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シスターズアルカディアSideC-妖獣ハイスクール物語-  作者: 藤本零二
第1章~妖狐のプライド~
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第13話「“シスターズアルカディア”VS魔王軍④」

 魔王軍幹部達のアジトがあるということで、オレ達は“ワールドアイラン”の手向山たむけやまへとやって来た。


 そこで、幹部のバートラとダイアーナ、及びその部下達を相手に戦うことになったオレ達だったが、オレと“相棒パートナー”のノゾミが相手にすることになったのが、



『私は魔王軍幹部が一人、ダイアーナ。

 “ワールドアイラン”の妖獣種、“妖犬ようけん”との“半魔人ハーフ”よ』



 頭に犬耳を生やし、両手足を『妖獣化』させた“半魔人ハーフ”の女、ダイアーナだった。



「あら、“妖犬ようけん”とのハーフだなんて、(“妖狐”)の相手としてこれ以上相応しい相手はいないわね?」



 ノゾミが、頭に狐耳と尻から狐尾を生やし、両手足を『妖獣化』させながら、そう言った。


 元々“妖狐ようこ”と“妖犬ようけん”は犬狐けんこの仲と言われるくらいに仲が悪く、互いにライバル視しあってきた歴史がある。

 互いに戦闘特化した能力を持ち、好戦的な性格を持っていたことも、そのライバル関係を築いてきた要因にもなっているのだろう。


 しかし『妖魔大戦ようまたいせん』以降、妖獣同士の繋がりは深くなり、そこまであからさまに仲違いすることはなくなり、良きライバル関係という立ち位置に落ち着いている。


 一方でノゾミは、“妖狐ようこ”の中では戦闘面においてやや不向きな能力と性格を持って生まれてきたせいか、“妖犬ようけん”に対してそこまでのライバル意識を持っているわけではなかった(実際、姉妹の“妖犬ようけん”であるアキラに対しても、ずっと姉のような立場で見守ってきたような感じがある)。

 なので、ダイアーナに対してここまで敵意を剥き出しにしているノゾミに、やや違和感を感じたが、恐らくそれはパフォーマンスで、その内では冷静に相手の力量を測り、作戦を考えているのだろう。



『ふふ、ありきたりな挑発ですね?

 しかし、アナタも私と同じで、別に“妖狐ようこ”だとか“妖犬ようけん”だとかのしがらみには興味が無いのでしょう?』


「まぁね」


『フフフフ…♪』


「ふふふ…♪」



 …な、なんだこれ?

 お互いに笑顔なのに、その背後にはドス黒いオーラが立ち上っているように見えるんだが…!?



「確かに、アナタの言う通り、種族間のしがらみなんかはどうでもいいけれど、」


『個人的な感情として、どうやら私はアナタのことを、』


『「大嫌いみたい」のようですね』



 次の瞬間、二人の妖力が一気に膨れ上がり、互いにほぼ同時に地面を蹴って飛びかかっていくと、互いの爪同士で鍔迫り合っていた。



「はぁあああああっ!!」


『やぁあああああっ!!』



 二人の雷の妖力を纏わせた爪と爪がぶつかり合い、バチバチッ!と激しいスパークをまき散らせる。


 よくは分からないが、会ったばかりの二人は、互いに、互いのことを生理的に受け付けないことを本能的に感じ取ったらしい。

 そんな感じで、オレの存在をすっかり無視して、派手にやり合う二人。


 一方のオレは、ノゾミに加勢をしようとするが、



「レイヤは手を出さないで!

