても有効な術式となる。



 そうして稼いだ時間でウォータリアの背後に回り込み、両足の裏に精霊力を集め、術を発動する。



「土の精よ、集え!『サンドタワー』っ!!」



 すると、アタシの足下の地面が柱となって盛り上がっていく。

 これは、“土の精霊術師”が擬似的な空中戦を行うために、高い足場を作る術だ。

 本来は、同時にいくつもの高さの異なる土の柱を作り出し、柱から柱へと飛び移りながら空を飛ぶ敵と戦うようにするための術だが、今回は高さが3メートル近くあるウォータリアを、背後の上空から攻撃することが目的なのと、精霊力も限られているため、必要最低限の一本だけを作った。



 そうして足場が上昇している間に、アタシは次の攻撃術を詠唱する。



「土の精よ、集え!『グランドサイス』っ!!」



 アタシは土の鎌を作り出し、両手で構えた。


 これこそが、アタシの切札の一つ、アタシ達のチームがかつて“デスサイス”と呼ばれていた所以の、オリジナル魔術。

 これは、アタシとチームの皆で作り上げたオリジナルの土の精霊術で、通常の土の精霊術である『サンドサイス』とは違う点が一つだけある。


 それは、この鎌には他人の精霊術の力を纏わせて、同時に二属性以上の効果を発揮させることが出来るという点。


 例えば、ガンジさんの炎の精霊術を纏わせて『煉獄の鎌(バーニングデスサイス)』、カエデちゃんの氷の精霊術を纏わせて『氷結界の鎌(ニブルヘイムサイス)』といった具合だ。


 なので、それこそソロではただの土の鎌(『サンドサイス』)と変わらないのだが、今のアタシにはアニぃの加護というチート能力がある。



 土の柱がウォータリアの高さを超えた辺りで、アタシは土の鎌を構えたまま飛び降り、新たな術を詠唱する。

 ちなみに、『ストーンエッジ』を放ってからここまでは、まだほんの数秒しか経っていない。

 最上級クラスの魔獣や、格上の人間相手には致命的なスキになりうる時間ではあるが、ウォータリア程度の魔獣相手では、このスキを付くことは出来ない。

 こうした感覚も、かつての仲間達と戦ってきた経験のおかげだ。



「雷の精よ、我が鎌に集いて、敵を裂く力となれ!『雷神の鎌(ミョルニルサイス)』っ!!」



 雷の力を宿した鎌を掲げ、未だ『ストーンエッジ』の攻撃を防ぐのにひっしで、背中がスキだらけのウォータリアめがけて、振り下ろす!



「やぁあああああっ!!」



 鎌の刃に纏った雷が、ウォータリアの皮膚を覆う厚い脂肪をあっさりと焼き裂き、その焼き裂いた皮膚の隙間から鎌を体内に突き刺し、一気に内臓ごと両断する!



『クルギャアァアアアアアアッ!?!?』



 真っ二つになったウォータリアは、断末魔の叫びをあげながら、地面に崩れ落ちた。

 当時、魔獣のコアを見つけてピンポイントでコアを破壊して魔獣を倒すという手段を使えなかったアタシ達が、それでも数多の魔獣達をほふってきた必殺の一撃、『グランドサイス』。

 この一撃が通じなかったのは、過去に一度しかない、文字通り魔獣達にとっての死神の鎌(デスサイス)



「だから、ウォータリア程度じゃ、アタシにとっちゃウォーミングアップにもならないわ」



 さて、こっちは予定通りさくっと片付けたから、キョウカのフォローへと向かうアタシだった。




*


 ハル姉ぇがウォータリアという魔獣と戦っている頃、自分は魔王軍の幹部のバートラと戦っていた。


 バートラは、“ウルフェン”っていう狼の耳や尻尾を生やした獣人っていう人種と魔人の“半魔人ハーフ”らしい。


 獣人と妖獣の大きな違いは、獣の姿に変化出来るか出来ないかという点。

 それから、妖獣は二属性の力を扱えるけど、獣人は一属性の力しか使えないとか、色々あるみたい!

 まぁ、細かい事は今は関係ないので省略!



『さて、ではお前の相手は俺なわけだが、』


「かかっておいでよ、おじさん!

 自分、“銀毛ぎんもう”の力は使わないでおいてあげるから!

 それで少しはいい戦いになると思うぞ!」


『…ッ!それは、俺を、俺の力を甘く見過ぎでは無いか…?』


「そんなことは無いぞ?

 ただ、自分が“銀毛ぎんもう”の力を使うと、この『たぬき結界』を壊してしまいそうだから」



 これは本当のこと。

 ノゾミ姉ぇ達との特訓で、自分は力の制御を覚えると同時に、力の効率的な使い方もだいたい覚えてきた。

 これまでは、ただがむしゃらに力を使っていたことで、無駄が多かったみたい。

 コップ一杯の水を満タンにするのに、蛇口を全開でひねってた、みたいな感じ?

