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フィニッシュガールズ  作者: 鈴神楽
外伝:夏休み編
15/21

フォーカード対精霊神の使徒

鬼神のフォーカードと精霊神の使徒達との対決

 珊瑚帝国が潜む遺跡に続く道。

「ねえ、疲れた」

 智代の言葉に誰も答えない。

「何であたしまでここに居るのかしら?」

 誰となく話すエアーナ。

「アールちゃんは、大丈夫?」

 気遣う優子とそれに笑顔で答えるアール。

「大丈夫です。ここは、アールには、散歩コースです」

「これってギャラでるんだよな」

 木刀で肩を叩きながらいう雷華。

 そんな較の元クラスメイト達を見てホープが較に言う。

「本気でどうして連れてきたんだ?」

 大きなため息を吐いて較が答える。

「あちきもアール以外は、置いてきたかったんだけど、連れてきた者の責任だって優子さんがついてきて、それだったら自分も行くって智代も手を上げて、だったら護衛にって雷華もついて来たの。そうなるとエアーナ一人残すわけにも行かなかったんだよ」

「友達に甘すぎだぞ」

 地龍の言葉に良美が反論する。

「優子達だって自分の考えがあるんだからいいじゃん!」

 地龍は、正面から返す。

「自分の考えを持つのは、良いが、自分の身を護れないでは、単なる我侭だ」

 睨み合う二人にユーリアが言う。

「駄目よ、ここで喧嘩したら困るのは、ヤヤちゃんだけなんだから。それより、気付いている?」

 較が頭をかきながら言う。

「空間が歪んでる。それも不安定だから、正しい道は、アールにも解らないだろうね」

 手を叩くアール。

「珊瑚神様を降臨の準備段階で大きな空間の歪みが発生するんでした」

「やっぱり失敗作だ」

 雷華が呆れた顔をして、アールが落ち込む。

 優子がそんなアールを慰めながら言う。

「どうにか出来ないの?」

「ここは、あたしがバイクで道を見つけ出すしか無いわね」

 キッドの言葉に較が複雑な顔をする。

「流石に幸運に任せるのは、駄目だよ。白風の技でも解析は、不可能じゃ無いけど時間が掛かる。間結や八子さんだったら、空間の歪みなんて朝飯前に解析するんだけど。高くなるけど八子さんに間結の人を連れてきてもらうかな?」

 雷華が言う。

「その八子さんなら大丈夫なんだったら、その人にやってもらえば良いだろう?」

 ユーリアが苦笑する。

「相手は、霧流の長の奥さんだから、こっちの命令を一方的に従わせる訳にもいかないでしょ。連れてきてもらうのだって何千万単位の支払いを要求される相手だしね」

「どっちにしろ、一度が通信可能な場所に戻らないと駄目だな」

 ホープの言葉に智代が手を上げる。

「こんな時の為にあたしが居るのよ!」

 雷華が首を傾げる。

「お前、そんな芸を持ってたのか?」

 智代は、自分のつけた指輪を見せ付ける。

「あたしには、これが、『導きの指輪』がある!」

「駄目にきまってるでしょうが! それは、魂を消耗するんだから!」

 較が怒鳴るが智代が胸を張っていう。

「そんなの何時もヤヤがやってることでしょ。自分がやっておいて人にやるな何て我侭を、どうしてきかないといけないの?」

「あちきは、元々そういう人間だから良いの!」

 較の反論に智代が真正面から答える。

「違う! 同じ人間だよ。ヤヤが自分の事を全力でするんだったら、あたしもあたしに出来る事を全力でやる。文句は、言わせないよ」

 較が更に何か言おうとするが、良美が肩を叩く。

「ヤヤの負けだよ。智代、無理は、しないでね」

「任せて、あたしもまだまだプライベートビーチで遊ぶんだから」

 智代は、神器である指輪の能力を、魂を消耗させて使用し、いくべき道を指し示す。



 遺跡の中央部。

「大変です、奴らが遺跡の中に入ってきます」

 ジーが珊瑚神の祭壇で最終準備を行っていたゼットに告げる。

「慌てるな。ここに入るには、四方の精霊神の使徒を倒さなければならない。いくら八刃でも移動時間は、どうしようもあるまい。奴らが使徒達を倒す前に、珊瑚神様を呼び出せば我等の勝ちだ」

 あからさまな安堵の表情をするジー。

「そうでしたな。奴等には、精々時間を稼いでもらいましょう」

 そんな軽薄な言葉を聞きながら、ゼットは、拳を握り締めていた。

 その手には、自分が見つけた精霊神の使徒達の誓いの証である珊瑚の指輪があった。



「この先、でも四方からこの地を封印する力が流れている」

 智代の言葉に較が舌打ちする。

「精霊の力を収束する力を防御に流用したみただね」

「強引に押しは入れないのか?」

 雷華の言葉にユーリアが答える。

「無理ね。珊瑚神の力で作られたシステムみたいで、かなり強力な結界。ヤヤちゃんのホワイトファングだったら、破れないこともないけど、後の事を考えたら、ここで使いたくないわね」

