珊瑚の復活を願う民達
エレメタルコアを狙う水の精霊神の使徒ユー。そしてあの組織の影が……
「珊瑚帝国については、直ぐに回答が来たよ」
較が資料を優子だけに渡しながら言うと智代が不満そうな顔になる。
「何で委員長だけ、資料を見せるの?」
優子は、見終えた資料を智代の前に置きながら答えた。
「これを読めるの?」
見せられた詳細の資料に智代が較の方を向く。
「話を続けて」
較は、気にせず説明を開始する。
「珊瑚帝国は、この周辺諸島に一大勢力を誇っていたの。その中心にあったのが、珊瑚神。その強大な力で統治を行っていたらしいけど、珊瑚神が神の国に戻った後、衰退したらしい。まあよくある話だけど、問題は、この珊瑚神って言うのは、八刃の記録でも危険度が高い異邪と認定されていること。地理的な事情で全面対決は、無かったけど、かなり遣り合って、洒落にならない被害が出ていたって話。珊瑚帝国が潰れたのも、八刃の下位組織が関わっていたらしい」
優子が難しい顔をして言う。
「随分と酷いこともしてたみたいですね」
較が頷く。
「はっきりいって、皇帝の血筋が残っていたのは、奇跡だよ」
雷華が馬鹿にした顔で言う。
「どうせ偽者だろう。八刃が関わっていて、そんな中途半端な事するなんてとうてい思えない」
その時、ドアが開き寝ていた筈のエレメタルコアをもった少女が叫ぶ。
「ゼット様は、正当な皇帝家の直系です!」
「どうしてそんな事が言えるの?」
エアーナが質問を返すとその少女が答える。
「あたしを起こせたからです。正当な血統でなければそんな事は、出来ません!」
首を傾げる智代達。
そこに地龍が来て言う。
「そいつは、普通の人間と気の流れが違う。ホムンクルスの類か?」
較は、首を横に振る。
「珊瑚をベースにした生体ロボット。資料にも珊瑚帝国では、戦闘型生体ロボットが大量に投入されてる」
更に疑問符を浮かべる智代達を代表して良美が言う。
「簡潔に説明して。まずは、ホムンクルスから」
雷華が手を上げる。
「それだったら聞いた事がある。よくアニメとかで出てくる錬金術師が生み出した人工生命体の事だよね」
ユリーアが来て答える。
「錬金術のホムンクルスには、もう少し細かい注釈がつくけど、世間一般的にはそんなところ。基本的には、人が作り出したって事意外は、生物だって事がここでは、大切ね」
「生体ロボットって言うのは、生物のパーツを使って作られた、目的に沿って行動する道具なんだよ。生物としてあるべき、本能を持たない、ただ目的のためだけの存在」
較が辛そうに言うのに対して少女は、胸を張って答える。
「そうです。あたしは、誇り高き珊瑚帝国の象徴である珊瑚が滅ぶ時、それを復活させる為の装置の心臓部になる為に作られた珊瑚人形のアールです」
「何を考えてるんだ!」
当然の様に良美が怒るが、少女、アールは、何を怒っているのか解っていない。
「どうしたんですか?」
ホープが苦笑しながら答える。
「お前には、永遠に解らない思いだから気にするな。問題は、そんなお前がエレメタルコアを何故持っているかだ」
その言葉にいきなり沈むアール。
「あたしは、失敗作みたいなんです。だから、これを使って珊瑚を復活させるとゼット様が言っているんです」
「具体的な話は、知らないのか?」
キッドの言葉にアールは、あっさりしゃべる。
「何でも、四つの精霊の神殿の力をこのエレメタルコアで増幅し、珊瑚神様に降臨して頂き、その御力で、珊瑚を復活させるって話です、でもその為には、大量の龍脈の力を奪う事が必要で、そのターゲットがこの国を蹂躙した国の大都市らしいんです。そうなったらたくさんの人が死にます。ゼット様は、絶対に悲しみます」
「だから、中心であるエレメタルコアを奪ったの?」
較が確認するとアールが頷く。
「はい。あたしは、失敗作かもしれませんが、頑張って珊瑚を復活させるから、ゼット様には、そんな事をして欲しくないんです!」
その答えに較やオーフェンハンターは、複雑な顔をするが、良美が肩を叩いて言う。
「偉い! 相手の事を思ったら、そんくらいしないと駄目だ。よし、あたし達がその野望を打ち砕いて、そのゼットって奴を更生させてやる!」
「本当ですか!」
嬉しそうにするアール。
良美が胸を叩き言う。
