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迷子の青空 43

「マシになったな。」

「自分で書いておいてアレだけど今までと何が違うのかよく判らないっ。」

「まあまあ。」

「後はこれを演劇用に仕上げる。」

「進行は基本登場人物のセリフにする。」

「ナレーションじゃダメなんですか?」

「前口上程度ならいいけど全編通してはダメね。」

「それなら朗読でいいからな。」

役者の人数に合わせて登場人物は設定される。

今回は「先ず登場人物あり」で物語が作られている。

部員の多い演劇部ならそれも可能だろう。

誰かどうする?でまた揉める。

副部長がレミー

それ以外が決まらない。

部長がいるならメリア役を任せるのだが

「アンタやりなさいよ。」

「はあ?」

「で仕立屋がハタオリキ役。」

「道具屋がその仲間。私が暗黒竜とピータン。」

配役を一方的に決める会計倉渕ミサト。

メリアを任せられたのは赤堀サワ。

シナリオ作成でそれどころでは無いと抗議するが却下。

「逆がよくない?」

「逆って?」

「キリの仲間が会計で竜の中に道具屋。」

「ああ俺もそっちのがいいと思う。」

副部長の提案に道具屋も同意する。

「ダメよ。最後くらいアンタ表に出なさい。」

「最後?」

「帰れなかったら演劇部辞めるつもりでしょ?」


どうして知っているのかはこの際問題ではない。

「それとこれとは話が違うだろ。」

「違わないでしょ。」

「ドラゴンは今まで俺が操っていたんだから俺が」

「私だって入っていたっつーの。」

譲らない両者。

間に入ったのは赤堀サワ。

「ちょっと待ってください。今回はドラゴンに人を入れるつもりはありませんよ。」

アクションシーンの多い物語だとしても

実際にそれを再現できるのか?

赤堀サワの最大の懸念はそれだった。

ドラゴンを使った派手な演出は見応えがあるだろう。

オタ先輩はいない。

部室もない。つまり電源が無い。

東の湾岸地区の倉庫での公演がヒントになった。

「それより私はもっとこうローテクな演劇がしたいです。」


赤堀サワが突然こんな事を言い出したのは

メリア役を任されたからでは無い。

部員達とディスカッションを繰り返す最中

「台詞によって状況を進める」

「役者の数に合わせた登場人物」

この二つの現実が「枷」となった。

今まで何度もリテイクを重ねたシナリオ。

物語は既に頭の中に焼き付いている。

自分が判らなかったのは

それを「客席の人に知らせる方法」だ。

そして不意に「演劇部入部のきっかけ」となった舞台を思い出す。

特殊で特別な効果を使わず

照明のスイッチだけで二人の世界の状況を作り出していた。

この瞬間

二つの「枷」が「器」として機能した。

赤堀サワの中で、

「舞台」と「客席」とが繋がり一つとなった。


倉渕ミサトが何となく零した「コント」も影響を与えたのだが

赤堀サワ本人はそれに気付いていない。

彼女は一気に「脚本」を書き上げる。

とりあえず今はテーマの事は脇に置こう。

頭の中にその映像が浮かび上がり

心の中にその台詞が響く。

大人になって読み返すと体中が痒くなるような錯覚に陥るとしても

なぐり書きのその台本は、赤堀サワの最初の脚本として生涯の宝物となるだろう。


「どうです?」

「いいわね。手直しというか付け足すべきはたくさんあるけど私コレ好きよ。」

「ちょっと俺にも読ませろ。」

コピー機欲しいな。

パソコンとプリンターがあるだけでいい。

ああどちらも部室にあるのに。

回し読みされる脚本。

「基本これでいきましょう。」

演劇部員の総意を得る。

噴出する全ての意見を取り入れるのは不可能でも

「面白い舞台にしたい」のも総意だ。

「通し(稽古)をしながら色々足し引きしよう。」

全員で作り上げる。

赤堀サワが望んだ演劇部がある。

部長の不在に皮肉を感じながら喜ぶ赤堀サワ。

「じゃあサワっちとりあえずこれ全員分用意して。

「はあ?私が?手書きで?私コピーでもプリンターでも無いですよ。」

「いいやお前はプリンターだ。」

以降、赤堀サワは

「プリン(ちゃん)」と呼ばれる事となる。


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