23話「そして鐘が鳴ります」
高い空に、鐘が鳴る。
それは祝福を告げる音。
今日一組の新しい夫婦がこの世に誕生する。
何十年も前に生まれた命。けれどもこれは新たなる誕生と言っても不自然ではないほど。それぞれ個で生きてきた二つの命が、今日この日、一つの家庭となる。
私リマリーローズとアイルティストンの結婚式。
一国の王が結婚する日というだけあってこれはかなりのビッグイベントだ。
国内外から多くの要人が駆けつけた。
そしてもちろん民も。
新たなる門出を祝福するかのように大勢祝いの場に訪れてきてくれている。
これから私は王の妻となる。それはかなり大きなことだし、この国にとっては重大なことだ。そして、私という人間にとってもまた、同じ。これまでは聖女とはいえそれなりに普通に生きている部分もあったが、今後はより責任ある立場となるのでそこを理解してきちんと生きていかなくてはならない。
今日、この日、祝いの音を響かせてもらったことを忘れずにいよう。
この国は余所者である私を受け入れてくれた。
だから私はこれからそのお返しをしたい。
受け入れてくれてありがとう。
温かく見つめてくれてありがとう。
その感謝をいつまでも忘れずに。
そして、私を大切に想ってくれているアイルティストンにも、最大の感謝を込めて。
――手にしているものの尊さを感じながら生きてゆこう。
「長くなってしまいすまなかった」
「いえ大丈夫です」
夜、私たち二人は宿で同じ部屋に泊まり、なんてことのない言葉を交わし合う。
「アイルティストンさんこそ、お疲れではないですか?」
「問題ない」
「そうですか。なら良かったです」
「疲れるとしたら君だろう?」
「私は元気ですよ」
ここでは女神パパルテルパナリオンの加護を異常なまでにありがたがられることはないけれど、逆に私という人間を大切なものとして受け入れてもらえているので、生きていて良かったと強く思うことができる。
すべての苦難がここへ至る過程であったなら、きっと、何もかもすべてが無駄ではなかったのだろう。
「少し、お茶でも飲もうか」
「では淹れてきますね」
ソファから立ち上がろうとした、刹那。
「待て!!」
鋭く叫ばれた。
「……えっ」
「あ、いや、すまない。大声を。だがその……」
どうやら意味があって鋭い言い方をしたわけではないようだ。
「わたしが淹れよう、今日くらいは」
彼は暫しの沈黙の後に大切なものを棚へそっと置くような言い方でそんなことを言ったのだった。
「良いのですか?」
「ああ。たまにはわたしも働かないとな」
気にしなくていいのに、と思いながらも。
「ええっ……そんなの、いつも働いていらっしゃるじゃないですか」
「二人の間でも、ということだ」
「いやいや! そんな! 二人の間の話だとしてもそうですよ! 毎度あれこれ考えてくださっているじゃないですか」
今はその優しさに浸っていたい、そんな風に思いもする。
◆終わり◆




