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37章 閃光

―――ゼラディウス凾渠。

其処は工廠の少し先に立地した、巨大な運河であった。

元より船舶が行き交うこの土地を通り抜けるには、かなりの遠回りをしなくてはいけなかった。

此のゼラディウス凾渠によって、多くの船が行き来出来るようになったことは誰もが耳にしたことがある、有名な話である。


サニーは巨大運河が視界に映った時、眉間を寄せた。

運河を流れる水は太陽の光を反射し、キラキラと彼女の視界を覆い尽くした。

しかし、彼女はこれから訪れるであろう不安、そして恐れを胸の奥のポケットに仕舞っては、自らに託され、委ねられた使命の重さを身に染みて感じたのであった。


「―――事も重大になって来たな、サニー」


「重大どころではありませんよ。歴史に名を遺すような、そんな悪夢が起こりそうなのですから」


彼女は先の不安を案じた。

未来を暗示していた、遠き水平線を目指して、機械龍はその翼を大空に仰がせた。


◆◆◆


ゼラディウス凾渠を管理する、ゼラディウス凾渠コントロールセンター。

白亜のコンクリートを基調とした建物は至ってシンプルな構造で、凾渠の監視に重きを置いた構造であった。

其処に、ゼラディウスを支えるスーパーコンピュータがあると聞く。

サニーは駐車場に、風塵を捲き上げながら機械龍を着陸させた。重たい身体の全体重がコンクリートに襲い掛かる。


「―――モタモタしてる暇は無い。急ごう」


機械龍から降り、電気が滞った事による真っ暗なコントロールセンターに3人は入った。

中にいた職員は唐突の無電気状態に混乱に陥っていた。凾渠の管理を行うコントロール装置が停止し、凾渠が氾濫するのも時間の問題であろう。

サニーはスーパーコンピュータの場所を知っていた。何せ、開発に携わった人物なのだから。其れはユウゲンマガンとの懐かしき思い出であった。


「私たちの開発した装置が…今や悪用されているとは何たる皮肉かな」


「過去は変えられません。…変えられるのは、僅か数歩先の未来です。社長」


サニーはゼラディウス・ウィングを構えながら疾走した。そんな彼女に続いて2人も走った。

真っ暗なゼラディウス凾渠コントロールセンターの深淵、最深部にたどり着くや、其処は静寂に包まれていた。感情に物を言わせれば「お化けが出そう」とか、そんな不安な感情であった。

古く、罅割れたコンクリートに囲まれた、重厚感を持つ鉄鋼製の扉。サニーは怖れを為していたが、決心しては其の重たい扉をうち開けた。


中には神々しい光に覆われたスーパーコンピュータ……「閃光」。

其の名前に嘘は無し、普遍を制する存在は其処にしっかりと顕在していたのであった。


暗闇に包まれた中、閃光は闇に負けじと光を解き放つ。

巨大な翼を広げた、古代の女神の像…容姿はサモトラケのニケを象った黄金の存在は主の存在に気が付いた。

しかし、閃光は既におかしくなっていた。誰かにハッキングされたのか、プログラムを正常に読み込まなくなっていたのである。


「私は……閃光。闇と受け相俟らじ、暗黒を否定する。私は……誰そ望みを叶えん」


機械はそのぎこちない口で物語った。

これは閃光に与えた知能によるものであった。ゼラディウスと言う国全体を管理する為にも、機械自身に判断を任せるために付けられた、機械の命そのものであった。

閃光は自らが管理する多大なデータを全て解析し、欲しい情報を抽出、データの管理を一から十まで完璧に行った。其れが、曾ての東方重工の子会社―――プロメテイア・エレクトロニクス社の技術であった。


「データの紡績でとうとう狂ったか」


「私は…私は、狂ってなどいない。私は閃光、光を……おお、光を……」


彼女は機械仕掛けの両手を天に差し伸べ、祖たる神の祝福を讃えた。

人工知能は、忠実な神の下僕と化した。サニーはゼラディウス・ウィングの剣先を閃光に差し向けては、真実を知る為にも―――戦う事を決意した。


「……お前がゼラディウス中の電力をシャットダウンしてるはずだ。そうだろう。

……みんな困ってるんだ!お前を倒し、ゼラディウスの電気を取り返す!」


彼女はそう高々と宣言するや、閃光は抗いの意思を見せた。

其れはスーパーコンピュータの意地なのであろうか。全知全能となった女神の戯言であろうか。


「私は私……お前たちとは違う!光はされぞ、暗闇を撃ち抜かん!