 そのせいで無駄も多く、肝心のコップの中身も、周囲に水が飛び散って満タンになってなかったりして、本来の、真の自分の力が扱いきれてなかった、ということだ。


 

 だから、ちょっと前の自分だったら、目の前の()()()相手(単純な力の差では無く、戦闘経験などに基づく戦略的な実力では間違いなく相手の方が上なのは分かる)に対し、すぐ“銀毛ぎんもう”の力に頼って暴走していただろう。



『ふん…、後悔するなよ…っ!?』



 バチバチッ!とバートラの纏う紫電が一層激しくスパークしたかと思うと、目の前にいるバートラが、自分の背後からその爪を振り下ろしていた。

 

 残像を残す程の超高速移動。

 だけど、それは雷の使い手なら、出来て当然だ。



 そのくらいは、自分にだって出来る。



 バートラの振り下ろした爪は、自分を真っ二つに切り裂いたが、しかしそれは自分の残像。

 本当の自分は、バートラの右隣に移動していて、炎を纏わせた拳でその鳩尾みぞおちを狙う。



「『炎撃拳えんげきけん』っ!!」



 自分の拳はしかし、バートラの残像を攻撃しただけで空を切る。

 今度は、自分の真上に移動していたバートラは、雷を纏わせた蹴りを繰り出してくる。

 獣人は、“雷の獣術使い”で、全身に雷を纏わせた肉弾戦を得意としているらしい。



『はぁああああっ!!』



 ドガンっ!!と、バートラの蹴りは自分の残像を蹴り飛ばして、地面に大きな亀裂を入れた。



 そこからは互いに残像を攻撃し合う超高速戦。

 バートラは“半魔人”なので、魔術も扱うため、接近戦だけでなく、時に離れた場所から『シャドゥボゥル』などの魔術を放ってくるが、自分も『獄炎弾ごくえんだん』などの遠距離攻撃で対応する。


 ここまでは互角の戦いを続けている。

 互いにダメージを与えられることなく、延々と続くかと思われたこの超高速戦だが、最初に仕掛けてきたのはバートラの方だった。



「『雷刃獄炎爪らいじんごくえんそう』っ!!」



 自分が雷の刃を纏わせた炎の爪でバートラを狙うと、バートラはわずかに身体をひねることで、その攻撃を()()()()

 いや、わずかにかわしきれなくて、バートラの左腕が肩口から切り落とされ、そこから大量の血が吹き出した。



「わぶっ!?」



 その吹き出した血が自分の目にかかって、ほんの一瞬、目をつむってしまった自分。

 その一瞬を逃さないバートラでは無かった。



『ようやく捕らえたぞ!仔狐めっ!!』



 バートラは無事な方の右手で、自分の髪の毛を掴むと、そのまま思いっ切り自分の顔面を地面に叩き付けた。



「ぎゃんっ!?」


『ははははっ!肉を切らせて骨を断つっ!!このまま貴様の頭蓋を砕いてくれるっ!!』



 それから、バートラは自分の髪の毛を掴んだまま、連続で自分の頭を地面に叩き付け続ける。



『はははははっ!!どうした!?俺を侮って本気を出さず、なぶり殺される気分はっ!?』



 バートラは調子に乗って、ガンガンガンっ!!と何度も何度も自分の頭を地面に叩き付け続ける。

 完全に勝利を確信するバートラだけど、残念ながら、こうなった時点で自分の勝利は決まっているのだ。



「『狐妖術・雷光一穿らいこういっせん』っ!」



 右手の人差し指と中指を伸ばして、銃のような形にした指先から放たれた一筋の雷光が、()()()()()()()()右手を嬉々として地面に何度も何度も打ち続けるバートラの背中を打ち抜き、その心臓を貫いた。



『か…っ、は……っ??』



 死にゆくバートラが、背後を振り返って最後に見たのは、指先から煙を上げながら立つ、全く無傷の自分の姿だった。



『な、何、が…?』


「簡単なことだぞ。

 お前は、少し前から自分の『狐妖術』で幻覚を見ていたんだ。

 『狐妖術』ってのは、ノゾミ姉ぇの“真紅しんく六尾ろくび”としての能力、『狐火』の簡易版みたいなものなんだけど、すーっごく簡単に説明すれば、すっごくすっごく出力を抑えた雷による電気で、相手の脳の電気信号を操作して、調整された炎による熱で相手の思考や感覚を操り、相手に幻覚を見せるっていう力なんだけど、つまりは、さっきまでお前が相手をしていたのは、自分の幻覚で、本物の自分はこの通りピンピンしてるんだけど…、もう聞いてないよね」



 自分やユイが特訓で習得した『狐妖術』は、ノゾミ姉ぇの『狐火』程の高度な幻影や幻覚は見せられないし、その効果が現れるまでに多少の時間も必要とする。

 これは、妖力が高過ぎたり、その出力が大き過ぎても使えない、とても繊細な妖力の扱いを必要とする銃だ。


 …出来れば、あまり使いたくない術だけど、こういう戦い方も覚えていかなくちゃ、大切な家族達を守るのは難しくなるからね!



 自分は、すでに事切れているバートラをその場に残し、ハル姉ぇと合流するために、後ろを向いた。

 

 

 すると、そこにはすでにバートラの召喚した魔獣を倒し終えたハル姉ぇがいた。



「あ!ハル姉ぇ!」


「…驚いた、そこまで心配はしていなかったけど、まさか、魔王軍を相手にここまで圧勝しちゃうなんて……」


「えっへへー!自分、ノゾミ姉ぇ達との特訓で強くなったからね!」


「ええ、そうね、強くなった。

 偉いわ、キョウカ!」



 そう言って、自分を抱きしめてナデナデしてくれるハル姉ぇ。



「えへへ♪ハル姉ぇ、だーい好き♪」


「ええ、アタシもキョウカのこと、大好きよ♪」



 こうして、自分達の戦いは終わった。

 後は、アニ様達がヨウコ姉ぇを無事に助け出すだけだ…!

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