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The Baseball Novel  作者: N'Cars
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休養日明け

翌日




 今日の試合の身支度を済ませて、玄関から出た永田はその扉の鍵穴に自宅の鍵を通して右側に回して、鍵を掛けた。

―さて…、いっつもこっち側から行ってるもんな…。こっちから行こう。

 いつもなら出て左側に行くところを、敢えて右側に行った。ここからいつものグラウンドに行くルートは何パターンかあり、今日はそのうちの1つを選んで行くことにした。昨日の出歩きは全て車で行ったが、今日は徒歩、厳密にはトレーニングを意図したランニングで行く。道は変えても、やることは変わらなかった。




NCグラウンド




 グラウンドの駐車場には、既に沢中と相澤が来ていた。2人が駐車場で会話しているところを、ランニング中の永田が国道287号線・国道348号線が重複する長井橋の歩道から欄干越しに見ていた。

「このグラウンドでやったことないけどな…」

「役所で管理してるらしいけどね。利用許可取ってるらしいけど」

「ま、とにかく詳しいことは永田に聞きますか」

 2人は昨日のLINEのやり取りを見ながら話していた。駐車場の車止め用のコンクリートブロックに座って話しているところに、永田がやって来る。

「おはよう」

「あ、おはようさん」

「ちょっと良い?」

「何?」

 沢中は昨日のLINEのやり取りを永田に見せながらこう尋ねた。

「このグラウンドって、知ってんの?」

「いや、オレも良く知らないけど…、何か松浪の家の近くにあるらしい」

「家って…、アイツ今こっち住まいの筈だよね?」

「多分実家のことだと思う。実家の近くって意味」

「あー…、アイツ実家に帰省したのか」

「うん、多分その近くのグラウンドってことだと思うよ」

「OK。祐希」

「ん?」

「響の実家の近くらしい」

「そこにグラウンドあるんだ…良くそんな穴場見つけたな」

 市で管理しているとは言え割と最近に整備されたということもあって、どうやら知る人ぞ知るグラウンドのようだ。

「監督来たらグラウンドに…、って来たか」

 既に来ている2人に次の指示を出しかけたところで、徳山監督が来た。

「おはようございます。お願いします」

「お願いします」

「はい、おはようございます。永田」

「はい」

 3人は徳山監督が車から出たタイミングで脱帽の上挨拶して一礼。永田が徳山監督から倉庫の鍵を両手で丁寧に受け取ると、すぐさま倉庫に向かい、開錠した。

―おっ、皆来たな。

 道具を取り出し始めたところで、他のメンバーも続々と到着した。

「おはようございます」

「おはようございます」

「うん。おはよう。ちょっと早めに道具出して貰ってるだけだがら。焦んねぐで良いぞ」

「じゃあ皆来て早々…、道具運び手伝って」

「うん、言われんでもわかる」

「バケツリレーの要領で行きましょ」

 3人が1列に並んで待ち構える。他のメンバーはその後ろに続々と並び、永田が倉庫から取り出した道具が運ばれて来てはどんどん自分の後ろに並んでいる人に渡していく。

「よし、これで全部だな」

「あれ? バス来てないんだけど」

「今日は遠いがら、バスこっちさ来たらすぐ乗っけれるようにだな…」

「こっちったって、入れるんですかね? マイクロバスが入れるような道幅じゃないですよ、そこの土手の道…」

「うん、だがら」

「だから?」

「少しでも早めにバスの元さ行ってれば、早ぐ済むべ?」

 長井橋の東側とN`Carsがいつも練習しているグラウンドの駐車場の出入り口の間に、最上川の堤防を利用した道路があるが、この道路は普通車1台で道幅が一杯一杯であり、それより幅が広いマイクロバスではとても無理である。

「一昨日まで行ってた北郡球場も十分遠いと思うんですけど」

「酒田はそれよりかかる。それにグラウンドは許可貰って貸し切りにして貰ってるがらな」

「ここ8時発で、10時からあっちのグラウンドで練習…、2時間で着くんすか?」

「着いたら練習」

「貸し切りだからな」

 今更ながらだが、今日のスケジュール、良く考えてみれば移動がタイトなスケジュールである。8時集合・出発で、10時から酒田にある元空き地・現市の管轄のグラウンドで練習で、長井から酒田までの所要時間を考えれば、マイクロバスで最速で行けるルートを使ってもギリギリである。

 とか何とか考えているうちに、マイクロバスが近くまで来た。

「じゃ皆、荷物と道具は自分の後ろに置いて、横に整列して」

 マイクロバスが道路の端に停車するのに合わせて、NCナインは永田の指示で自分の荷物と倉庫から持って来た道具を後ろに置いて、横1列に整列した。

「気を付け、礼! お願いします!!」

「お願いします!!」

 マイクロバスから運転手が降りてきたタイミングで、ナインは永田を先頭に一斉に脱帽の上、挨拶する。

「はい、おはようございます。よろしくお願いします。では荷物はトランクのほうに…」

「はい」

 今日の運転手は一昨日までの人とは違う人だったが、この人もまた人当たりが良さそうだ。

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 運転手が違う人でも、与えられたスペースを受け入れる姿勢は変わらなかった。まず徳山監督がこの案内を受け入れて、ナインもそれに続く。そして運転手が開けたマイクロバスのトランクルームに、続々と道具を積んでいく。

「道具積んだ人からどんどん乗ってってねー」

 NCナインは道具をトランクルームに積むと、自分の荷物を持ってマイクロバスに乗車する。

「お願いします」

「お願いします」

 他のナインが次々に乗っていく中、永田は点呼があるので敢えて乗らずに待つ。

「全員…乗ったな…」

 永田はトランクルームの近くまで回り込んで全員が乗ったことを確認すると、自らも乗り込む。

「お願いします」

「お願いします」

「お願いします」

 永田に続いて、徳山監督とマネージャーの井手が乗り込む。その後、永田は再度点呼を取り確認した。

「…14、オレら足して17、全員います」

 今日は萩原、都筑、松浪の3人は現地で集合するので、マイクロバスの車内には選手と監督、マネージャーを合わせて17人だが、これで全員である。

「わがった。では、よろしくお願いします」

「はい、では安全運転で参りますのでよろしくお願いします」

 点呼を終えた永田が自分の席に着く。その間に、徳山監督が運転手にこう言うと、運転手はこう言ってからシフトレバーをニュートラルから1速に入れて、ゆっくりとマイクロバスを発進させた。


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