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15段目 3層目と4層目の間 その1



 あれから南海を寮へと連れ戻り

 説明するのには時間が遅かった事から

 翌日、屋上に集まって説明する事となった。


 その時までにはある程度の事は渚から聞いていたり

 ゴッドラインもスマホに勝手にインストールされていたそうで

 殆どの事を知っていた。


 南海の称号は「射手」。

 力と器用さに特化した、遠距離かつ俺達の中で

 最も威力のある攻撃が出来るものだった。


 元々南海は中学の頃までは弓道部だった。

 今現在は弓道部に一応在籍しているものの幽霊部員だ。


 理由は中学の頃にあったと聞いている。


 弓道と言うスポーツは強い力が加わって

 あまり幼い頃から始めると骨が歪むとかがあるそうで

 年齢制限をしている教室なども多いのだとか。


 そんな中、南海は小学校3年生から始めたのだそうだ。

 この北上を選んだのも中学から弓道部があるからに他ならなかったそうだ。


 しかし中学から始める人も多い中。4年間のアドバンテージもあったが

 何より腕が良かった事で、高学年の嫉妬を買ったらしい。


 そしてイジメが始まったのだとか。


 男子のイジメと女子のイジメには大きな違いがある、と俺は思っている。

 男子のイジメはどちらかと言えば直接的。

 殴る、蹴るなどのものが多いというイメージがあるが

 女子のイメージは精神的に「くる」ものが多いイメージだ。


 特に道具を壊されたりは日常茶飯事で

 顔も整っていた事もあり、渚と出会っていなければ

 今頃は大変な事になっていた可能性すらある事も

 この短い付き合いながらも、俺も知っている。


 読者モデルになったのも渚の紹介で

 弓道そのものは辞めてはいないが、部活としては今後

 戻るつもりはないのだそうだが、その腕は中学生弓道大会優勝や

 現在高校1年であるにも関わらず、3段を取得していて

 高校生で3段の取得が出来る事自体がかなり稀有なのだとか。


 そういう理由もあり弓道部の顧問の先生からは

 やりたくなったいつでも戻ってきなさい、と言う事で

 幽霊部員状態なのだとか。


 弓道部としては南海のイジメに加担していた連中は

 軒並み弓道部から退部させられている為

 今、戻ればそういう連中は居ない一方で

 実際には北城学園には残っている。


 それをまだ恨み、根に持っている事もあり

 南海も弓道部自体には今のところ戻らず

 たまに別の弓道場に出向いて練習する事はあれど

 北城学園の生徒、として大会などに出る事は今のところ考えていないそうだ。


 まぁ、目の前であれだけのものを見せられて

 腕などを疑う事は無いのだけど……。





「で、私に隠れてそんな事してたのね……。」



 どちらかと言うと俺と康太と渚は

 屋上で正座させられて、渚の時のように怒られていた。


 南海に適性があったからこそ、あそこで射手の適性を得て

 俺達が3層を踏破出来た事も大きかったが故に

 現時点では南海に怒られるしかないし、頭が上がる状態ではなかった。



「じゃあ、次からは私も連れて行ってくれるんだよね?」


 ただ渚よりはあっさりしていて

 次からは連れて行く、と言う事で解放された。


 但し、問題が多く残っていた。

 何故あのキングスケルトンは入れ替わりで拉致を繰り返していたのか。


 その答えが明確になったのは「ゴッドライン」での神様の説明だった。

 あのキングスケルトンは生命エネルギーと呼ばれるものを

 主食としていたのだそうだ。


 しかも会話が出来る魔物、と言うのは知性が非常に高く賢いそうで

 そのまま吸い続ければ、人は死んでしまうが

 1日程度吸うだけであれば、死ぬ事は無く命は助かるらしい。


 あのキングスケルトンはいわば殺さないように吸い

 吸い続ける事が出来る環境を維持しようとした、と言うのが理由なのだそうだ。


 学園を牧場に見立て、入れ替えて吸う事で

 永久に搾取出来る環境を整えたかったとでも言うべきか。


 そして南海がキングスケルトンの姿だった事も

 もし、その状況が露呈し何者かにダンジョンに入られたとしても

 拉致した人間を犠牲にして、逃げるつもりだったらしい。


 実際に俺達も初見であの巨大なキングスケルトンが

 南海だったとは解らず、攻撃を仕掛けた事が

 その思惑には乗せられていたという訳だ。



「小賢しい野郎だ……。」