「そうなると手は、一つしかないな」

 地龍の言葉にキッドがいくつかの荷物をバイクから降ろして雷華達に渡す。

「荷物持ちくらいは、頑張りなさい」

 荷物の一つを受け取りながら優子が質問する。

「どうするつもりなのですか?」

 ホープがマグナムを構えて言う。

「俺達が一人一人ずつ精霊神の使徒達を倒してくるんだ。倒した終ったところでヤヤが中央部に突入し、珊瑚神の復活を阻止する」

 較が頷く。

「すいませんが、よろしくお願いします」

 そして四方に駆け出していくホープ達を見送る較たちであった。



 最初に到着したのは、やはりキッドであった。

 風の精霊神の使徒エフと遭遇した。

「こここそ、我等の聖地。前回の様な事は、ならないぞ!」

 リベンジに燃えるエフにキッドが淡々と答える。

「時間が無い、早く済ませよう」

 高速で、迫るが、エフは、笑みを浮かべる。

「残念だな、鬼神のフォーカード、ナイトオブハート! スピードで我に勝てる者などいない!」

 風を身に纏った男は、キッドの音速のバイクより早く動き、風の弾を撃ち放つ。

「お前に俺を捉える事は、絶対に出来ない!」

 高笑いをあげるエフ。



 地龍が到着した先には、土の精霊神の使徒エヌが居た。

「惜しかったな、他の使徒ならば、お主の拳も通じよう。しかし、大地の力を得た我に汝の力は、通用しない」

 土の壁が現れる。

「いかなる術も我には、通じぬ」

 地龍の触れた土壁が崩れていく。

 しかし、エヌの余裕の表情は、崩れない。

「クンフーオブクローバーよ、お前の術の無効化は、発動した術を無効化出来るだけだ。その経過までは、無効化できまい」

 エヌの術解除と共に発生した土が一斉に地龍に襲い掛かる。

 地龍は、大きく後退してそれを避ける。

「いくらでも無効化すればよい、しかし残った土までは、どうしようもあるまい」

 土煙が立ち上る中、次々と解除し、大量の土砂で地龍に攻撃をする。



 ユーリアの到着した先には、大量の水を湛える湖だった。

「カットオブダイヤ、貴女も運がありませんでしたね。土ならば、糸で隙間を通り、風や炎ならば、糸を止められない。しかし、水は、違います。完全に私を覆います。もはや貴女に私を倒す方法は、ありません」

 余裕の表情を水で作り出された球体の中で宣言する水の精霊神の使徒ユー。

 ユーリアが大きくため息を吐く。

「折角女性が相手だと思ったのに、あたしのタイプじゃ無いわ」

 ユーが余裕の笑みを続ける。

「いくら挑発しても、駄目よ。私は、絶対に油断しない!」

 苦笑するユーリアに湖から次々に水の槍が放たれる。



 ホープが見る先には、炎を全身にまとった火の精霊神の使徒イーが笑みを浮かべていた。

「これは、爆笑だ。フォーカードの中でも最強と呼ばれるガンオブスペードが来た。それも、もっとも俺が有利だって事がお笑いにしかならないぜ!」

 ホープも笑みを浮かべる。

「相手なんて関係ないな、俺は、俺の敵を打ち抜くだけだ」

 イーは、高笑いをあげて言う。

「馬鹿が! お前程度の火力が通じると思ってるのか!」

 次々と大地すら溶かす炎の塊を撃ち出すイー。

 逆にホープが撃ち出す弾丸は、到着する前に炎の火力で融けてしまう。

「絶望的だろう? これこそが常人と珊瑚神様の眷属である精霊神に使える使徒の力の差だ!」



 中央でホープ達の成果を待つ較達。

「でも、あの人達は、大丈夫でしょうか? 精霊神の使徒は、己の守護する場所では、天変地異すら起こせるって話です」

 心配そうにするアールに良美が答える。

「心配するだけ無駄。ヤヤにも勝てるあの四人が負ける訳無いよ」

 エアーナが言う。

「でも、もしかしたら力が劣っている可能性もありますよ」

 較が簡易セットで作った紅茶を渡しながら言う。

「純粋な力なら、精霊神の使徒の方が数段上。向こうのテリトリーだし、八刃の人間でも勝つのは、容易じゃ無いね」

 驚く優子。

「助けに行かないと!」

 較が苦笑し良美が言う。

「ヤヤも変な事を言うなよ、ヤヤは、万が一にもあの四人が負けるなんて考えてないんだろう?」

 較が頷く。

「当たり前だよ。力だけで勝てるんだったら模擬戦であちきが負ける訳無いもん」

 智代が首を傾げる。

「じゃあどうして勝てないの?」

 較が少し不機嫌そうに言う。

「キャリアが全然違うんだよ。あの四人は、本気で特上の戦闘を続けていた。どんな力を持っていても、実戦経験が少ない精霊神の使徒じゃ、あの四人に、弄ばれておしまいだね」

