騎士が呟く最後の言葉
少し過激な表現がありますので、注意してください。(血とかでてきます。)
「さあミーフェ、返事をして頂戴。あなたならば、きっと私を選んでくれるのでしょう?これをずっと待っていたのでしょう?」
サラは、目を爛々と輝かせ、ミーフェの返事をせかした。
ミーフェは、目に静かな光をたたえたまま、俯いた。
「何度話したら分かるのです。私は、ここに残るつもりは無いと、何度も念を押しておいたはず。あなたは、なぜそこまでなさるのです」
ミーフェの静かな表情にも、少しだけの情を見て取ったサラは、ミーフェの手をとった。
「…ミーフェ。あなたは少し疲れているのよ。きっと休めば元の…優しくて、私のことを最優先にしてくれるあのミーフェになっているはずよ。そう、きっとそうなのよ。
だって、あなたはおかしいわ。何度も言ってるじゃない。私は、ミーフェのことを考えて言ってあげてるの。
あなたがここへ戻れば、あなたのお父様とも、お母様とも一緒に暮らせるわ。今の生活なんかより、余程幸せな暮らしが待って―――――」
「ガタン!!」
ミーフェの手がサラの両手をすり抜け、机を叩き鳴らした。
「ミーフェ?」
サラは、立ち上がり髪で顔が見えないミーフェを覗き込んだ。
「…お言葉ですが、あなたの話の意図が全く理解できません。あなたの言葉を聞いていると、まるで私は悪いことをしたかのように聞こえます。違いますか?」
ミーフェの声には初めて、苛立ちが読み取れた。
「あら、そうよ?あなたは私が引きとめたにも拘らず、ヴィアナなんかへ姿を消したのです。それは、悪いことではないと言いたいのですか?」
サラは微笑を浮かべている。
「…あなたのほうが、余程おかしくなった。私は、そんなあなたに仕えたくはありません。さあ、これで私の心中は察知できたでしょう。では、私はもうお暇させていただきます。」
ミーフェは、途中から息を弾ませ、サラに向かってそう言い放ち、部屋の入り口へと足を踏み出した。
「ミーフェ、あなたの心のうちだなんて、もうとうの昔にお見通しなのよ。だからこそ、私は今になってあなたを呼び戻したの。あなたは、それを知っていたのかしら?」
サラは、相変わらずの微笑でミーフェが座っていたソファを見ながら言った。
ミーフェは一瞬動きを止めたが、また歩き出し、扉の取っ手に手をかけた。
途端、扉の向こうから衛兵が数人飛び出し、ミーフェを取り囲んだ。
「!?」
ミーフェは腰の剣に素早く手をかける。
「あなたを取り戻すためなら、何でもすると、言ったでしょう。さあ、はやくその身を私に捧げるがいいわ!」
サラの声と共に、衛兵がミーフェに飛び掛ってきた。
ミーフェはそれを素早くかわし、剣を鞘から抜き取った。
ミーフェは衛兵を二人一度に切りつけ、残りの人数を目で追う。
しかし、残りの衛兵に加えて、近衛の騎士たちまでやって来た。
「………っ!」
ミーフェは数がかえって増えたことにいらだちながら、次々と騎士や衛兵を倒していく。
ミーフェは専属騎士の実力を見せつけ剣を振りかざしていくが、次々と現れかかってくる兵士に体力を奪われ、徐々に顔に苦痛の表情を浮かべた。
「…はぁ、はぁ、はぁ…」
ミーフェは、血で濡れた剣を渾身の力を込めて握り締め、息切れをむりやり押さえ込む。
しかし廊下から、更なる兵の足音が近づいてくるのが聞き取れた。
「…もう…昔には…戻れない…の…?……サ…」
ミーフェは最後にそう呟き、新たにやって来た兵士に捕らえられ、意識を失った。
「…ミーフェを、アビリスタの地下牢へ案内しなさい。くれぐれも慎重にね。本人が目を覚ましたら、睡眠薬を与えるのよ、いいわね?」
サラはミーフェを抱えた兵士にそう言うと、侍女に付き添われ、部屋を後にした。
「…ふふふふふふふ…これで、ミーフェは私のものよ。ヴィアナ王国の、エリーさん。あなたには失礼だけれど、私のほうがよっぽど、ミーフェのことを分かってあげられるの。」
サラは廊下で、不気味に笑った。
もう、昔に戻ることは出来ない、呪われた闇の笑みを浮かべて。
エリーは、ヴィアナ王国を出発し、隣国メテンス国を通り過ぎ、とうとうカルビナ帝国の首都・エンデセエルファディラに到着した。
「此処が…カルビナ帝国…何処か、重い雰囲気を感じるわ…」
エリーの一言に、騎士団の者達も息を呑んで頷いた。
「エリー殿、今夜どこかの宿で休み、気持ちを整えてから王宮へ向かうとしよう。」
バースは、まるで自分の気持ちを押さえつけるかのように説得し、エリーを守るようにして、宿を探した。
そっか、バースさんもミーフェを早く連れ戻してあげたいんだね…
私が覚悟を決めて、ミーフェを助けてあげなくちゃ―――――
エリーはバースの顔をチラリと見て、目に炎を宿した。
今度は私が、守ってあげるから、助けてあげるから、待っていてね。ミーフェ…
エリーの目に映る王宮の城は、降り続く雨で湿り気を帯びていた。
頑張って書きました…




