ぽよよん島への切符
失恋するたびに小説を書きたくなります。
彼の言葉は、いつも綺麗すぎた。
出会ったのは、なんでもないゴミ拾いのボランティアの帰り道だった。
ゴミ袋を片手に帰路についていたとき、隣にいたのが彼だった。
「お疲れ様です」
そう遠慮がちにお辞儀すると、彼も丁寧に返してくれた。
「その服、可愛いですね。」
彼は、アヒル柄のTシャツを着ていた。
「僕の推しが着てた服なんです。」
「推し?」
私がそう言うと、彼は言うか迷いながらこう答えた。
「韓国の俳優さんなんです。韓国ドラマとか見るのが好きで。」
私も同じように韓国ドラマにハマっていて、同じ人が好きだったから親近感が湧いて嬉しかった。
「その俳優さん、中性的でいいですよね!」
好きなドラマだけじゃなかった。行きたいと思っていた美術館まで同じだった。
私が「いつか行きたい」と言う前に、彼がその名前を口にした。
似ているところが多くて、仲良くなるのに時間はかからなかった。
ある日、彼は言った。
「今度、遊びに来る?」
「どこに?」
「ぽよよん島」
冗談みたいな名前だった。
でも彼は本気だった。
「関わり持っている人は、本当に信用している人だけにしてるんだ。だから、みんなとっても優しいよ。」
彼は、「ぽよよん島」への切符を私の胸ポケットにいれた。
それから何度か、彼は「ぽよよん島、いつ来る?」と聞いた。
「無理にとは言わないよ」と笑うのに、断るたびに少し悲しそうな顔をするのが少し心苦しかった。
それからも切符は、ずっと胸ポケットに入ったままだった。
行きたくなかったわけじゃない。
ただ、彼のことを知りたい気持ちとは裏腹に、その島そのものには、どうしても興味が湧かなかった。




