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「そんで、試練の話やったよなあ」

「そうだ。聞こうと思ってたのに忘れてました」


 深雪ちゃんは晩御飯を時々寮に食べにくる。「うちかてみんなで晩御飯食べたいねん、でも屋敷の料理人の料理も劇的に美味いんやで! 両天秤や!」と高らかに宣言していた。そんなこんなで三日に一回は女子寮でご飯を食べている。これはあたしが来る前からの習慣だったみたいで、寮のみんなも深雪ちゃんが晩御飯どきにひょっこりやってきてもウェルカム状態だ。


「試練は毎年変わるんや。せやから先輩に試練の対策聞いたとて意味ないねん」

「どうして毎年内容を変えるんでしょうか」

「さあ? うちは流石にそこまでは知らんなあ」

「――それは毎年、学年やクラスに適した試練を組む必要があるからよ」


 突然会話に割って入ってきた声に、あたしと深雪ちゃんは危うくスプーンを落としかけた。振り返ると、にこやかに笑う朗らかな先生。飛行クラス主任の仁先生だ。女子寮では、生徒に紛れて女性教師もまた、深雪ちゃんのように晩御飯を食べることは珍しくないのだ。


「仁先生、どういうことですか?」

「だって~。ほんっとに、毎年毎年入ってくる子達、個性ばっらばらなのよ。それをね、毎年同じような試練を出したって、個性に適したテストができるとは到底思えないんだもの」


 生徒たちはご不満みたいだけどねえ、とエビフライを箸で挟んだ仁先生は辺りを見渡した。低学年の生徒は引き攣った笑いを浮かべ、高学年の生徒はもう慣れたと言わんばかりにやれやれと首を振っている。


「ええと、それって対策せずに一発勝負ってことですか」

「そうねえ。でも普段の授業を真面目に受けてさえくれれば別に難関ではないわよ」

「難関ではないとかよく言うで。先輩たち、試練終わりにへとへとになってんの、入学前によう見てたわ」


 うげえと口の端を歪ませながら、深雪ちゃんは箸で摘んだトマトを口に突っ込んでモゴモゴ頬を動かしている。


「試練って、専科合同なんですか? それともそれぞれ別の内容なんですか?」

「それも決まってないし、その時々ね~。これ以上はヒントになりそうだから、内緒よ~」


 うふふ、教師一同腕によりをかけて試練を作っている最中だからお楽しみにね、といつの間にか夕飯の食膳を空っぽにしていた仁先生は、ふわふわの髪の毛をルンルンと揺らしながらトレイを手に持って、颯爽と食卓を後にした。その後ろ姿を絶望した顔で見送った生徒たちが何人かいたのが、試練の壮絶さを物語っているようだった。


「でも、ちとせは関係ないんやし。あんま気にすることないで」

「そうですね。でもどんな感じなのかって言うのは、部外者だからこそやっぱり気になりますよ。当事者からしてみればたまったもんじゃないかもしれないですけど」

「まさか生死に関わるわけじゃああるまいし、ドキマギしてるだけ無駄や思うけどなあ」


 ドレッシングのたっぷりかかったキャベツの千切りを深雪ちゃんは頬張った。さっきから野菜を口の中に溜め込んでいるような気がする。もしかしたら深雪ちゃんは、野菜は苦手なのかもしれない。


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