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最悪人生→?  作者: 紫乃
28/35

formerー2

最寄り駅から徒歩20分。


近いとも言えないけど、歩けない距離でもない。


駅からゆっくり歩いて帰るのが好きだった。




「あ、改築中」


もう前回って呼んでいいかわからないけど、60まで生きたあの世界で、コンビニが建っていた場所は今まさにコンビニを建設中だった。

大きなマンションがあった場所は、まだ更地だった。


「いつ、できたんだっけな」


確か、娘がお腹にいた頃、優太と散歩しながら大きいマンションだねって話した気がする。


そうだ、結婚してから外を歩く時は二人が多かったな。


もうおばあちゃんの年になっても、手をつないでくれた。


今はもう望めないって分かってるのに、隣に立っていた姿を思い出してしまう。


駅前の賑やかな商店街を抜けて、住宅街にはいる。


角を曲がると、家が見えなかった。


家のある方角に、林のように佇む木が視界を遮っている。


「…あ、剪定頼まなきゃ…」


違和感を感じるのは、あの世界ではきちんと手入れをしてくれる人を定期的に頼んでいたからだ。

どうでもいいと、ズボラにしていた自分に苦笑する。

綺麗にすれば、日光が入って素敵な庭になるってわかるから。

見慣れた家のはずなのに、知らない家に感じる。


門に手をかけたまま見上げる家は、冷たい印象を受けた。


隣の家は明かりがついていない。


優太の帰る時間は確か夜中近くだし、ご両親も中のいい人たちだ、何処かに出かけてるんだろう。


逢えるかな、なんて少し期待してた。


門を開けて中にはいる。


草が育ち放題の庭に呆れたため息をついてしまった。






いつも通りお風呂に入って、テレビを見て。


特になることもない携帯を充電して。


早々にベッドに入ったけど、眠れなかった。


帰ってくるはずの優太が気になって、ゴロゴロ寝返りをうった。


「……帰ってこないじゃない」


12時を過ぎても、帰ってきて電気をつけた様子はない。


ご両親もずっと、留守みたいだ。


「……デート、かな」


そういえば金曜日だった事を思い出す。


帰ってこないのはそういうことなんでしょう。



少し、悲しかった。
















目覚ましの音に手を伸ばす。


鳴り響く音に頭痛がする。


昨日は結局寝れなかった。


どうしても考えてしまったから。


もそもそと起き出して出勤の準備をした。


今日は土曜日だから、何時に帰れるかな。


土曜日は午前保育だけど、お迎えが来れない場合は延長したりする。


昨日まで彼氏だった人を紹介してくれた先輩に会うのは嫌だけど、しょうがなく家を出た。


ふとお隣をみれば、ご両親の車と、優太の車が見えた。


いつの間に帰ってきてたんだろう、急に胸がドキドキした。


門を出る時も、背を向けて歩き出す時も、もしかしたら逢えるかもって、妙に緊張した。


結局逢えなかったけど。


職場につくまでに何度もため息をついてしまった。



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