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迷子の青空 38

「ツグミさん料理は?」

「得意に見えるか?」

「この際見えます。」

キリを夕食作りに一度戻らせようかと結構本気で言い出す。

肉だの野菜だのを適当に切ってただ鍋に入れただけの料理(?)

味付けのない素材の旨味だけを存分に活かした料理。

「せめてポン酢欲しい。」

それでも空腹よりマシだと完食。

「で、契約って何です?」

守護竜と人との契約。

「だから私も詳しくは知らないって。」

人と竜とが共存するようになってからの約束事だろうとツグミは言った。

「えーっと時系列の整理をさせて。」

この世界(大陸)に元々存在していた竜。

そこに人々が現れる。

「んで大戦って呼ばれる戦争が起きたのよね。」

「違う。」

「違う?」


竜の住処に人が現れ

「最初は互いに干渉する事なく暮らした。」

やがて竜と人々は「共に暮す」ようになる。

「それはとても永く続いた。」

「でも村の人の話だと。」

「そうだな。人の生活圏に竜が現れてって話だな。」

「実際は違うの?」

「私が知っている話もそれが真実かどうかは判らない。」

永らく続いた竜と人との共存は

人の欲によって崩壊を始める。

「人は竜を手懐けようとした。」

人を受け入れた竜を奴隷の如く扱うようになった。

「それも永く続いたんだ。」

何処かの一つの地区でそれが行われ

その方法と利便性を知った他の地域でも同様にそうなる。

そしてとうとう「戦の道具」として使われるようになってしまった。

竜族は人々の欲の道具として互いに傷付け合うようになる。

「竜が人との繋がりを捨てる理由としては充分だ。」

竜族が集い人々に復讐を開始する。

「これこそが大戦だ。」

互いに多くの犠牲が生じ

それぞれの代表者が停戦を申し出るまで

「短くても5年と記録されている。」

文献によってその時期は異なるのだが

それは「開戦」とされる日が明確に定まっていないからだろうとツグミは続ける。


「竜の住処に合わせて国が今のように定まり」

その代表者は竜との契約を交わす。

「あれ?それじゃ」

「まあ聞け。」

竜族はその約束事を拒否した。

「我ら竜族は我ら個々が認めた者とのみ契約を結ぶ。」

ただし、住処であるその土地を守ろうと務めるのであれば

その者達を守護する約束は交わす。

守護竜

と呼ばれるようになったのはこの頃から。

「えーっと契約がどうこうは偉い人どうこうじゃなくてただただ竜個人(?)の好み?」

「レミーとメリアが契約者だからお前達は勘違いをしているだけだ。」

「契約者が王子様ああ王様か。になっただけって事なのね。」

それで肝心の「契約」の具体的な内容とは?

「だから詳しく知らないって。」

「知っている範囲でいいから。」


「それではお前に私の本当の名を授けよう。」

「それって何なの?」

「なんなのとは?」

ピータンもアクゥロも同じ事を言って

言葉では無い光のような音のようなノイズを受け取った。

それが竜族の言語だとして

受け取ったからどうだと言うのか。

「お前達の言う契約だ。」

「だからその契約って何。具体的に何をどうするの?」

「ええいごちゃごちゃと小喧しい小僧だ。」

フラマーはキリを咥え自身の背中に放り投げる。

しがみつくキリ。

フラマーは飛び、連なる山々を上から眺めるように一回りする。

連なり続ける山の只中に降下。

雪を被る山々の隙間をくぐり抜け、深い深い谷の間に立つ。

「人がこの地に来るのは久しい。」

この世界の人々では自力で到底辿り着けないであろう高い山々に囲まれた深い谷。

「付いてこい。」

フラマーは山の裂け目へと入る。

洞窟のようではあるが言葉としては「山の裂け目」が相応しいとキリは後に語った。

一歩踏み入れただけで日の光が途絶える。

足元の感触が何かおかしい。

そこかしこで何かが蠢く気配。

時折何かに触れる。何かが身体を通り過ぎるうよな気さえする。

薄っすらとほんやりとシルエットだけが確認できるフラマーの後ろをただ付いて歩くキリ。

見失うと

「こっちだ。」

と呼ばれその方にただ歩く。


「竜は気に入った人に試練を課すようだ。」

「どんな?」

「具体的には判らない。」

ただそれは唯一つの条件さえ果たせば誰でも簡単に乗り越えられるらしい。

「条件って?」

「どのような状態に陥ろうとも相手を信じていられるか。」

ほんの一瞬でも懐疑心を抱くとそれで終わり。

二度目は無い。

レミーとメリアがピータンと契約できたのは

幼い頃里帰りをする度にアクゥロと過ごしていたからだろうとツグミは推察する。

事実、父親にピータンを紹介されたその日から

レミーもメリアもその守護竜を「友」と呼び

ピータンは目の前の小さな少年少女に試練を与え友と呼ぶ事を許している。

「あの子、あの時本気で戦うつもりだったのかな。」

「本人に聞け。」

合流早々尋ねたがキリはただ微笑むだけだった。


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