 コイツとは、私の手で決着をつける!」


「だ、だけど、」


「い、い、わ、ね?」


「は、はいっ!」



 そう言われてしまえば、オレはただ呆然と彼女達の戦いを見守るしか無かった…



「『雷装炎撃拳らいそうえんげきけん』っ!!」


『『風刃雷撃爪ふうじんらいげきそう』ッ!!』



 ノゾミの雷と炎を纏わせた拳と、ダイアーナの風と雷を纏わせた爪が激突し、衝撃波が周囲に巻き起こった。



「なるほど、“半魔人ハーフ”でありながら、ここまで妖力のコントロールが上手いとは、なかなかやるじゃない」


『お褒めに預かり光栄よ。

 そういうアナタも、私より妖力が遥かに劣る割に、よくやりますわね』



 二人は視線でもバチバチと火花を散らし合う。

 何が二人をそうまでさせるのか分からないが、まぁ、こういうのは理屈じゃないのかもな…

 日常生活でも、馬の合わない人というのはどうしてもいるものだし…



 何はともあれ、ダイアーナの言う通り、妖力だけで見れば、確かにノゾミよりダイアーナの方が大きいのだろう。

 しかし、妖力の扱い方という点ではノゾミの方が勝っている。

 故に、ここまで二人は互角の戦いを繰り広げてきているわけだ。



 このままではジリ貧になる。

 となれば…、



『ならば…ッ!』



 先に仕掛けたのはダイアーナだった。

 ダイアーナが右足でノゾミの腹を蹴り飛ばす。

 対してノゾミは、かろうじて左手でガードが間に合ったが、勢いは止められず、後方へと吹き飛ばされる。


 そのスキに、ダイアーナは背中に翼を生やし、空高く飛び上がってノゾミとの距離を取ると、右手に魔力、左手に妖力を込めて、術を放った。



『『シャドゥ雷華風刃波らいかふうじんは』ッ!!』



 闇の魔術と風雷の妖術を組み合わせた、“半魔人ハーフ”だからこそ出来る合体技“妖魔術”が、ノゾミに襲いかかる。


 対して、ノゾミは吹き飛ばされながらも、真紅しんくに光らせた瞳を術へと向けて、ゆっくりと右手の人差し指と中指を伸ばした。



「『狐火乱舞きつねびらんぶ雷穿らいせん』」



 指先から一直線に放たれた狐火を纏った雷が、ダイアーナの放った妖魔術の一点に穴を穿うがつと、術は一瞬にして霧散してしまった。



『なっ…!?なんですって!?』



 さすがに、まさかたったの一撃で、しかも体勢の整っていない状態から放たれた十分で自身の術が破られるとは思ってなかったのだろう、ダイアーナは驚愕の表情を見せた。


 だが、そのスキは致命的だな。

 まぁ恐らくだが、彼女はそこまで戦闘向きのタイプでは無いのだろう。

 実力は間違いなく高いし、かつてのノゾミならそれなりに苦戦はしていたかもしれないが、実戦経験が不足しているのだろう。


 “真紅しんく六尾ろくび”の姿へと変わっていたノゾミは、一瞬でダイアーナの背後へと回り込み、ゼロ距離からの一撃を放った。



「『狐火乱舞きつねびらんぶ華炎地獄かえんじごく』」



 一瞬にして真紅しんくの燃え盛る炎の華の中に閉じ込められたダイアーナ。



『ぐぎゃぁあアアアアアアアアッ!?!?!?』



 逃げ場の無い炎の華の中では決して燃え尽きること無く、永遠に炎の苦しみを味わい続けることになるという、まさに生き地獄の苦しみを味わうダイアーナ。



『こんの…っ!!調子に……っ、乗るなぁあああッ!!』



 だが、ダイアーナは自身を捕らえていた炎の華を、魔力放射で強引に吹き飛ばした。



『私はッ!!魔王軍の幹部ッ!!

 ビーシャス様に仕えし、誉れある魔族だッ!!』



 ダイアーナは再びノゾミから距離を取ると、両掌をノゾミに向けて、先程よりも強力な妖魔術を放った。



『『雷華風刃らいかふうじんエンドバーストッ!!』』



「何度やっても無駄よ、

 『狐火乱舞きつねびらんぶ雷穿らいせん』」



 ノゾミの一撃で、再びダイアーナの妖魔術は霧散した。



『な…ッ!?そんな馬鹿な…ッ!?

