第3部 第9話「風産みの塔」
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建国プロジェクト:状況報告
第3部・解放編 第9話開始時点
現在地:クロノスリュカから北西へ飛行中
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乗船メンバー:信・リュカ(翼付き紅蓮)
エウクレイア・シルト・アラファ
目的:風産みの塔・シルフィードとの接触
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翼付き紅蓮が風を切った。
信がその背に乗り、犬人女王リュカが後ろから捕まっている。
エウクレイアが両翼に展開した。
鴉人シルトと蝙蝠人アラファが後方を固めた。
隼人イェラキが先頭に立った。
V字編隊を組み進む。
先頭が風の抵抗を受け持ち、後続の負担を減らした。
定期的に交代しながら高原の上空を進んだ。
リュカ:「しん、雲の上ってこんな感じなんだね」
信:「ああ、気持ちがいいな」
夜は崖の突起に止まって休んだ。
アラファが夜間の見張りを担当した。
2日間、飛び続けた。
風産みの塔
北西の高原の先に、白い塔が見えた。
神代に作られた建物だった。
高さが異常だった。
雲を突き抜けていた。
塔の近くに、巨大な何かが居座っていた。
口が異常に大きく目がなかった。そして巨大な翼をつけていた。
まるで巨大なナマズに翼を生やしたような姿だった。
遠目にも禍々しさが漏れ出ていた。
間違いなく魔獣の王だ。
魔獣の王は、塔の周囲を旋回しながら、何かを食べ続けていた。
小さな光だった。
生まれたばかりの風の使い、シルフだった。
シルフが塔から産み出されるたびに、その口が開いた。
飲み込んだ。
シルト:「生まれたばかりの精霊を食べているのか」
アラファ:「気配が異常だ。
近づきたくない」
信が懐中時計を取り出した。
ミネルヴェとの通話
信:「ミネルヴェさん、今から映します」
懐中時計にミネルヴェの顔が映った。
魔物の姿を見せた。
ミネルヴェが眉をひそめる。
長い沈黙があった。
ミネルヴェ:「バハムートだ。
文献の通りだ。
風を喰らう魔獣の王。ケイオスの眷属。
過去この存在でいくつもの国が滅んだと記録がある」
信:「倒し方は」
ミネルヴェ:「風の魔法は効果が無いと言われている」
風喰いの魔物
イェラキが風の精霊魔法を発動した。
風の刃をバハムートに向けて放った。
バハムートの口が開いた。
飲み込んだ。
バハムートの体が少し大きくなった。
イェラキ:「俺の攻撃を喰いやがった」
鷲人アエトスが続いた。
シルフィードの加護が宿り始めていたアエトスの風魔法だった。
通常より強い風の刃だった。
バハムートが口を開いた。
飲み込んだ。
また少し大きくなった。
リュカ:「強い風を放つほど強くなる」
信:「風魔法は全て逆効果だ。
このままではだめだ!」
作戦の立案
全員が空中で止まった。
信:「スルト! みんなの意識をつないでくれ」
スルトは黒魔法を展開し、全員の通話を可能にした。
信:「敵は風で力が増している。
だったら、風の無い状況、真空でやつを包んでみたらどうだろう」
リュカ:「私がバハムートの周辺空間を掌握します」
スルト:「俺が黒魔法で強化しよう。ミネルヴェ先生ほどじゃないですがね」
アラファ:「私も協力します」
イェラキ:「俺たちが内部の風魔法で真空を作ればいいのか。
面白い、それで行こう」
リュカが時空魔法陣を展開。
続け様にスルトとアラファが黒魔術を発動。
イェラキ達が風魔法を操り真空状態を作る。
バハムートの動きが一瞬止まるが、すぐさま口から暴風を展開し、真空空間を壊した。
イェラキ:「やつの力が強い」
アエトス:「もっと強い力が必要ですね」
言うなりアエトスは塔の頂上を見る。
イェラキ:「行くつもりか」
鷲人アエトス:「それしかないでしょ」
アラファ:「塔に近づくほど
跳ね返す力が強くなる。
私の音波で確認した。
上段になればなるほど
はねつける力が増している」
イェラキ:「シルフィードの声だ。
その声に従って飛べ」
アエトス:「了解」
アエトスの飛行
アエトスが塔に向う。
最初の数十メートルは問題なかった。
中層に差し掛かった時、突風が吹いた。
アエトスが弾き飛ばされた。
立て直した。
また進んだ。
また突風が来た。
アエトスが目を閉じた。
風を感じた。
風が何かを言っていた。
言葉ではなかった。
しかし意味がわかった。
問われる。お前は何者だ?