「任せておけ。良いだろうヤヤ?」
較は、少し考えてから頷く。
「珊瑚の復活の方は、難しいかもしれないけど、野望を打ち砕くのは、良いよ」
智代が気楽に言う。
「別にいいじゃん、ヤヤってお金持ちなんでしょ、珊瑚の復活くらいなんとでもなるんじゃん?」
優子が首を横に振る。
「一度壊れた生態系を戻すのは、どんな大金を使っても無理です。それこそ神業の世界の話なのよ」
それに対してアールが自信たっぷり答える。
「そっちは、任せてください。ゼット様は、失敗作って言いましたが、機能には、問題は、ありません。きっとちょっとした事ですから、あたしさえ頑張ればなんとかなります!」
「その意気だ! いくぞ!」
良美がのりのりな時、窓の外から激しい音が聞こえた。
「何!」
エアーナが驚き音の方を向くとそこには、激しい水流が空中で飛び散って居た。
ホープが呆れた顔をして言う。
「賞金額がこないだ五百万ドル越えしたヤヤの別荘に、そんなちゃちゃな攻撃が通じると思っているのか?」
較が周囲を見るとユリーアが答える。
「正解、正面からの攻撃は、微小だけど術の気配が来てる」
次の瞬間、花瓶が割れて、その中の水がエレメタルコアを掴むと窓から投擲された。
「逃がすかよ!」
ホープが撃ち落そうとするのを見てキッドが言う。
「ホープ、それを無事持ち帰るとボーナスだそうよ」
ホープは、撃つのを止めて言う。
「やはり、こういうのは、本人をみつけないとな」
外に出て行くホープ。
「お金でるのか?」
雷華の言葉に較が頷く。
「エレメタルコアって強力だけど、作るのは、物凄く面倒だから凄く価値があるの。捨て値で売っても億は、きらないよ」
「あたしも協力するから分け前な!」
意外と貧乏学生の雷華も後に続く。
「ヤヤは、いかないの?」
エアーナの言葉に較が肩を竦める。
「あちきは、皆の護衛をしないといけないからね。すいませんけどキッドさん、あっちをお願いします」
キッドが頷く。
「娘の養育費もあるから頑張るわ、さっきのボーナスの件は、本当にしておいてね」
「嘘だったのですか?」
優子が驚いた顔をするとキッドが苦笑する。
「可能性は、高いと踏んでたの。あのまま壊させて、ボーナスの種を減らすよりましでしょ」
「お父さんにかけあいます。最悪は、あちきが払いますよ」
較の言葉に頷きキッドが外に出て行く。
エレメタルコアの争奪戦が始まっていた頃、遺跡では、司祭のジーが一人の美少年と会っていた。
「すいません、オイノ様。折角お譲り頂いたエレメタルコアを……」
それに対してその少年は、微笑で答える。
「良いんだよ、それより相手は、盟主白風の次期長とオーフェンハンターのトップメンバーだ。油断だけは、しないでくださいね」
ジーは、頭を深く下げて言う。
「必ずや、エレメタルコアを奪回して、珊瑚神様の降臨をなしてみせます」
「頑張って」
美少年の軽い返事にペコペコと頭を下げながら去っていくジー。
ジーが去った後、一人の美少女が現れる。
「本当に大丈夫なの?」
美少年は、苦笑して言う。
「実は、もう目的は、達成しているんだ。龍脈を使った八刃への攻撃、間結の対応がもうなされていた。それだけでも解っただけでも成果だ。そして、今回の戦いの記録も今後の戦いに大きなプラスになるよ」
美少女が呆れたって顔をして言う。
「所詮は、捨て駒って事ね?」
美少年が手を結び祈る。
「僕も神に祈ってあげるさ、成功するように」
「そして祈る以上の事は、しないって事?」
美少女の言葉に美少年が答える。
「バトルの組織が保有していた万年龍の遺体が別の人間の手に渡ったらしい。そろそろ次の行動に移ろう」
「そうね」
美少女も頷き、二人は、あっさり消えていくのであった。
ビーチにたったキッド・ホープ・雷華を海岸から伸びた無数の水の槍が襲ってきた。
「単純な物量攻撃だな」
ホープは、砂浜にマグナムを打ち込み、弾き飛ばした砂に籠められた気の力で水の攻撃の全てを防いでしまう。
「……凄い」
雷華が単純に驚くとキッドが言う。
「オーフェンハンターをやってるならこの程度の攻撃を簡単に防ぐ手の十や二十を持ってるものよ」
『さすがわ、鬼神のフォーカード、ガンオブスペードだけは、ありますね。私は、水の精霊神の使徒、ユー。エレメタルコアとアールを返して頂きに来ました』