 私の術の方が明らかに威力は上なのに何故ッ!?』


「力の収束の仕方に無駄が多過ぎるのよ、だから最小限の力だけで、打ち消せる」

 

『…ッ!?わけの分からないことをッ!!

 それなら、接近戦でケリをつけるだけよッ!!』



 ダイアーナは、右手の爪に雷を、左手の爪に風の刃を纏わせてノゾミに襲いかかる。

 対してノゾミも、右手の爪に炎を、左手の爪に雷を纏わせて対抗する。


 再びの爪同士による、空中での剣戟が始まったが、先程と少し違うのは、ダイアーナの方に余裕が無いということ。

 彼女の妖魔術が、尽くノゾミに破られてしまったことで、彼女に対抗するには接近戦で仕留めるしかないと思ってしまったこと。


 事実、その認識は正しいのだが、同時に間違ってもいる。



 今のノゾミを倒すには、ダイアーナの実力では不足しているのだ。



『その姿とわけの分からない能力に惑わされたけど…、やっぱり単純な妖力なら私の方が上のようね!!』



 次第に、ダイアーナがノゾミを手数で押していき、ついに、ノゾミの体勢を崩した。

 そこでダイアーナは、今度は距離を離れるのではなく、あえてノゾミの懐に入り込むことで、自身の妖力と魔力を最大限に込めた、トドメの一撃を放った。



『これでトドメよッ!!

 『雷華らいかシャドゥエンドクロゥ』ッ!!

 『風刃ふうじんシャドゥエンドクロゥ』ッ!!』』



 雷と闇の魔力を纏った爪と、風の刃と闇の魔力を纏った爪が、ノゾミの全身を切り裂いた。



『これで…、ッ!?』



 だが、切り裂かれたノゾミはそのままバラバラになって消滅した。



『消え、た…?そんな、何故……?』



「どこを見ているの?」


「私はこっちよ?」



『ッ!?』



 ダイアーナが背後を振り返ると、そこには無傷のノゾミがいた。



「あら、そっちじゃないわよ?」


「こっちが本物の私よ」



『ッ!?!?』



 さらに右隣に、もう一人のノゾミがいた。

 いや、右隣だけではない、よく見れば、ダイアーナの周囲に何人ものノゾミの姿があったのだ。



『ぶ、分身…?いえ、それにしては一体一体から妖力を感じる…、実体を持った分身、ですって…!?』



 そう、ダイアーナはすでにノゾミの術中にハマってしまっていたのだ。

 『狐火』による幻影と幻覚、これによりダイアーナには、ノゾミの分身の全てが実体を持った存在であるように錯覚させられてしまう。

 実際に、ダイアーナが先程倒した分身のノゾミにも、本来は実体などないハズなのに、実体を切り裂いた幻覚を与えられ、さも実体があるかのように錯覚させられてしまった。



「「「「「さて、一体どれが本物の私でしょうか?」」」」」


『お…ッ、おのれぇええええええッ!!!!』



 冷静さを欠いたダイアーナは、闇雲にノゾミの分身へと爪で切りかかっていくが、切っても切っても分身は消えず、むしろどんどんと増えていく。



『な…、何なのよ…ッ!?何なのよこれはぁああああッ!!!!』



 次第に妖力と魔力たけでなく、体力も尽きていくダイアーナ。

 そんなダイアーナへと、()()()()()本物のノゾミが、スッと右手の人差し指と中指をダイアーナへと向けて、トドメの一撃を放つ。



「『狐火乱舞きつねびらんぶ焔華雷穿えんからいせん』」



 ほのおを纏った雷光が、一瞬にしてダイアーナの心臓を貫き、ダイアーナは一言も声を発せぬまま、息絶えて地面へと落下していった。



「容赦ねぇな〜……」


「あら、本気の相手に対して手を抜くほうが失礼じゃない?」



 元の姿に戻ったノゾミがケロッとした顔でそう答えた。



「まぁ、それはそうかもな…」



 そんなわけで、結局オレの出番は全く無いまま、魔王軍幹部の一人を撃破したのであった。

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