アエトス:「俺はアエトス。
エウクレイアの一員。
風の声を聞いてきた。
仲間を守りたい。
あなたに会いたい」
風とは何だ?
アエトス:「風?」
アエトスは風が何かを考えたことがなかった。
アエトス:「風は、空気の流れ。
違う、風は俺たちの力。
それも違う、風は……そうか、分かった」
再び問われる。風とは何だ?
アエトス:「風は、俺たちを繋ぐ思いだ」
突風が止んだ。
塔が静かになった。
アエトスが上へ進んだ。
上段に入った。
壁のような圧力が来た。
アエトスが翼を大きく広げた。
風を読んだ。
圧力の隙間を見つけた。
潜り込んだ。
また読んだ。
また潜り込んだ。
少しずつ、上へ。
シルフィードとの邂逅
最上階に辿り着いた。
風が渦を巻いていた。
中心に、光があった。
姿はなかった。
光だけがあった。
声がした。
シルフィード:「風を思いというか」
アエトス:「難しいことはわからないだけどさ」
シルフィード:「言ってみる」
アエトス:「これまでは、敵を倒す事だけを求められてきた。
力が全てだと思ってたんだ」
シルフィード:「今は違うのか」
アエトス:「クロノスリュカって国に加わって、
学校ってところで、沢山の年下の連中がいてさ、
こいつらを守らなきゃって思う様になったんだ」
シルフィード:「それが思いとどうつながる」
アエトス:「不思議なものでさ、
守ると思った時に、これまで以上の力で出るんだ、
クロノスリュカの連中はそんな奴らばかりで、
その思いってのが、みんなに伝わって行くんだ」
シルフィード:「それが風だと言うんだな」
アエトス:「ああ」
シルフィード:「ふ、面白い奴だ
いいだろう、俺の力をかしてやる
あの邪魔な魔物を退けてこい」
アエトス:「任せておけ」
光がアエトスを包んだ。
シルフィードの加護が宿った。
アエトスの翼が光った。
真空作戦
アエトスが戻ってきた。
全員がその変化に気づいた。
翼から風が溢れていた。
信:「行けるかい」
アエトス:「当然!」
作戦を開始した。
犬人女王リュカが空間支配を展開した。
バハムートの周囲の空間が歪んだ。
シルトとアラファが黒魔術でその空間の周囲を覆った。
再び閉じた空間が生まれた。
イェラキとエウクレイアが空間内の空気を抜き始めた。
しかしバハムートが口を開いた。
アエトス:「さっきの様には行かないよ」
アエトスが翼を広げた。
シルフィードの加護が発動した。
風が収束した。
空間内の全てが止まった。完全な真空に包まれた。
バハムートが初めて動きを止めた。
口を開くが。暴風は産み出せない。
大翼を動かすが、風を産み出せない。
急速に力が失われていった。バハムートの体が小さくなった。
その時、空間が揺らぎ、そのまま、消えた。
信:「また逃げられた」
リュカ:「ケイオスだね」
転移ゲートの作成
空が静かになった。
塔の周囲に風が戻った。
清らかな風だった。
シルフィードが産み出したシルフが空に広がっていった。
リュカが塔の前に立った。
目を閉じた。
転移ゲートを作成した。
風産みの塔とクロノスリュカの渓谷が繋がった。
信:「早く帰えろう。
皆の体調が心配だ」
アエトス:「シルフィードがまた来いと言っています」
信:「また? とにかく一度戻ろう」
信とリュカ、スルト、アラファ
そして、イェラキに連れられてアエトスが転移ゲートで一足先に国に戻る。
他のエウクレイアの隊員は風に乗って帰路についた。
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建国プロジェクト:状況報告
第3部・解放編 第9話終了時点
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シルフィード
引きこもりから一歩踏み出した
アエトスに加護を与えた
塔周辺のシルフが再び産み出された
アエトスの変化
シルフィードの加護を得た
翼から風が溢れるようになった
シルフィードとの対話ができる
バハムートの撃退
真空作戦で力を失わせた
ケイオスが引き上げた
また来る可能性あり
転移ゲート
風産みの塔↔クロノスリュカ渓谷
懐中時計所持者のみ使用可能
次のマイルストーン
→クロノスリュカへの帰還
→シルフィードの加護で瘴気を浄化
→病魔に蝕まれた者の回復
→風産みの塔への再訪問
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第3部 第9話 終了
次話:「清風と神代の武具」