「確かに、あの四人の技量は、厚い。何百年生きた吸血鬼より戦いなれているしね」

 雷華の言葉に較が断言する。

「何百年生きて、何万回戦って居ても関係ない。密度が高い戦いをどれだけしたか、力だけで戦った吸血鬼なんて目じゃ無いよ」



「何故だ! 何故当たらないんだ!」

 エフが叫び、連続して強烈なカマイタチと空気の超圧縮弾を撃ち出す。

 しかし、その全てがあっさりキッドに避けられる。

 苛立ちながらもエフが宣言する。

「だが、無駄だ! スピードでは、俺が上、お前が俺を捉える事は、不可能だ!」

 だが、着実にキッドは、接近してくる。

「馬鹿な、スピードは、こちらが勝っている筈だ!」

 木々がエフの視界を塞いだ。

「スピードとは、単に最高速で競うものじゃ無い。最短コースを進むテクニックもまた必要なんだ」

 後ろからのキッドの声に振り向きざまに最高速のカマイタチを放つエフ。

「そしてお前の攻撃は、単純でいくらでも予想できる」

 キッドが交差した瞬間にエフの首を切り裂いた。



「流石は、簡単には、倒されてくれないな」

 エヌは、術解除による土砂攻撃を繰り返すが地龍は、それを全て避けていた。

「お前は、何故自分の攻撃が当たらないか解っているのか?」

 地龍の質問にエヌが淡々と答える。

「お前の実力が優れているからだな」

 地龍は、首を横に振ると自分を囲う、土の壁の一部を崩す。

「簡単な理屈だ、お前が術を解除で攻撃した瞬間、私も一部の土壁を解除し、私への攻撃をコントロールしている。所詮は、自分でコントロールできていない攻撃なぞ、ものの数でもない」

 エヌが気合を籠めて言う。

「ならば、これでは、どうだ!」

 一気に上空に土の塊を生み出しその上に乗る。

「この大質量の広範囲攻撃、避ける方法は、あるまい!」

 術が解除され、固められた土が一気に地龍に向かった。

 土が全て地面に落ちた。

「これで終ったな」

 エヌが勝利を確信してその場を離れようとした時、その胸を地龍が貫いた。

「馬鹿な、どうやってあの攻撃を防いだ」

 最後の力で問いかけるエヌに地龍が告げる。

「お前の攻撃がどれほど強くても大地を壊すことは、出来ない。先に地面に潜れば、良いだけだ」

 エヌが苦笑する。

「所詮、人間の力では、大地には、勝てないという事か」

 そのまま崩れ落ちるエヌであった。



「器用ね」

 ユーの言葉に、自分の張り巡らせた糸の足場をつたい、水の槍を避け続けるユーリアが言う。

「そう? 水を圧縮して打ち出すなんて二度手間をやっているのだからどうしても攻撃が遅く、読み易いだけだと思うけど」

 悔しそうにユーが答える。

「しかし、貴女の糸は、水の防御を貫けないのも事実」

 ユーの言葉通り、ユーリアの糸は、水の防御を突破できていなかった。

 ユーリアが笑顔で答える。

「貴女は、勘違いしてるわね、どうして、あたしがこんな無駄な攻撃を繰り返しているかを」

 ユーが戸惑う。

「何が言いたいの? 今だって、攻撃が通じてないじゃ無い」

 ユーリアが微笑む。

「ちょっとSMプレイ」

 ユーが硬直し、その頭からユーリアの糸が飛び出る。

 ユーリアは、すまなそうに言う。

「ごめんなさいね、もっと愛撫してからお尻に入れてあげた方が良かった? でも、あたしの愛撫で緩めていたからもう大丈夫だと思ってたのよ」

 ユーリアの攻撃に反応し続けた水の防御、そこに僅かな緩みが発生していた。

 ユーリアは、それを使ってたった一本の糸でユーを貫いたのだ。



「手出しも出来まい!」

 圧倒的な火力で余裕を見せていたイー。

 ホープは、揺るがない笑みを浮かべてマグナムを向け続ける。

「無駄だ! いくら撃っても俺には、通じない! これで終わりだ!」

 太陽と見間違うばかりの炎の塊がホープに放たれた。

「ラストショット」

 ホープが引き金を引くと、周囲の気を取り込み放たれた攻撃は、放たれた炎を取り込み、イーに向かっていった。

「馬鹿な、何故だ!」

 ホープが鼻で笑う。

「お前は、自分の力を操れて居ない。ただ強い力を放てるだけだ。そんな力を取り込むなんて朝飯前なんだよ」

 痕跡一つ残さず消え去ったイーが居た後を見ながらホープが言う。

「エンのアポロンもこんくらいコントロールされてなかったら一度くらいは、勝てたかもしれないな」

 苦笑するホープであった。



「終ったみたい。行きますか」

 較がそういって、ゼットが待つ、珊瑚神の祭殿に向かうのであった。

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