「羽撃け、友よ。」 23
「部室」のある村。
「我が家より素敵な場所なんてないわ。」
「ここはまだ部室よドロシー。」
不思議な事に、というか
この「部室」はこの村に馴染んでいる。
プレハブだからか?は失礼だろうか。
物珍しそうに騎士団長が中を覗くが
「片付けなさい」
と大人の注意をしただけだった。
「勇者様がいない」
と、ちょっとした騒ぎになり、
「今勇者は西の地におります。」
月夜野アカリは部長権限で発言。
「守護竜に乗り、空を舞い、西へ平和の訪れを報せに行ったのです。」
仰々しく演劇部長本領発揮。
「おおっ」
「さすか勇者様。」
牧場の夫婦がキリの制服を手に持って現れる。
綺麗に洗濯しほつれを直して。
「彼はきっとこの地に戻ります。それまで預かっていてください。」
なんとも「してやったり」の応対をしたぜと自画自賛する部長に
「あのー部長さん。えっと。そのー。」
仕立屋吉岡ハルナ。
「どうしたハッキリ言い給え。」
「子供達がー。そのー。制服ー。」
「制服?」
村の子供達が自分達と同じ格好をしていた。
「さあ演劇をしよう。」
「おうっ。」
部長の号令に反応するのは新人赤堀サワのみ。
他の部員は部室に戻るなり
自分の荷物の整理を始め必要な物を選り分ける。
「口で伝えたらいいじゃん。」
「長老とか町長とか村長みたいな人いるだろ?その人に言え。」
「回覧板だな。」
雷に打たれた
気分の月夜野アカリ。
「私達は演劇部ぞ。」
外では騎士団長が、道具屋やオタ師匠が言ったそのまま実行している。
「俺らいらなくね?」
「ええいっ。お前達こっち来てから部活していなんだぞっ。」
「俺ドラゴン作ったー。」
「俺も手伝ったー。」
「それは演技じゃないっ」
道具屋と言えど、効果担当と言えど
「演劇部員は漏れなく役者になる掟がある。」
来週行われる予定の部活動勧誘式
仮台本による立ち稽古を始めていた。
そこから皆で意見を言い合って
ぶつかって、
ぶつかり合いながら
泣いて泣かされ
それでも皆で作り上げるんだ。
外から見たら
暑苦しい。騒がしい。
恥ずかしくないの?
「何言ってやがるっ。」
「これが楽しいんじゃないか。」
月夜野アカリに火が点いた
「赤堀サワっ。」
「うわあはいっ」
「勧誘式用に作ったシナリオがある。今回用に改編したまえ。」
「え?」
「え?じゃない。やるんだ赤堀サワ。今日から君は創作者になれ。」
全身鳥肌に包まれる赤堀サワ。
やってやる。やってやる。
血湧き肉躍る。
月夜野アカリは赤堀サワに火を点けた
「道具屋。」
「おう。」
「君は新たなドラゴンを作り給え。」
注文は、各地を巡れるよう丈夫で、コンパクトにたためるように。
「できるな?」
「任せろ。」
月夜野アカリは笠懸ヒサシに火を点けた。
「効果担当アヅマ。君は判っているな?」
「え?」
「グダグダ言わん。君は最高の演出をする。違うか?」
「違わない。」
月夜野アカリは吾妻アヅマに火を点けた。
「仕立屋。むらび」
「はいいっ判っています。サワちゃんと相談しながら作りますっ。」
「うん。」
吉岡ハルナは勝手に燃えていた。
「今回の主役はアオバでいく。」
若宮アオバはレミーを演じる。
「君がこの世界に来たのはこのためなのかもな。」
「違う。絶対に違う。主役なんて嫌だっ。」
拒否。超絶拒否。
「君はもっと自信を持つべきだ。」
確かにお姫様にはスルーされたが
それでも君は演技を続けた。
「君は、君が思っている以上に素晴らしい役者なんだ。」
ただ「いる」だけで女性を惹き付ける。
天然ジゴロ。
女好き人類羨望の特殊能力。
課金したわけでもない。
初期装備でパラMAX。
利用しない手はないじゃないか。




