22話「今は運命に感謝しています」
「なんというか……色々大変だったな」
「付き合わせてしまってすみません、アイルティストンさん」
ガオン関連の話はすべて私の個人的な問題だ。それゆえ、本当はアイルティストンは無関係。私とガオンの婚約、というのは、私たち二人及び我が国に関しての問題で。隣国の王であるアイルティストンにはほぼ関係ないと言っても過言ではないような話である。
でも、それでも、結果的には彼をかなり巻き込んでしまった。
そういう意味では少々申し訳なさも感じられて。
「気にすることはない。君の問題はわたしの問題なのだから」
ただ、彼は何の迷いもない真っ直ぐな面持ちでそう言ってくれたので、大変励まされたし落ち込まずに済んだ。
「そもそも例の問題を作り出したのはあの王子だろう? 君は完全なる被害者であって、君に非はない。ということだ、君がそのような申し訳なさそうな顔をする必要はない」
彼はそこまで言って、少し間を空けて、やがて言葉を続ける。
「それに、あの王子の愚行のおかげでわたしは君と親しくなれたのだから、そういう意味では感謝しなければな」
冗談めかすアイルティストンはどことなく可愛らしかった。
外見からは可愛らしさなど少しも想像できない。私も最初は彼にそんな魅力があるとは思っていなくて。けれども関わっていくうちに彼の魅力に気づくことができた。同じ時間を過ごし、多くの話を共有し、そうやって絆を深めていったからこそ気づけたことというのも少なくはない。
運命の女神が私を彼に出会わせてくれたとしたら、私は、その導きに心から感謝したいと思う。
「そうだ、この後少し……花でも見ていかないか」
「花ですか?」
「ああ。実はこの近くに美しい花が咲いている庭園があるらしくてな。噂を聞いて気になっていたのだが」
アイルティストンに出会えて良かった。
強くそう思うからこそ。
これからも縁を大事に守りながら共に歩んでゆきたい。
「そうなんですか」
「もしかしてあまり関心がない、か?」
「あ、いえ! そんなことはありません! 関心ありますよ、お花」
「では寄ってみても構わないだろうか」
「はい!」
生きるということは様々な出来事に遭遇することだ。
この先もいろんなことが起こるだろう。
なるべくあってほしくはないけれど、中には、悩むことや迷うこともあるかもしれない。悲しんだり傷ついたりするようなことだって、起こる可能性は皆無ではない。
でも、そんな時でも、大切な人が傍にいてくれればきっと乗り越えられる。
「アイルティストンさんって意外と自然がお好きですよね」
「言われてみれば、そうかもしれない」
「昔からですか」
「あまり考えてみたことはなかったのだが……言われて振り返ってみると確かにそんな気がするな」
「何か理由が?」
「いや、特に思いつくものはない。なぜだろうか。自分でもよく分からないが……ただ、美しいものは好きだ」
女神パパルテルパナリオンの力が宿る聖女という意味でしか価値のなかった私は、アイルティストンに出会ったことで一人の人間として価値を得られることとなった――人生とは実に不思議でそれでいて興味深いものだ。
「美しいものがお好きなんですね」
「恐らく」
「それは普遍的な感情ですよね」
私はもう進む道を決めた。
彼と共に歩む。
彼と共に生きる。
それが私の選択だ。
「君もか?」
「そうですね。というより、大抵誰でもそのような感じだと思いますよ。例外はあるでしょうが、大体人は美しいものが好きです。作り物の美しさでない自然なありのままの美しさならなおさら」
「ああ、確かに。作り物より自然のものが良いというのはあるな。理由は分からないがそちらの方が惹かれる」
「本能的なものなんでしょうね、きっと」




