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砂の国、砂の城 07

王都での部活動は続く。

「演劇部っぽい演劇にはなったけどまだ足りない。」

会計倉渕ミサトの言う「足りないもの」とは

「主張」

冒険譚風ではあるがコントになっている。

演劇部が伝えるべきは「想い」。

「僕はコメディとして良く出来ていると思う。」

一年生赤堀サワの初作品として及第点を与える副部長若宮アオバ。

それに突っかかる会計倉渕ミサト。

「それだけじやダメでしょ。」

ただ面白いだけで終わってしまう。

心に何も残らない。

二人の口論の中、当の赤堀サワの

「テーマ(主題)が決まらないんですよっ。」

決まってこの台詞で振り出しに戻る。

今演劇部はかつて無いほど団結力を失っている。

副部長若宮アオバと会計倉渕ミサトが

プリンちゃん赤堀サワのシナリオを巡り口論を繰り返す。

もう一人の三年生、道具屋笠懸ヒサシは

「俺は口を出さないと決めた。」

と言い続けるだけ。

彼は演劇部を退部するつもりでいた。

皆がそれを知った以上残っている者で解決すべきだと考える。

一年生仕立屋吉岡ハルナは「何も判らない」事を自覚し口を出さない。

彼女はただ律儀に筋トレを続けているだけ。


その中、全員の意見が一致しているのは

主題(テーマ)は赤堀サワが決める」

これは月夜野アカリの意思。

「作者は作品に責任を持たなければならない。」

柱になる部分を他人に任せて果たしてそれが「自分の作品」と呼べるのか。

演者がその意図を正確に汲めるよう最大限の注意を払わねばならない。

そのためには

「作者が本質を理解する必要がある。」

曖昧な情報は演者を混乱に陥れ

観客は正確な訴えを聞くことなく判定を下す。

「君の心の奥にある叫びを主題にするのだよ。」

心の叫びと言われてもなぁ。

(異世界に来るまでの)現状に不満は無い。

家庭内に大きな不和は無い。

高校入学して一週間ほどだがクラスメイト達とは何とかなりそうだ。

健康面の問題も抱えていない。

「それでは恋については?」

恋?

興味無いなぁ。

高校入学したら演劇部に入る事しか考えていなかった。

「演劇部に入って何をしたかったんだ?」


あれ?


何だっけ。

役者になりかたったわけじゃない。

道具屋でも仕立屋でもない。

ましてシナリオを書こうなんて微塵も考えていなかった。

ただ演劇部に入りたかっただけだ。

演劇部員である事が目的だった。

私はもうゴールしてしまったのだ。

「では次のスタートだ。」

月夜野アカリの声が聞こえたような気がして振り向くが誰もいない。


「ああそうか。」

赤堀サワは自分のシナリオをじっと見詰める。

タイトル

「異世界の少年(仮)」

「ひでぇタイトル。」

険悪な演劇部員達はそれぞれが各々好き勝手に自主練している。

赤堀サワは全員呼び付け告げる。

「テーマが決まりました。」

初作品にどれほど詰め込めるのかは判らない

やるだけの価値があるのかもも判らない。

でもこれで行ここう。

「だから皆さん協力してください。」

「具体的に何を協力すればいいの?」

「困難と対処法です。」

主人公には苦しんでもらう。

肉体的にも精神的にも追い込む。

足掻いて藻掻いて最後に

「羽撃かせる。」


演劇部員達に水を差したのは新国王レミーだった。

妹メリアが怪我をしたのは若宮アオバと吉岡ハルナの口から伝えられていた。

その時は

「彼女なら心配ない。」

と二人の演劇部員に笑顔を見せていた。

だが直後、出兵と自ら指揮を執ると長老に告げた。

この数日その長老達の必死の説得により踏みとどまっている。

が、騎士達の支度と船の用意は進められている。

「皆には申し訳ないがほぼ全ての騎士が出撃する。」

「王都の守備が手薄になるので他所に避難して欲しい。」

これは演劇部員達だけでなく、王都の全住人に伝えるべく準備している。

王都には必要最低限の兵力しか残さない。

出撃の後、港を封鎖する。

最悪の事態に陥る前に海上封鎖に用いる船に火を点ける。

「恐ろしいわね。」

倉渕ミサトはレミーの周到さに感心していた。

「多分ですけどこれが日常なんですよ。」

吉岡ハルナはその手段に恐怖する。

この世界は自分たちの世界とは違う。

「死」との距離感が自分たちの世界とは全く違うと知った。


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