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かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
弑虐の王はかく語りき
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無理矢理に、修行が始まる

 結果は散々であった。

 ミロンは武器屋にて、あらゆる武器を試した。だが、その結果は悲惨とすら言えた。


 どの武器も、彼には徹底的に合わなかったのである。


 武器屋の店主曰く、ミロンは武器を持つような『創り者』ではない、とのことだ。

 身体能力や武器を扱う技量ではなく、性格が徹底的に武器というものと合致しなかったのだ。


「どうしよう」


 ミロンはギルドによって用意された宿のベッドに腰掛けていた。

 そして、途方に暮れていた。


 ミロンは強くなりたくなどない。

 けれども、強くならなくては仲間が守れない。


 今だって、ミロンは沢山の仲間を救えなかった。


 そうならない為に欲した武器だが、適性がなかった。いや、適性がないというのは、違うかもしれない。

 ミロンが武器屋で試した武器がこの世の全てではないのだから。


「……」


 ミロンは瞳を閉じて、これからについて考える。


 と、その時であった。


 一瞬で、意識が暗転した。


「何?」

「ようこそ、ミロンくん。僕の世界へ」


 霧のような靄で覆われていて、ミロンには何も見えなかった。だが、声は聞こえた。

 耳慣れた声である。


 それは自分自身の声。

 もう一人の自分が現れたのだと、ミロンは直感的に悟った。


「何さ、急に」

「ミロンくんが困っていたようだから、助けてあげようと思ってね」

「要らないよ」

「あっは。強情さんだね? でも、本当に良いの?」


 もう一人の自分の言葉に、ミロンは本当は甘えたかった。助けてくれるのならば、助けて欲しいのが本音である。しかし、彼に頼るのは、躊躇われた。


 詳しくはわからないが、もう一人のミロンはミロンの身体の主導権を狙っている。

 隙は見せられない。


「まあ、でも良いや。だって、きみの考えなんて、僕にはどうでも良いのだから」

「それはどういうこと?」

「今から問答無用で助けてあげる。あは、僕って慈愛に満ちてるね」


 指を鳴らす音が響いた。その乾いた摩擦音の後に、霧が一気に晴れ渡った。


 霧が晴れたことにより、ミロンには周囲の光景がよく見えた。そこは空であった。


 雲ひとつない空の上に、ミロンたちは立っていたのだ。


「ひぃ!」


 落ちる、とミロンは慌てたが、一向にその気配はない。恐る恐る一歩を踏み出してみると、そこには透明の床のようなものが存在した。


「じゃあ、始めようか」


 言って、もう一人のミロンが再び指を鳴らした。それに呼応して、透明の床から大量の武器が生えてくる。


「え?」


 現れたのは、武器屋の比ではない量の無数の武器たちであった。

 武器の種類は多種多様だ。


 剣にしたって、その種類だけで百はくだらない。ミロンの背丈を優に超える大剣や逆にミロンの小指程の長さの短剣もある。


 生えてきた武器は、剣だけに留まらない。

 槍や弓、釣竿などの武器とは思えない物も中には見えた。


「昔やったゲームを思い出すね。さて……よけろ!」


 もう一人のミロンの姿が掻き消えた。

 消滅したようにすら見えた。だが、実際は異なる。


 彼はミロンの背後に出現していた。

 黒の長髪がミロンの頬をくすぐった。風や音を置き去りにした、高速の移動術。


 剣のような鋭い蹴りが、ミロンの頭を斬り裂いた。


 ミロンの頭が両断された。


「よけろって言ったのに。棒立ち? 面白いね、きみ。あは」


 ミロンの頭が元どおりに再生する。

 遅れてやってきた壮絶な痛みに、ミロンは大音量の悲鳴を上げた。


「じゃ、もう一度。よけろ」


 ミロンは倒れるように、逃げ惑う。だが、あまりにもその動きは遅かった。

 もう一人のミロンはまたミロンの頭を蹴り飛ばした。


「レベル低いなぁ。ここは物理的な世界じゃないから、何度でも回復するけど、精神はどんどん磨耗していくよ?」


 それはつまり、壊れるということである。


「僕としては、そっちでも良いけど。きみが強くなろうと、ここで壊れようと、僕の目的は達成されるのだし」

「……」

「震えないでよ。情けないね。あは。ミロンくんはあまりゲームしないの?」


 謎の話題展開に、ミロンは置いて行かれた。今、ゲームをやるかどうかが何の関係があるというのだろうか。


「ほら、このシチュエーションを見てよ。僕が何をしたいのか、理解して欲しいなぁ」


 ミロンは周囲を見渡した。

 そこにあるのは、無数の武器ばかり。


「この武器を使うの?」

「そう! この中には、きっときみに似合う武器があると思う。ぼくときみの実力差はかなりのものさ。この差を少しでも埋めるのならば、相当相性の良い武器じゃないと無理だね」


 つまり、戦いながら最高の相性の武器を探せ、ということなのだろうか。


「じゃあ、チュートリアルはここまでだ。今からプロローグの始まりさ!」


 また、もう一人のミロンの姿が消え去った。

 咄嗟に、ミロンは地面から漆黒の大剣を引き抜いた。


 それを力尽くで振り回した。ミロンはスピンするように、その剣を振るう。


「ギャグなの?」


 剣ごと、ミロンは蹴り飛ばされた。


 飛ばされた先で、ミロンは槍を引き抜いた。


 地を這うような姿勢で、もう一人のミロンが襲いかかってくる。

 それに合わせるようにして、ミロンは槍による突きを見舞った。それはあっさりと避けられてしまう。


「ほらほら、もっと頑張ってよ」


 嗜虐心に満ちた、満面の笑みがもう一人のミロンの顔に貼り付けられていた。

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