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最悪人生→?  作者: 紫乃
30/35

formerー4

「……なに、その顔」


帰宅した後、お隣の玄関で、あたしは思わず言ってしまった。


左のほっぺたを真っ赤に腫らした優太にビビったからだ。


「……元カノの親父に殴られた、昨日」


「…は?」


「結婚することになったから、おたくの娘さんとは結婚できませんって言ったら殴られた」


なんだそれ。


「……話が見えません」


「ま、上がれ。んで、先にリビングいってろ」


結婚……何か彼女紹介よりレベルが上がった……。


あたし、泣かずに祝福できるのかな…。


「笙子ちゃん、久しぶりね、いらっしゃい」


優太のお母さんの優しい笑顔に頬が緩む。


何だろう、安心する。


あたしのお母さんでもあった人だからかな。


おばさんもおじさんも、今日は二人でうちにいるみたいだ。


でも、様子が少しおかしい気がする。


お茶を準備する背中と、あたしの近況を聞いてくる目がどこか疲れてるような、元気がないような気がする。


「…どうかしたんですか?お二人とも疲れてらっしゃるみたいですけど…」


「笙子ちゃん!聞いて‼」


まるで、あたしが聞くのを待っていたかのように、おばさんが詰め寄ってきた。


ちょっと怖いけど、あたしの隣でさめざめと泣くおばさんを放っておけなくて、話を促した。


「……昨日ね、結婚のご挨拶に行ってきたの。優太の」


あ、やっぱり結婚するんだ……


「何度かウチに来て、お話した、感じのいい子で、結納の日取りを決める予定だったんだけど……」


おばさんが言葉をつまらせる。


おじさんも頭を抱えた。


……だった?


「…優太……、突然結婚しないって言い出して」


「え⁉」


「向こうのお父さんは怒ってしまうし、お嬢さんは泣いてしまうし……」


慰める言葉もない。


いや、出てこない。


いろいろ想定外だ。


「…ま、そういうこと。母さん、しゃべりすぎ…」


後ろから突然聞こえた声に顔を向ける。


リビングの入口に優太が寄りかかっていた。


「優太‼一体どういうつもりなの⁈あとで話すの一点張りで納得できるわけないでしょ⁈」


珍しくもおばさんがヒステリックな声を上げた。


「笙子が来てから言いたかったんだよ。ちゃんと知っておいた方がいいだろ?」


話が全く見えない。


ゆっくりと歩いてあたしの隣に座った優太がにっこりと笑った。


「俺、笙子と結婚するから」


「「「は?」」」


疑問符が重なる。


唯一笑ってるのは優太だけだ。


でも、何だかその笑顔が、婚姻届出してきちゃったって報告してきた時のあいつの笑顔に重なって見えた気がした……


「…な、なにいって…あたしと?」


「うん、笙子と」


「…け、結婚?」


「うん、今日の午前中に婚姻届もらってきておいたから、早くサインしろ」


呆然。


え、この人、何言ってるの?


ちょっと、何だかおじさんとおばさんの顔が輝いてきてる気がするのは気のせいか?


「笙子ちゃんなら、安心だ…うちのバカ息子がこう言ってるし、どうかな?」


どうかなってなんじゃい!


「笙子ちゃんが私の娘になってくれるなら反対なんてしない!嫁姑問題は絶対ないって言い切れるからウチにいらっしゃい」


いらっしゃいじゃないわ!


ちょっと、他に言うことあるんじゃないの⁈


「か」


「「「か?」」」


あたしの発した言葉にみんなが反応する。


なんだか、恐ろしいことになってる気がする。


なんだか前にもこんなことあったような気がする!


「…帰らせていただきます!」


慌てて玄関に向かって走り出した。


「じゃ、説得してくるからー」


後ろにピッタリと張り付いて来る声が恐ろしい!


玄関であっさりと捕まって、優太の車に放り込まれる。


「さ、出しに行こうか」








あたし、本当にこいつが好きだったんだっけか?



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