「羽撃け、友よ。」 22
魔女のオルンは、メリアとルメニーを出迎えたのではない。
「港に守護竜が降り立ち、少年が降りた。」
と話を聞き、駆け付けようとしたのだが
「ノトが逃げて。」
「ノトさん。ですか。」
「ん。今はな。」
「僕はキリです。」
港町だけあって魚料理が美味しい。
今まで食べた事のない料理。
旅の資金として王子から受け取っているが
いきなり高そうな料理。大丈夫だろうか。
「それで話を戻しますが。」
召喚についてだろうな。とノトは推測するのだが
「ノトさんの今後について一緒に考えましょう。」
「はい?」
「よろしければ事情を話していただけませんか?」
目の前の少年は
たかが黒猫に「力になる」と言っている。
こいつこそ、助けがいるだろうに。
誰に呼ばれたのかも判らない異世界にたった一人。
いやまて。
つい昨日までレミーはこの地にいた。
「異世界の少年がどうやってピータンと契約できた?」
十日くらい前まで王都にいたが異世界の少年なんて知らない。
そもそもあのデカイのはずっと伏せていた。
「どうして王族の外套を纏って竜の胸飾りをしている。」
「お前こそ何者なんだよ。」
キリがこの世界に現れてからの経緯を説明する。
「ふーん。じゃあお前があのデカイの治してやったのか。」
「治したと言うか、勝手に治ったと言うべきでしょうか。」
説明と食事を終え支払いをしようと
リュック(中身はLEDライトと財布と数日分の着替え)から
財布を出し、入れ替えたこの国の硬貨を出そうとしたが
「これの価値を教えていただけますか?」
数字は判るが硬貨の単位が判らない。
「単位?この数字と硬貨の数字は同一価値だよ。」
「え?」
驚くほど安いか、驚くほど大金を持たされたか。
店の人に会計を頼むと
「御代は結構でございます。」
「だから言っただろ。お前から代価を取るヤツなんてこの国にはいない。」
でもどうして。
「そうはいきません。お支払いします。」
キリも譲らないがそれ以上に店の主人は譲らない。
「黙ってごちそうになっておけよ。」
黒猫は毛づくろいしながら言ってのける。
どちらも引かず
「それではこうしましょう。」
店の主人は提案する。
「誰かにこの街で「美味しい物を食べさせる店を知らないか」と」
「尋ねられた際は当店の名を出してください。」
「滾る小魚亭」
キリは何度かその言葉を繰り返し
思い出したようにスマホにメモを残す。
「西の国西地区湾岸街 滾る小魚亭」
宣伝の約束はしたのだが
結局キリは帰りがけに「この子の分だけでも」と
主に黒猫ノトが食べた皿の分を主人に握らせ逃げた。
「まったくお前は変わった少年だな。」
「それで、これからどうしますか?」
「東の国行きの船を捜す。」
守護竜が復活してこの国が安定したのなら
すぐにでも船は出るだろう。
「一緒に行けるといいのですが。」
「そこまで気に病むな。手配さえしてくれればそれで十分だ。」
港の殆どは大きな船が停泊している。
その全て帆が畳まれているのは未だキリが業務をさぼっているからだ。
(ピータンが降り立ったのはこの港の漁港部分)
最初に声をかけた商船は隣国へ向かう。
隣の国に行けば東の国行きの船はここより多いだろう。
それでもいいか。とも考えたがひとまず保留。
次の船はキリが声をかけると同時に船員のくしゃみが始まり止らない。
「猫アレルギーだ。」
「それはだめだ。」
次の船を捜して港をふらついている時だった。
頭の上の黒猫が、空を舞った。
「うにゃっ」
「え?ノトさん?」
ふわりと飛んだ先に1人の女性と2人の少女。
魔女のオルン
お姫様メリア。侍女ルメニー。
「逃げるなと言った筈だぞ。」
魔女は黒猫に凄む。
ノトは身体をよじって魔女の手から逃げようとする。
「ジタバタするな。檻に入れられたいか。」
大人しくなるノト。
キリが駆け寄る。
誰に何から声をかけるべきだ?
「探したぞキリ。」
メリアから出迎えてくれた。
「えっと。お姫様。一体どうして。」
「うん。お前の手伝いだ。」