―――閃光よ、私に歯向かう愚弄者を……燦爛たりし天に回帰させよ!!」


仕組まれた歯車を噛み合わせては、カタカタと物を言わせて。

世界を統べる、悍ましき存在が今、降誕したのである。3人は武器を構えた。

………全てはゼラディウスの平穏と秩序を守るためにも。


「―――来い!閃光!」


◆◆◆


彼女は礎の翼を構えては閃光に斬りかかった。

神々しい光を放つスーパーコンピュータに刃を差し向けて、助走を付けては勢いよく走る彼女。

剣を携えたと同時に飛びかかった時、スーパーコンピュータは反応した。


「悪性反応アリ。これより修正に入りマス」


スーパーコンピュータは襲い掛かってきたサニーに向けて、特大の衝撃波を起こしたのであった。

衝撃波に飲みこまれた彼女はそのまま壁に激突、コンクリートの板にめり込むように吹き飛ばされた。

サニーの行く末を心配し、2人は慌てて声を掛けた。


「さ、サニー!」


「今度は……私が行きますよ!」


二丁銃を構えたレイラはコンクリートの板にめり込むサニーを救出する社長の代わりに武器を携えた。

放たれた銃弾は全て閃光に襲い掛かるが、緻密機械とは言え頑丈な鎧に覆われたスーパーコンピュータはびくともせず、頑なに其処に顕在していた。

レイラは頑強な存在に眉を潜めては、畏怖を捨てて銃口を2つ差し向けた。


「―――何を求め、何を彷徨う。お前は煮えたぎる光の中を手探りしてただけに過ぎぬ」


閃光は抗いの色を見せるレイラに対しても、サニーに放った衝撃波もといソニックブームを放った。

俊足の息吹はレイラを確実に仕留めようとした。サニーや社長も、その様相を目に映しては絶望した。

しかし、レイラの口元は笑っていた。其れは鉄道の時と同じ、画策に身を委ねては裕な未来を見据えて―――。


「……じゃあさ、光の中で手探りしてたなら、探し物ってすぐ見つかるはずだよね?」


彼女は襲い掛かった衝撃波に、其れとはまた別の方向に銃口を差し向けた。

その先にあったのは、サニーが埋め込まれていたコンクリートの板であった。コンクリートの海に埋もれ、ユウゲンマガンの手によって後少しで救出させられそうであった矢先の事象であった。

彼女は笑っていた。自身へ飛ばされる衝撃波を全く気にもせず、サニーが埋まった板を剥がすように射抜いたのである。


板は……剥がれ落ちた。

コンクリートの巨大な岩盤が、もう少しで出られそうなサニーごと倒れたのである。

彼女は真下にいたレイラを涙目で見据えた。その時、レイラは簡単に彼女の手を奪うや、救出してみせたのである。そして、襲い掛かってきた衝撃波は倒れてきた岩盤と相殺してしまったのだ。


なんと不思議な事であったろうか。

薄く剥がれたコンクリートの板は、衝撃波もろとも無くなってしまったのである。


「―――私は……」


「サニーさんはゆっくりしていて下さいね。私が何とか……」


彼女は両手の上のサニーを社長に渡すや、閃光と向き合った。

閃光は衝撃波を出した影響で自身に行動麻痺を引き起こしている。緻密さが故のオーバーヒートと言ったところであろうか。黄金たりしスーパーコンピュータは一時的な損傷を食っていた。

彼女は銃口を閃光に差し向けては、静寂が覆う世界でじっと睨み据えていた。


「オーバーヒートしてますね。今が狙い時のようですね!」


彼女が懐から取り出したのは、紛うこと無き手榴弾であった。

彼女は栓を抜いては一気に遠くへ投擲した。黒い点はコンクリートの海の中に佇む神々しき機械に牙を剥いた。

衝撃は、目で捉えなくとも耳で嫌と言う程通じた。緻密な部分を覆うように存在していた、聖なる光を持つ外装は剥がれ落ち、中のインターフェイスや記憶装置等、様々な部品が露出してしまったのだ。


「後は私が片づける!社長は補佐役を頼みます!レイラさんは休んでて!」


救出させられたサニーとユウゲンマガンは、下準備を整えたレイラに礼を言っては動いた。

礎の翼とガンハンマーを構えては、一気に襲撃したのだ。刀身を光に反射させては、サニーが先陣を切った。


「食らえ!」


ユウゲンマガンは重たいガンハンマーの一撃を閃光に蒙らせた。

閃光の緻密部分はその一撃によって殆どが捩じ崩れ、電流があちこちに放電していた。

何時、爆発してもおかしくない……そんな緊迫した状況に包まれた中、暇も与えずにサニーは稼働部分であるエンジンを―――貫いた。

彼女が閃光の心臓部分とも言える箇所を貫いた瞬間、神々しきスーパーコンピュータは呻き声を上げるように―――それは閃光の「断末魔」………。


「うぐぉぉぉぉぉぉ………………」


そしてスーパーコンピュータは……自身の蒙った傷に耐えられることなく、一瞬で―――灰燼と化した。


◆◆◆


閃光は消え、ゼラディウスを支える電力を妨げるモノは消えた。

元よりブレーカーのような役割であった閃光がこんな極端な電力阻止をすることは頭の片隅にも無かったが……。

サニーは恐ろしい現実を何処か垣間見た気がした。そして、今襲い掛かろうとする「何か」に、内心震えながらも未来をじっと見つめようとしていたのだ。


「―――閃光は消えた。確かにアレは私たちが設計したやつだし、あんなに極端な電気ブレーカーは落とさない設計なはず。…これもやっぱり、内部の人物の仕業としか考えられない」


「……スターサファイア、か」


社長は何処か途方もない世界を見据えては、虚空に佇んでいた。

身内の犯行。彼女に決まった訳じゃないが、絶対何かを隠しているはずだ。


「……アイツは絶対、生きているはずだ。私たちは…真実を知るために戦う。

―――バハムートに乗って、エレクトロニクス社に行こう。何かあるはず」

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