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迷子の青空 02

進行方向からの太陽。

船上で夜明けを迎えるのも、海から日の出を見るのも初めてだ。

青空と潮風と輝く海。

それでも織機キリは曇り顔。

キリに「出し抜いた」つもりはない。

彼には罪悪感しかない。

「船の完成が遅れて出港は明日になる」

と月夜野アカリに嘘を吐いた。

「月夜野アカリは残る」

とメリア達に嘘を吐いた。

メリア達にとっては「真実」でしかないが

それは詭弁だ。

船上で一人落ち込むキリに声をかけたのはルメニーだった。

「船酔いですか?」

「いえ、大丈夫です。」

「捜索は私達にまかせて貴方も仲間の方々とご一緒に」

等々、ルメニーは遠回しに

「足手まとい」

「邪魔者」

とでも言いたいのだろう。とキリは考えていた。

僕とあの人達とは仲間ではない。

僕が探そうとしている人も仲間ではない。

名前すら知らない。

僕はただ、あの場にいたくなかっただけ。

だからと言ってこの場にも居場所はないらしい。


隣国「中の国」の陸はすぐに視界に現れる。

王都の漁港を出てからずっと右手に大陸の山々。

それなりに大回りをしているのはきっと海の中から山が続いているからだろう。

確かに陸路では無理だ。

「さあ支度をしましょう。すぐに到着しますよ。」

ルメニーは笑顔だった。


演劇部員達は迷っていたた。

商売をするなら人々が集まり行き交う場所がいい。

王都も部室のある村も「長閑すぎる」

そもそも「異世界の高校生」に商売ができるのか。

その中、レミーの申し出は本当に有難かった。

資金援助

「国として演劇部を雇う」

各地を巡る旅芸人。

「芸人ではない。」

この国には街道沿い以外にも小さな集落はある。

演劇部単独公演全国ツアー

プロの演劇集団。

「ただその前に。」

国王レミーは提案する。

「馬に乗れるようになるべきだな。」


この国では男女問わず

馬の扱い、剣の扱い、弓の扱いは必須科目。

幼少から狩りを行い「生き抜く術」を学ぶ。

しばらくこの国に留まるなら

「基礎だけでも一通り身につけるべきた。」

この国で自らの身を守る手段として

必要最低限の技能の習得は必要かも。

月夜野アカリはその気になった。

道具屋笠懸ヒサシも新入部員赤堀サワも

興味本位ではあるが賛同する。

副部長若宮アオバと会計の倉渕ミサトは

あからさまに不満な顔を浮かべるが

「演技に説得力がでるぞ。」

と言われ渋々承諾。

仕立屋吉岡ハルナは?


吉岡ハルナ

運動が苦手。体育の時間は嫌い。

走るのは遅い。長い距離も苦手。

水泳は息継ぎが出来ない。

鉄の棒にしがみついて何をしろと?

どうしてこんな箱を飛ぶの?

リズム感も無いから必須だろうと踊れない。

球技なんてどれも拷問。

運動会は三日前からお腹が痛くなる。

皆で大縄跳びなんて最悪。

外で遊ぶといつも「みそっかす」。

体育の時間バレーボールが上手に出来なくて

仲良しだった子から舌打ちされた。

運動できるのがそんなに偉いのか。

お前ら皆オリンピック目指しているのか。


演劇部員の皆はそれとなくなんとなく「こなす」。

少々ふくよかなミサト先輩は

その体格に似合わず機敏に器用に動く。

見事な剣さばき。体捌き。

その肉体を裏切る身軽さ。

イケメン先輩にも勝てそうだ。

その若宮アオバはポンポンと矢を的に当てる。

レゴラスみたいだ。

部長先輩も。道具屋先輩も

引っ張ってもらっているけど乗馬をしている。

「仕立屋。見ているだけでは乗馬とは言えんぞ。」

そんな事言ったって。

ああサワちゃんが馬の上から呆れている。


「彼女はどうしたんだ?」

「アイツ運動音痴なんですよ。」

月夜野アカリは馬を止めさせ、飛び降り

吉岡ハルナに駆け寄りその手を掴む。

「私が一緒に付き合う。」

「はい?」

「吉岡ハルナが出来るようになるまで私が付き合う。」

「え?ええ?」

「先ずは馬からか?」

「いやいや。私ダメなんです。運動できないから。」

「最初から諦めるなっ。」

月夜野アカリの大きな声が響いた。

「君はどうやら諦めが習慣になっている。」

彼女は吉岡ハルナの手を離さない。

運動ができない

体育が苦手

「それがどうした。」

失態は恥ずかしい。

一人出来なくて他の人に迷惑をかけるのは心苦しい。

「君の失態を笑う奴は私が許さない。」

それでも戸惑う吉岡ハルナ。

月夜野アカリはまだ手を離さない。

「怖い。だろうな。」

月夜野アカリは場上の二人に声を掛ける。

「馬の上ってなんかこう、気持ちよくないか?」

「最高。」

「ちょっと怖いけど気分いいですね。」

笠懸ヒサシも赤堀サワも本当に楽しそうだ。

それは演技ではない。と吉岡ハルナにも伝わる。

「君にも味わってもらいたい。」

月夜野アカリの離れない腕に

吉岡ハルナは応える。


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