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羽撃く者達の世界 ~演劇部異世界公演~  作者: かなみち のに
第一幕 「羽撃け、友よ。」
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「羽撃け、友よ。」 11

若宮 アオバ  演劇部 3年 男子 副部長

吾妻 アヅマ  演劇部 2年 男子 各種効果

赤堀 サワ   演劇部 1年 女子 作家

村男A

村娘A

騎士A

翌朝、村娘Aは部室を訪れアオバをデートに誘う。

アオバ震えて外に出ない

何処がいいのかこんな奴。と思いながらも

「ほらヘタレ先輩。」

アヅマはヘタレ先輩を押し出す。

部室でイチャコラされたら鬱陶しい。

その上

村男Aを含めた三人のドロドロした関係には興味が湧く。


村娘Aはお弁当を持参。

近くの湖でデート。

積極的な村娘Aは腕を絡ませる。

ヘタレ若宮アオバ、普段なら振り払って逃げるが

たたでさえ知らない場所。部室から離れたくはない。

ただただオドオドしてその腕を必死に掴む。

穏やかな青空。

花咲く野原に蝶が舞い

さえずる小鳥たち。

村人と朝食を共にし部室に戻る赤堀サワ。

「あれ?若宮先輩は?」

「デート。」

「ふーん。何処行ったんです?」

「森の中に静かな湖があるんだと。」


新入部員赤堀サワは騎士を捜しに慌て飛び出す。

「何だよどうした。」

手分けして探すよう言われたアヅマ。

「少し前からあの湖の周辺で小さい竜を見かけるって。」

この村のじさいんばあさんの語る伝説や物語ではない。

現在進行系の警告。

剣を振り、汗を流す健康的な騎士。

その隣で棒を振るのは村男A。

「これぞ男ぞ」とでも感じたのだろう。

「最初からやれよな。」

それは無理だサワよ。

「まあいいアンタも来い。」

サワは騎士と村男Aを連れ湖に走る。


「ラプトル」

この世界では「小さな竜」と呼ばれる生物。

小型なのは「恐竜の中では」のサイズ。

四足なので小さく見えるが、体長は2mを超える。

「素早い略奪者」ヴェロキラプトルに似たその生物

(ただ似ているだけで、ラプトルとは顔の形状が異なる)は

ヘタレ副部長若宮と村娘Aを四頭で囲う。

狙いは村娘Aの持っているお弁当。

この恐竜に似た生物は「竜の出来損ない」的に揶揄され「小さな竜」と呼ばれている。

森や草原に生息するがこれまで人里近くに現れてはいなかった。

「守護竜」によって互いの生存域は明確に棲み分けられ

この世界の生物は「人里で」人を襲う事は殆ど無い。

(その生物の縄張りに人が足を踏み入れたなら話は異なる。)

小さな竜に限らず、この国の多くの生物は

おそらく本能的に守護竜の不調を察知しているのだろう。

手軽に容易に食料を調達しようと人里に現れた。


「君はここにいないさい。」

騎士は剣を抜き、静かにヴェロキラプトルに似た生物(面倒なので以下似非ラプトル)と

若宮アオバ村娘Aの間に割って入る。

村男Aは?

ここにいなさいと言われた赤堀サワのさらに後方に控える。

若宮アオバはこの世界で最大のピンチを迎え、

さらに自身でその状況を悪化させる。

守ってくれていた村娘Aの背中(これだけでも問題なのに)から

頼り甲斐ある男性の背に乗り換え、

しがみついてしまった。

「ちょっ。離れてください。戦えない。」


思いもがけない事態に発展し

さすがの赤堀サワにも悲壮感が漂う。

こんな時、やっぱり自分は無力なんだ。と。

膝が震え、涙が溢れる。

「演劇部に不可能は無いんだろ?」

格好いいセリフがこの世界一似合わない男、吾妻アヅマ。登場。

吾妻アヅマは村男Aにかんしゃく玉を渡す。

「大事な人を守ってやれ。」

合図したら地面に投げ付けろ。

いいか直接当てるなよ。

アイツの足元に力いっぱい投げろ。

アヅマはオタ本領発揮。

威嚇を続ける似非ラプトルに向け

スマホのフラッシュと炸裂音。

「今だ。」

村男Aが投げつけるのは

自作の、少々強力なかんしゃく玉。

怯む似非ラプトル。

村男Aは村娘Aを庇うように身を乗り出し

大きな声で似非ラプトルを威嚇しながらかんしゃく玉を投げつける。

「おいっ早く逃げろ。」

「この人がっ。離れてくださいって。」

「そんな事言って僕を置いて逃げるつもりでしょっ。」

「うわっメンドくせぇ。」


結果的に全員無事で

似非ラプトル達は村娘Aの落としたお弁当を貪り満足する。

「いい加減離してください。」

騎士が振り払うが相手は男子高校生。それなりに腕力がある。

しがみついて離れない。

「これはこれで。」

赤堀サワが何か言っている横でもう一人泣いている男がいる。

村男A

「あの湖には行くなって言われているだろっ」

まだ膝を震わせて、ボロボロ涙を流して村娘Aを本気で叱る。

「なっ。何よ。大体アンタがもっと早く」

この後何を言おうとしたのか判らないが

村娘Aも泣き出してしまう。

部室に戻るなりぐったりするアヅマに

「見直しましたよオタ先輩。」

惚れはしないが感心した。心からの感謝も込めた。

「お前、次からはもっとシナリオ練ってから動けよ。」

急ぎ荷物を詰め込む。

「飛ばすぞ。舌を噛むから黙っていろ。」

騎士の忠告には従うまでもない。

三人は派手に揺れる荷馬車の上でぐったりするしかなかった。


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