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迷子の青空 40

夕暮れ近くの到着で気付かなかったが

宿のあるこの街はそれほど栄えてはいない。

峠近くの「宿場街」はむしろ寂れている。

峠を越える者、越えて来た者以外利用しないであろう宿。

「すぐに復興する。準備しておけよ。」

翌朝ツグミは宿主に再度告げ出発。

地区長のいる主要都市には昼過ぎに到着する。

活気に満ちた賑やかな街。

西の国の中央地区や西地区よりもさらに栄えているような印象。

と同時に

「何かちょっと違う。」

呟く月夜野アカリに

「お前は洞察力があるな。」

南の大陸で「商業的に」最も繁栄している地区。

豪華(絢爛とは言い難いが)な装飾に彩られている街並。


ツグミはキリに国王からの書状を預け

「お前が渡せ。説得力がでる。」

魔女が何を言っているのか理解できない少年。

「説得力って?メリアさんが渡した方が」

「まあいいから。」

結局押し通されてしまう。

渋々先頭に立ち地区長の元を訪れるとその歓迎に驚く。

峠の開通と迂回路の安全確保を何故か知っていて

それらの手柄をキリが押し付けられている。

「情報伝わるの速く無い?」

月夜野アカリの疑問はもっともだ。

事情を知っている自分達より早くこの街に到着した誰かがいる?

月夜野アカリの質問に魔女は微笑むだけだった。


「それではフラマーは人を襲わないと?峠は本当に無事に歩けると?」

「・・・多分。」

「問題ないよ。フラマーが元気だから街道も問題ない。」

キリの曖昧な返事を覆いかぶせるようにツグミが断言する。

今までがそうだったからと言って、これからもそれが続くなんて言えない。

魔女だけではない。

この世界の多くの人が未来を過去の連続として捉えているようでならない。

変化は訪れる。

良いか悪いかは問題ではない。

失敗を積み重ねなければ得られない成果だってある。

少なくとも僕のいた世界では、そうして世界が移り変わっている。

誰かが雷に凧を上げて

誰かがカエルの解剖をして

誰かがカエルの代わりに食塩水にして

そのうち誰かが磁石とコイルを使うようになるだろう。

やがて子供達は学校でレモンやオレンジに棒を突き刺し偉大な発見を再現する。


月夜野アカリは出発前にメリアから借り受けた短剣を腰に差し

クリーム色のウィッグを装着している。

その彼女は区長に船の手配を急がせると同時に

「この地区は北の大陸のどの地域との交流が盛んなのか。」

誘導尋問を仕掛け

情報収集に務めるお姫様を見事演じている。

「心配するな。それを咎める理由など無い。我々は安全に旅をしたいだけだ。」

月夜野アカリの見立てでは

海を挟んだ北の大陸との交流こそが今まで見たどの地域より華やいでいる証なのだろうと。

そのコネを利用できれば航海のリスクは減らせる。

囮としての役割はあるが

堂々と「国の特使」として行動するより「密航者」紛いの手段は真実味を与えられる。

咎める。と言ったのは

おそらくこの地域にも中の国や西の国での件を聞き及んでいるだろうと推察したからだ。

地区長がその件に背徳感を抱いているならば取り除く必要がある。

「この街は他のどの街とも異なる趣がありとても興味深い。」

メリアは好奇心を持ってこの街を褒める。

地区長はそれに乗せられる。

「南の大陸の他のどの都市とも異なる文化を育んでいると自負しています。」


竜がいない。

キリの最初の印象はそれだった。

街角にも屋根の上にもいない。

人々と竜は共に生きていない。

たった一山。

あの峠を登りさえすれば会えるのに。

この国の主要道路が内陸部の迂回路であったとしても

フラマーの存在は「守護竜」として奉られていても不思議ではない。

事実、西の国ではどの地域にも竜の装飾品を目にした。

もしかしてその迂回路に小さな竜が現れるようになった原因が

フラマーが動けなかったから。とは考えてもいないのだろうか。

峠の開通を喜んでいるが、もしかしたら内心「余計な事をして」と憤っているのだろうか。

何より月夜野アカリが危惧したように

キリもまたこの情報伝達の速さに少なからず怯えていた。


船の準備と旅の支度を整えるまで一行は南の大陸を観光する。

他の国の他の地域の何処よりも繁栄していると感じているのは

ここが「観光地」として成立しているからだと理解するののは早かった。

港としての機能よりも商業施設が多いのではないかと疑いたくなるほどの賑わい。

そして月夜野アカリはとうとう発見する。

西の国で船長が言っていた。

「本当にあったんだ。」

劇場。

歌と踊りと演劇が催される箱。

公演の殆どが日暮れ近くからの上演で観劇そのものは叶わなかったが

特別に施設内を案内され

「皆とここに来るわ。演劇部として公演する。」

だったら一人ここに残って皆をここに呼び寄せて。

と言いたくなるのを堪えたキリ。

「その時は招待してください。」

「は?お前も出演者だろうがよ。」


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