全体に響き渡るようにユーの声がした。
ホープが笑みを浮かべて答える。
「残念だが、お前達の計画は、潰す方向で話が進んでる。今回は、ヤヤの、白風の次期長の別荘に攻撃しかけてきたんだ、反撃は、許されるぜ」
『そうですか、ならばここで死になさい!』
ユーの返事と共に巨大な津波が襲ってくる。
「抜けるわよ!」
キッドの言葉にホープは、雷華を抱き抱え、キッドの後ろに乗る。
そして、キッドが津波をバイクで突破する。
「吸血鬼を相手に戦ってたから、大概の事じゃ驚かないつもりだったけど、非常識って言葉しかないよね」
雷華が小さくため息を吐くとホープが言う。
「ここで問題だ。姿を隠した相手を見つけ出すのには、どうすれば良い?」
雷華が霊木の木刀に力を籠めて振りまくる。
「こうやって無差別に攻撃する」
『そんな攻撃があたると思ってるのですか?』
ユーの嘲りの言葉にホープがマグナムを海に向けて答える。
「正解なんだよ! 標的を定めない攻撃に無意識に防御を固めた場所に敵が居るからな!」
ホープの放った弾丸が海に突き刺さり大爆発を生む。
弾き飛ばされ、海面に現れるユー。
「馬鹿な、こんなにあっさりとこっちが見つけられるなんて……」
ホープがマグナムを向けて言う。
「力は、たいしたもんだが、戦闘ってもんが解ってないな。大人しくエレメタルコアをだしな」
その時、突風によるカマイタチが発生した。
「またか!」
ホープは、舌打ちをしながら、カマイタチをサブの拳銃で打ち砕く。
その間に巨大な水の壁が生み出される。
「逃がさない!」
キッドが追撃を仕掛けようとした時、巨大な炎の塊が生み出され、水の壁を大量の水蒸気に変化させた。
『保険をかけておいて正解でした。エレメタルコアは、返してもらいました。アールも直ぐに取り返しに来ます!』
ユーがそういって気配が消えていく。
「追わなくて良いの!」
雷華の言葉に不機嫌そうな顔をするホープの代わりキッドが答える。
「あっちの戦力が解らない以上、ここで追撃は、危険。仕切りなおしね」
遺跡で、エレメタルコアを受け取ったジーが嬉しそうに言う。
「よくやった! これで珊瑚神様の降臨が成る!」
そんなジーを尻目にゼットが言う。
「アールは、取り戻せなかったのか?」
ユーが深々と頭を下げて言う。
「抵抗が厳しく、そこまでは……。しかし必ず、取り戻します」
ジーが勝手に答える。
「構わん、所詮は、予備の駒、今は、珊瑚神様の降臨の儀式が先だ。お前達は、準備に入れ」
それに答え、その場に居た四人、風の精霊神の使徒エフ、水の精霊神の使徒ユーそして真赤な髪をした火の精霊神の使徒イー、鋼の巨体を持った土の精霊神の使徒エヌが礼をして、それぞれの持ち場に散っていく。
「いつから、お前が命令出来るようになった?」
ゼットの言葉に慌てるジー。
「すいません! しかし、今は、少しでも早く儀式を完成させる必要があります」
必死に頭を下げるジーを見てゼットが小さくため息を吐く。
「まあ良いだろう。この儀式、必ず成功させろ」
「はい、身命に代えましても」
ジーの答えは、言葉こそ立派だったがゼットには、空虚の物に聞こえた。
較の別荘。
「それでどうするの?」
智代の言葉に、良美が答える。
「作戦に変更は、無し。あいつらのアジトに向かって叩きのめし、反省させる。それだけ」
「意気込みだけじゃ駄目でしょうが」
優子が言うと較が言う。
「実際、詳しく調査したら、もう龍脈を使った準備が始まってた。間結は、八刃のテリトリーだけは、護る結界は、張り終えてる」
「相変わらず、他人の事なんて眼中にないな」
ホープが呆れた顔をし、地龍が顔を顰める中、ユリーアが言う。
「人間なんてそんなもんよ。でも、阻止するんでしょ?」
較が頷く。
「まあね。あんな良い子を悲しませたくないからね」
較の見ている先では、先程のまでの食事の後片付けをするアールを見る。
「良い子ですよね」
エアーナの言葉に全員が頷く。
「何、決まった話で騒いでるの! 時間をかけても仕方ない、行こうよ!」
良美の言葉に較が苦笑しながら言う。
「そうだね、被害が出る前に片付けるよ!」
こうして、較達は、遺跡に向かう事になり、珊瑚帝国との全面対決が始まるのであった。




