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砂の国、砂の城 06

何処から集まったのか。

あの集落だけではない。

似たような格好をした砂漠の民が守護竜の住む小さなオアシスに集結する。

各自筆や刷毛と小さな桶や湯呑(カップ)を持参している。

最初に集まった数人にその使い方を教え、

次に現れた者達へと伝えを繰り返す。

正確に数えてはいないがどうやら三十人以上。

(誰のラクダか判らなくなって少し揉める)

この国(地域)においても守護竜は称え敬われ、同時に恐れられている存在なのだろう。

「本当に大丈夫なのか?」「食べられないだろうな。」

恐怖や恐縮の御蔭で慎重に丁寧に鱗から糊を剥がしてくれる。

「普段何食べているの?」

サバクツノトカゲのように毎日アリを食べているのだろうか。

目から血を流すのだろうか。

この程度の水場で充分なのはやはりサバクツノトカゲに似ているからか?

キリの期待する返事ではなく

「海に出向く事もあれば森で狩りをする事もある。」

雑食だ。

キリが誰かに何か言う前に

「任せろ。」

キリの傍らにいた四人の傭兵達がとっとと何処かへと行こうとする。ので

「一度に多くは必要ありません。人一人分で充分です。」

「そうなのか?」

今までの竜族はその体躯に似つかわしくなく少食。

どうやら元々活発ではない生物。

動かないから消費カロリーが少ない。消費カロリーが少ないから食事も少ない。

少食だから動かないのか、動かないから少食なのか。

「一度にたくさんではなく毎日少しずつです。人と同じです。」

「判った。」

四人の傭兵が全員揃って出掛けたので

「一人で充分なのに」と思っていると

彼らは作業する者達の分の食料と水を別のラクダに積み戻った。

大人はこんな事まで考えるのかと関心する少年キリ。

街で仕入れた魚を守護竜デセルに与えながら

キリは改めて呆れる。

竜族とは

良く言えば誇り高い。

本音を言うと意地っ張りで傲慢。

決して自ら「人」に助けを求めない。

毎回手遅れ寸前なのはこれが原因なのだろう。

「誰かに助けてもらえばいいのに。」

ボソリと呟いたキリに

「お前が言うな。」

月夜野アカリと魔女ツグミが同時に突っ込んだ。


集まった人々は日が沈む前に帰宅する。

キリ達も傭兵達の暮らす集落へと向かう。

当然のようにキリは竜の傍らで一晩過ごそうとしたのだが

「砂漠の夜は危険だ。デセルが弱っているだけに。」

村では長老宅に案内されるのだが

歓迎を受ける前にキリはそれを遮り宣告する。

「とても危険な状態です。」

「今の処置が終わっても回復するとは限らない。」

南の大陸からの客

それも異世界からの訪問者を一目見ようと集まった村人達が動揺する。

嘘を吐けと言うなら

「もう心配いらない」

と言っている。

だがキリにもこれ以上どうにもできない。

守護竜の守護者だなんて言われていたってこれが自分なのだ。


食事の席。

傭兵達との会話の中で

「竜族とは実は何とも間抜けな連中なのか?」

簡単に毒を盛られたり

住心地の悪い場所に追いやられたり

寝込みに石を置かれたり鱗を糊付けされたり。

「違います。」

キリは自分の胸の中がチクチクと傷むのを自覚しながら続ける。

「竜族はただのお人好しです。」

友と別れてそれぞれの地に住み暮らし

人からは恐れ称えられ敬われているが決して親しみは得られない。

長い間、ずっとそうしていた。

「霧の中に灯りが見えたら誰だって歩くでしょ?」

だからこそ、許せないのはそれを利用した誰か。

「もしかしてそれこそが目的だったのだろうか」

一瞬その可能性が過る。

人からドラゴンを遠ざけるのではなく、ドラゴンに人を憎ませる。

「ではこれからはもっと守護竜の世話をするよう長老に進言してくれないか。」

この台詞にキリはその考えを脇に置いてしまう。

「あ、いえ慣れ過ぎるのも嫌いなようですから。」

「週に1度様子を見に行く程度でよろしいかと。」

行って具合を聞いても

「問題ない」

と答えるだけかも知れないが。

「面倒なのね。」

うっかりと、月夜野アカリはつい本人口調で話してしまう。

「確かに面倒ですよね。」

竜族と人類との関わりを知らない。

歴史を知らない。

でもこれからどう関わって行くのかは

この世界の人達と一緒に考える事はできる。


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