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迷子の青空 18

まるっきりファンタジーじゃないか。.

心の中で呼んで聞こえるわけない。

大体発音の仕方も判らない。

光とノイズの集合。

キリはピータンの本当の名を思い出す。

「アクゥロを森まで運びたい。手を貸して欲しい。」

返事は無い。

無駄か。馬鹿げていると自覚していたのに。他の方法を考えないと。

と、目を開く前に強い風。

見上げるとピータン。

「はやっ」

「ここまで弱っていたか。どうすればいいキリ。」

「森の中の湖の畔に運んで欲しい。出来る?」

「容易とは言わないが可能だ。」

ピータンはアクゥロの首の下に自分の首を潜らせ

そのまま横にスライドして胴体を器用に自分の背中に乗せる。

横向きのままでは飛べないので斜めに身体を入れ

ほぼ背負うような状態になる。

「すごいな。」

器用なドラゴンに驚くキリ。

「ここで待て。」

ピータンは力強く羽撃く。

吹き飛ぶ一同。


再び現れるピータン。

「乗れ。」

「ありがとう。」

キリが背に乗る。

黒猫ノトはそれを見て飛び乗り、キリの頭の上に。

「他の者も早く乗れ。」

メリア、ルメニーは何の抵抗も無く乗る。

騎士団長は恐る恐る触れ息を呑みながら乗る。

「急げ魔女。」

「いいのか?」

「お前が乗らねばキリも降りると言い出す。」

背中の上ではキリが手を伸ばし待っている。

彼女はキリの手を取り竜の背に乗る。

この世界で、おそらく初めて守護竜の背に乗る魔女。

大空を舞い森を越える。

「いだだたっ。」

黒猫ノトが必死にしがみつくので爪が食い込む。

森の国の湖に横たわるアクゥロ。

そのすぐ脇に降り立つピータン。

「他に必要な事はあるか?」

「あとは皆で何とかする。ありがとう。」

「彼女を頼むぞ。」

ピータンは大きな風を残し青空の中に消える。

女性だったのかっ


やることは変わらない。

ピータンの時同様先ずは鱗に詰まったドロを落とす。

湖から水を汲み湿らせ柔らかくして短剣をあてようとするが

「ナイフじゃダメだ。木のヘラを作らないと。」

「待て。着替えを用意させる。作業しやすい格好になろう。それから必要な物を言え。」

「それでは桶とぞ、布を用意してください。」

「それからこの子の食事の支度を頼みます。」

「この子?」

「それに薪が欲しいです。火を起こして少し温めたい。」

「それは私がやろう。」

「騎士団長殿は申し訳ありませんがドロを捨てる穴を少し離れた場所に。」

「判りました。」

「では火の準備は私がするよ。」

魔女ツグミがメリアと打ち合わせる。

道具が必要だと騎士団長も屋敷の方へと向かう。

キリはメリアから預かった短剣を使い木を削る。

「あっちの湖でやっていたみたいに尻尾で自分に水掛けられる?」

アクゥロは顔を上げず言われたまま尻尾を少し強めに水面に叩く。

「温かいってほどじゃないけど冷たくもないか。」

水飛沫を浴びて「これじゃまだ」と思案をしようとするが

「いや始めよう。」

キリはマントを脱ぎ、そして上着を脱ぐ。

湖にその上着を沈め水を含ませる。

「これなら何とか。」


キリとメリア、ツグミがアクゥロの鱗からドロを落とす。

騎士団長は「もういいから」と言うまで穴を掘り続けてから合流。

落としたドロをさらに深い穴に捨てる。

湖の水が温かいとは言え森の国は寒い。

時折火に当たり暖を取りながら作業を続ける。

途中、女王プリウムが執事とメイドを引き連れ食事を運ぶ。

彼女は伏せるアクゥロの頬を撫でキリに尋ねる。

「こんな事で本当に回復するのでしょうか。」

「判りません。」

キリにはそれ以上答えようがない。

「我々に何か出来る事はありませんか。」

「あります。」

キリはそれが無茶な注文なのだろうと承知して言う。

「引っ越しの手続きをお願いします。」


「まあそう言うだろうとは思っていたが寒いぞ?」

「火を絶やさないようにしますので心配しないでください。」

私も残ると言ったツグミに

「ノトさんが寒いでしょうから連れて戻ってください。」

「あまり無理するなよ。明日も朝から手伝うからな。」

用意された食事は食べ残した。

量の指示をしなかった自分も悪いが多すぎただけだろう。

こんな事で本当に治るなんて思っていない。

キリはただこのドラゴンが「動ける」ように手伝っているに過ぎない。

手遅れかも知れないとずっと胸の中にある。

許せないのは、このドラゴンをこんな状態に追い込んだ者。

人為的にそうさせられている。

それを確信したからキリはメリアの旅に同行している。

「今は出来るだけの事をしよう。」

キリは夜通し作業を続ける。

木ベラに布を巻き、湯に浸け鱗の間の泥を落とし

そこに手をツッコミ綺麗に拭き取る。

何度も鱗で手を切るがこのドラゴンの辛さに較べたらと作業を続けた。


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