「珍しく合ってるな。」




 俺達は南海を銜えて、4人となったが

 その影響は大きいと考えた。


 南海は射手で遠くから最も高い攻撃力を持つ事から

 基本、俺と後ろに陣取る事となったが

 その能力が基本、単体に対する攻撃ではあるものの

 貫通能力もあると言う事。


 そして最も影響が大きい事はダンジョン外で

 俺達がインビジブルしても、映る上に視認が可能となる

 防犯カメラ対策だった。


 ダメージは一切与えないが、一時的にその機能を止める

 矢を射る事が出来て、それが監視カメラにも効果があると言う

 今、最も難題としていた部分だった。


 そしてそれはすぐに必要となった。

 3層の攻略から暫くして、上東線で事件が発生した。


 夕暮時の通勤ラッシュの最中に上平橋駅の

 快速電車の通過時に人身事故が多発し始めていた。


 全員が全員、亡くなった訳では無いものの

 その多くが重症、もしくは意識不明で軽症者はほぼ皆無。


 唯一、軽傷で済んだ人物はどうやら足を掴まれて

 引きずり込まれた感覚があった、と言う事らしい。



「なんでそんな事まで知ってるの?」


「渚の魔法だ、平橋警察に高上平警察に袋池警察等

 各警察署から、この辺りの交番1つ1つを

 盗聴しているから、マスコミより早く情報が集められてるんだ。」


「へぇ、便利だね。」


 しかも監視カメラにはそのようなものは一切映っていないそうだ。

 頻度はほぼ毎日。


 あまりの高頻度に止む無く鉄道会社は上平橋駅の通過時に

 非常に遅い速度で通過する事にしたものの

 それでも人身事故は発生した。


 見ていた人からは、白線の内側どころか

 反対側の白線近くから、電車に向かって足が引き摺られていく所すら

 見たと多くの人達の証言があっただけでなく

 今の技術的に、それがSNSなどに動画としてあげられた事で

 警察もそれを認め、多くの警察官が配置される異常事態にまで発展した。


 また上平橋駅にはホームドアが設置されていない事から

 ホームドアの設置の検討すら始まったのだとか。


 毎日起こる事態に、マスコミが詰めかける上に

 野次馬までやってきて、むしろホームの方が寿司詰め状態となり

 それが原因で死者が出た事で、上平橋駅そのものに対しての

 入場制限などまで行われているとか。



「俺達、全寮制だから電車で起こるとこうして

 どこかから情報が無いと、解らないな……。」


「で、匠はそれを確認しに行って職質食らったって?」


「ああ。」


 上平橋駅周辺では多くの警察官によって夕暮時には

 職務質問が多く行われていた。


 しかも俺は狙って職務質問を受けた後

 駅前交番まで任意同行を求められ、かなり長い時間色々と聞かれた。


 渚が確認出来た内容としては

 まず全寮制である北城学園の生徒が電車を待つ、と言うのは

 外出自体は普通に認められている事から

 特に変では無いのだが、それが連日続けてというのは

 少々不自然だったようだ。


 渚の魔法では聞けるのはあくまで声だけであって

 視認などが一切出来ないという欠点もある。


 それを補うべく、俺が連日上平橋駅へと夕暮時に

 現れた事、しかも平日は制服姿で外出すると言う制限も

 校則にはある為、目立ったらしい。



「まぁ、駅近くをウロウロしてる割に買い物もしてなきゃ

 電車にも乗らない、じゃ疑われるよな……。」


「せめてマイバッグ位持っていけば良いじゃない。

 コモディハンダでも肉のサンマルでも激高本舗でも

 おとなりの八百屋でもあるじゃない。

 そういえば最近、NGストアが出来たんだっけ?」


「3食ついてる学生が何買うんだ?」


「…………お菓子や飲料なんか買えばいいんじゃない?」


「八百屋と肉屋には無いぞ……。」


 まぁ、事件には無関係だと開放はされ

 無意味にうろつくのは危険だからと怒られた程度だ。



「でも神から聞いたんだろ?」


「ああ、ダンジョンから飛び出た魔物の仕業だとな。

 それもあって確認に行っていたんだ。」


「今回はダンジョンじゃないんだね。」


「そういう話だ。」


「なら南海も当てにして、全員で称号衣装で行って

 確認するのが良いんじゃない?

 姿も見られないし、何より今回から監視カメラにも

 映らないんだからさ!」


「そうだな……。」


 翌日、俺達は4人で放課後に商店街へと向かう事にしたのだった。

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