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【完結】死ぬまでに叶えたい十の願い  作者: 木風


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4/10

第四話

十一月に入ると、エリアーナの体に変化が現れ始めた。


朝、起き上がるのに時間がかかるようになった。

昼過ぎになると疲れが出て、横になることが増えた。

胸の痛みは波があり、良い日は何でもなく、悪い日は息をするのも辛い。


それでも、エリアーナは周囲に辛さを見せないように努めた。

侍女には気づかれていたが、彼女は主人の意を汲んで何も言わなかった。

エドヴァルトに至っては、毎日執務に忙しく、エリアーナとすれ違うことも少なくなった。


ある穏やかな昼下がり、エドヴァルトがエリアーナの部屋を訪ねてきた。


「ピクニックの用意ができた」


エリアーナは寝台から起き上がろうとして、少しよろけた瞬間、エドヴァルトが一歩踏み出して、何か言おうとしたが、エリアーナはもう立ち上がっていた。


「ありがとうございます。今日ですか?」

「天気が良い。今日を逃すと次はいつになるかわからない」

「そうですね。少し着替えを」


着替えを終えると、二人は王宮の裏庭から森へと続く小道に出た。

側近であるルードヴィヒが遠目に控えているほかは、護衛も最小限。


小道を歩いて十五分ほどで、視界が開けると、緩やかな丘の上、枯れ始めた野草の中に、毛氈が広げられている。

傍らには木製の籠があり、中に食べ物が詰まっているのが見えた。


「まあ、きれい……」


エリアーナは思わず、声を上げる。

空は高く、青かった。

秋の日差しは柔らかく、枯れ草の間から顔を出す野の花が、風に揺れ、王宮の整えられた庭園とは違う、生きている野の美しさがそこにあった。


毛氈に腰を下ろすと、エリアーナはすうっと息を吸う。

草の匂い、土の匂い、風の匂い。


「こんなところが王宮の近くにあるとは知りませんでした」

「ルードヴィヒが探してきた。あいつは何故かこういうことに詳しい」

「優秀な側近様ですね」


エドヴァルトは籠から食べ物を取り出す。

チーズ、薄く切ったハム、焼きたてのパン、リンゴ、それからワインと紅茶。

エリアーナはパンを一口食べ、チーズと合わせ、目を細めた。


「美味しい」

「王宮の料理人が作った」

「それでもこうして外で食べると、一段と美味しく感じます。なぜでしょう」

「さあ」


短い答えの後、しばらく沈黙が続いた。風がゆっくりと吹き、二人の間を通り抜ける。

エリアーナは寝転んで、空を見上げた。


「殿下も、横になってみてはいかがですか」

「……」

「空が広いです。一人で見るより、二人で見た方が得した気分になりますよ」


エドヴァルトは少し間を置いて、シートの上に背中をつけた。


「こうしていると、故郷を思い出します」


秋の空が、頭上に広がっている。

薄く白い雲がゆっくりと流れ、その向こうに青が深まっていた。


「殿下は星がお好きですか」


唐突にエリアーナが訊く。


「星?」

「三番目の願いが、星空を見ることなので。殿下はお好きかと思って」

「特別好きというわけではないが、嫌いでもない」

「私は好きです。故郷は辺境ですから、夜になると街の灯りが少なくて、星がとてもよく見えました。天の川が川のように流れていて……王宮に来てからは、あんな星空は見ていません」

「王宮でも星は見える」

「はい。でも王都は明るいですから、辺境の星とは少し違って。いつかまた、あのくらい濃い星空を見てみたいと思っていました」


エドヴァルトは黙っていた。


「辺境は寒かったか」

「冬はとても寒かったです。でも、好きでした。雪が降ると世界が静かになって。馬に乗って雪野原を駆けると、信じられないほど清々しい気持ちになりました」

「そうか」

「殿下は辺境に行かれたことはありますか?」

「一度だけ。視察で、十二歳の頃」

「それでは随分前ですね。お子さまだったのでは」

「覚えている。冬の景色が……珍しかった」


それがこの会話の中で最も長い会話だったかもしれない。

エリアーナはそれがなぜか嬉しかった。

日が少し傾き始めると、エドヴァルトが「そろそろ戻る」と言った。


エリアーナは起き上がり、立ち上がろうとしたが、体が言うことを聞かず、膝に力が入らずよろめくと、エドヴァルトの手が伸びてきて、エリアーナの腕を掴み支えた。


エリアーナは驚いて、その手を見ると、それからエドヴァルトの顔を見た。

彼はまっすぐ前を見て、顔を逸らす。


「……ありがとうございます」

「歩けるか」

「はい、大丈夫です。すみません、足がしびれてしまって」


エドヴァルトはゆっくりと手を離し、二人は並んで小道を歩き始める。

エリアーナの歩調に合わせて、エドヴァルトがわずかに足を緩めているのを、エリアーナは気づいていた。


だが何も言わなかった。

ただそれを、胸の奥に丁寧にしまっておくだけ。


二つ目。叶った。

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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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