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迷子の青空 25

一行が向かうのは南の大陸「中の国」東地区にある王都。。

「中の国」の中央地区の湾岸線はその殆どが高い崖。

港が作れず街も内陸部にある。

海が南に開けると同時に徐々に崖から丘、丘から平地へと変わる。

やがてその陸地にようやく港が見える頃には二日目の朝を迎えていた。

突然の訪問に中の国の王は驚きもしたが

隣国の王の逝去を悼み、レミーに対し新国王即位の祝辞を述べた。

国賓として饗そうと誘うのだが

メリアは事情を包み隠すことなく伝え、それなりに急ぎの旅であると告げる。

残念ながら逃亡者の有用な情報は得られなかった。

キリは既に「勇者」や「英雄」としてその名を知られ持て囃されるのだが

快く受け入れる気になれなかった。

「もしかしたらこの人がアクゥロを。」

メリアに接するその人柄を見る限り悪い人には見えない。

メリアもそれを疑っている様子はない。

だがこの人は国王だ。どこまで事情を知っているのか確認したい。

もしかしたらそこから繋がりを手繰れるかも。

「今日にも出発する予定だった。」

森の民にアクゥロの住処を勝手に変えたお詫び。

「だが信じて欲しい。私はこの件をつい先程知ったのだ。」

「国民を危険に晒す王ではないと父も申していた。貴殿を信じる。」

メリアが信じるのならば間違いでは無いのだろう。

では執行者は誰なのか。

西の国のように執政官がいてもしかしたら姿を消しているとか。

「消えてはいないが。」

守護竜関係の国家事務を担当する執政官二名の内、一名の遺体が発見された。

「責任を取り自害したようだ。」


それがいかに不自然であろうとも

この世界に検視官も無く、ましてCSIなんて存在しない。

死者は常に尊重され冒涜は許されない。

結局何も掴めない。

「そんな事はないぞ。」

メリアは続ける。

「先程国王から面白い報告を受けたと聞いてな。」

面白い報告?

話は少し遡る。

「我が国(西の国)を襲った船。」

「あの時沈めた船から助けた乗員がいただろ?」

数日捕虜として監禁した後、漁船を与え国外へ追放した。

「あの者達は何も語らなかった。食事も摂らなかった。」

彼らは忠実な兵士であり味方を裏切らないだろう。

「拷問」も考えたが趣味ではない。

南の大陸のそれぞれの王とは面識があり、互いの信頼関係もある。

北の大陸の者であろうと確信に近い憶測もしていた。

ピータンが復活したのであれば今後無闇に攻め込まれる事も無いだろうと

その報せを伝えさせるためにもと

数日分の食料と水を持たせ釈放させていた。

その船がこの国で拿捕された。

乗員は

「北の大陸の漁師で潮に流された。」

とはっきり告げるのだが

彼らが乗るのは南の大陸の西の国の船。

各国の船はその漁の種類により各国の特色が現れるのだが

彼らはそれを知らなかった。

咄嗟に吐いた嘘は意味を無くし再び囚われの身。


「ここの王はレミーや私ほど捕虜に寛容ではなくてな。」

キリにはメリアの「面白い」が不謹慎と思える内容だった。

西の国と同じように守護竜がその効力を失くしたにも関わらず

同じようには侵攻を受けなかったのは

その捕虜を人質として利用したからに他ならない。

アクゥロの回復を待ち捕虜は解放する事まで伝えられたのだが

キリにはこの一連の話が何とも「生々しい」感じがして不快だった。

これが現実でここは夢の中でも本の中でもないと実感する。

同時にまだ「麻痺」していないのだと少しだけ安心する自分にも気付いた。

一行は中の国の王都で一泊後東の国に向かう。

東の国では西地区の王都に入港し陸路で東の国東地区へ。そこから北の大陸へ渡る。

その旅のしおりに「守護竜の治療」はない。

旅の目的はそれではない。

キリが東の国の守護竜を気にしているのはメリアも承知している。

だが旅の目的はそれではない。

その夜。魔女ツグミは黒猫ノトを連れてキリの部屋を訪れる。

「会いに行くか?」

迷いはしなかった。

興味はあるが目的はそれではない。とキリも心得ている。

演劇部員達の帰宅を最優先させるために

メリアと同行し、行方知れずの部員を探し連れ戻す。

旅の途中に立ち寄る機会があるのならその姿は見る。程度で充分だ。

東の国のドラゴンに会うのは全て終わってからでもいい。

「お前はいい子だなぁ。」

「なんですかそれ。」

メリアは「キリが行くと言ったら頼む。」とツグミに言った。

同時に「後でいいって言うだろうな。」とも笑った。

だが東の国の守護竜が同じような目に合っていたら?

東の国の王がその治療を依頼したら?

それでもキリは「目的があるから」と断るだろうか。


このままメリアに付いて行こうとも、一人東の国の守護竜に会いに行こうとも

「私はお前に付いていくだけだ。」

「それなんですけど。」

年上で美しい女性。

魔女がこの世界でどのような存在意義を有しているのかも理解した今、

キリは彼女を

「このまま僕の我儘に付き合わせたくない」と考えている。

医師としてだけでもその価値は高く

ただ一人の面倒を見させるのは「勿体無い」。

「今更それ言われてもな。」

「いえ、今だからです。」

魔女ツグミは北の大陸の出身だと言った。

メリアはそれを頼りに道案内を依頼した。

「剣の出処」を知っているとも言った。

行き先さえハッキリさせてしまえばどうにでもなるだろうと思った。

「甘いよ。」

「前にも言っただろ。北の大陸は荒れているって。」

メリアはそれを知っている。

そうでなければ「罪人」だった自分を雇ったりしない。

あの侍女がそうであるように、自分を信用したりしない。


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