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砂の国、砂の城 01

登場人物紹介

織機キリ   一年 帰宅部

月夜野アカリ 三年 演劇部部長 「部長」

若宮アオバ  三年 副部長 「副部長」 「ヘタレ先輩」

倉渕ミサト  三年 会計 「会計」 「部費子」

笠懸ヒサシ  三年 道具係 「道具屋」

赤堀サワ   一年 脚本 「プリン(ちゃん)」

吉岡ハルナ  一年 衣装係 「仕立屋」


吾妻アヅマ 二年 元演劇部効果担当 「オタ(眼鏡)師匠」


レミー 西の国 王様

メリア 西の国 王様の妹


ツグミ 魔女


ノト  黒猫 主人公



これまでのあらすじ

織機キリと演劇部員達はある日突然知らない世界へ。

各地の「守護竜」との交流を深めるキリ。

争いに巻き込まれながらも部活動を続ける演劇部員達。

少年は敵を追い海を渡る。

演劇部員達は演劇を続ける。

アヅマの出番はあるのか?


黒猫ノトの女子力は世界に轟くのか

羽撃く者達の世界 第三幕

砂の国、砂の城


生温い潮風は爽やかな朝を台無しにし

日が昇る程にその不快さは増す。

甲板で動く船員の多くは上着を脱ぎ捨てていた。

キリは船倉の一角に設けられた簡易の船室でぐったり伸びる黒猫ノトに付き添う。

額の汗を拭いながらつい愚痴を零してしまう。

「夜になれば少しはマシになるのかな。」

黒猫はただ尻尾を二度パタパタと動かして返事をする。


キリ達一行は北の大陸南海岸を目指す。

南の大陸東の国東地区との「非公式」ながら唯一交易のある地域。

北大陸「西地区」は「あえて無視する」。

メリアを矢面に立たせ、意気揚々と乗り込み混乱を与える策も考慮されたが

南大陸東の国東地区で一夜を過ごした事でその必要は無くなった。

魔女ツグミは「メリアが北大陸に向かう」と意図的に触れ回り

余計な手数を増やす事なく目的を果たそうと助言した。

魔女の真意は別にある。

メリア本人から、キリ達一行を北大陸「西地区」へ向かわせないよう「頼まれ」ていた。


魔女ツグミ、演劇部部長月夜野アカリは船旅を楽しんでいる。

少なくともキリにはそうとしか見えなかった。

いや、あの二人は道中ずっと旅行気分だった。と後にキリは回想する。

二人が冷たい飲み物を求めキリのいる船室に戻ると

露出の多めな二人の衣服もそうだが、

キリは演劇部部長月夜野アカリのその髪をつい見入ってしまう。

思い切りが良過ぎはしないかと言いたくなるほどバッサリと切り落としていた。

その目線に気付き少々照れながら

「ウィッグ付けるのに邪魔かと思って切ったけど、おかしいかな。」

「あ、いえ。よく似合っています。と思います。」

慌てて目線を逸らすキリに

魔女ツグミがニヤニヤしながら問い詰める。

「お前は女子にも本当に見境ないな。」

「はい?」


出発前。南大陸東の国王都にて。

ルメニーは顔を真っ赤にしながら

「気を付けるのよ。貴方ちょっと危なっかしいから。」

その脇で吉岡ハルナがなけなしのバッテリーとメモリーを使い切る勢いで

キリを撮影しまくっていた。


「勇者様はモテモテだな。」

「勇者じゃありません。」

月夜野アカリの軽口を聞き流し甲板へと向かうキリ。

容赦なく照り付ける太陽。

これから行く地域はさらに暑くなるだろう。

手で日除けを作り目を細めその先を見詰める。

海は太陽を無数に映す。

その先に広がる殆ど同じ色の地平線。

砂浜とその先に広がる砂漠。

左手の岩山がとても近くに感じる。

所々その岩山が削れ崩れ小さなビーチを形成しているが人の姿は無い。

海底にも岩山が連なり大きな船では座礁の恐れがある。

小舟に移乗するのだろうか。と船を見渡すが見当たらない。

陸から迎えが来るのかも知れない。

やがてキリの目に入ったそれは

砂浜に大量に打ち上げられた「ゴミ」にしか見えなかった。


岩礁と砂浜から続く浅瀬によって

大きな商船は砂浜に着けられず

砂漠の民は小さな舟で直接海上の商船に接舷し海上で取引をしていた。

港を作るにも砂漠地帯では資材が乏しい。

解決方法が見出されたのは、地峡の入り江で難破した船を見た船乗りの思い付きからだった。

「あの船の残骸で桟橋が作れないか。」

小さな桟橋が出来上がる。

同様に座礁したり、廃棄予定の船が加わり、

数年後には浅瀬のその殆どが「板」で埋められていた。


月夜野アカリはメリアのウィッグを装着。

「暑い。辞めたい。」

もちろん冗談だ。

この軽口は不安の裏返しなのだろうか。

キリには判らない。

自分はただの興味本意で海を渡りこの大陸に降り立った。

彼女はメリアの身代わりとして自身を危険に晒す。

とか言ったな。何の意味がある?

「アカリ、頭を出すなよ。」

ツグミは日除けのフードを被れと言っている。

「どうして?」

「ただの日除けだよ。陽射しが強い。日射病になるぞ。」

メリアだと知られなくてはならない。

「これじゃ目立たないじゃない。」

「心配するな。その色の髪は何処でも目立つ。」


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