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かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
弑虐の王はかく語りき
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それが、目的

 ネリーとエレノアは、祭子が眠るベッドの前で正座をしていた。

 それは彼女が起きるのを待つ為である。


「ネリーさん。あたし……足が痺れてきたっすよ」

「私は念の為に神経とか抜いてきたから大丈夫よ」

「グロ!」

「見る?」

「嫌っすよ!」

「冗談よ。……分かりづらい?」

「かなりっす!」


 エレノアの激しいツッコミは虚しく、室内を木霊した。ネリーが返事を寄越さなかった所為である。


 静かに、祭子の寝息が聞こえてくるばかりである。


 ネリーとエレノアがこうして正座しているのには、無論理由がある。

 祭子に師事する為である。


 六星長である祭子は、当然のことではあるが強い。圧倒的に強い。

 特に、祭子は花火のように肉体能力込みで強い訳ではない。いや、祭子の身体能力も花火と比べなければ相当のものなのだが、それは今は関係ない。


 要するに、祭子は能力の扱いが上手いのだ。


 手っ取り早く強くなる為には、神々の死体(ホラーチャーム)を上手く操る必要がある。


「それにしてもグッスリっすねぇ。着物も、髪も自分で結べないのに、それなのに強いなんて……あたしは駄目駄目だぁ」


 エレノアが手を前について、土下座のようなポーズを取る。足に痺れが走ったようで、彼女は小さく悲鳴を上げる。


「何、一人でコントをしているの?」

「こんなつまんないコントないっすよ!」


 それから待つこと更に数時間。

 祭子が目を見開き、起き出した。


「今日、クエストの配信日だ」


 祭子は実に不純な動機で目を覚ました。

 早速ゲーム機に手を伸ばす祭子の手に、ネリーの手が触れた。


「良いかしら?」

「……良くないけど。良いって言わないと怒られそうだから、良い」


 祭子は起きたらネリーたちに稽古をつけると約束していた。

 更には、起きるまで正座を命じたのも祭子である。何となく面白そうだから命じたのだが、命じた本人はすぐに眠ってしまった。


 祭子は今にも閉じてしまいそうな瞳をボンヤリと開いて、ネリーとエレノアを見つめる。


「執事は?」

「今はいないわね」

「むー。なら、ボクが話すよ」


 面倒そうに、祭子が語り始める。


「……と言っても、ボクが知っているきみたちの情報は、少ない。お兄ちゃ……兄から回ってきた報告書だけ」

「……」

「で、そのデータを見た限り、ネリーちゃんとエレノアちゃんに共通する弱点は、能力の使い方が雑だということ」


 ぶっちゃけ、と祭子は面倒そうに続ける。


「燃費悪いね。時代は省エネだよ」


 祭子が頭をフラフラと揺らす。

 おそらく、眠いのだろう。しかし、何とか彼女は言葉を続けた。


「ネリーちゃんの『命ノ灯(アラハ・ハール)』は、多分髪の一本一本を操っているね?」

「当然よ」


 ネリーにとって髪の毛とは、一本一本が指である。全てに神経が通っているようなものだ。

 それを動かす為には、一本一本に命令を出すしかない。


 それでも、ネリーの能力は扱い易い方である。単純に、指が増えただけなのだから。


「それを止めよう。勿論、バリエーションの一つとして、一本一本の操作は必要だけど」

「どういうこと?」

「一本一本じゃなくて、一束一束動かせるように。そして、何よりもネリーちゃんの動きには型がない」


 それはただの暴力である。

 それは動物の戦い方である。『壊れ者』の戦い方である。


『創り者』の強さとは、その頭脳にある。

 能力の扱いは格闘技と同じだ。


 その場に応じた最適の型があり、動きがある。


 格闘家が強いのは、様々な技を、その場にあった条件で放てるからだ。

 ただ乱暴に手を振るうのは、幼児でもできることだろう。


 ネリーに必要なのは、暴力を技へと昇華させることである。つまり、技を生み出すこと。


「次に、エレノアちゃん。きみの攻撃には無駄が多い、のだと思う」


 祭子はエレノアの戦闘を一度も目にしていないというのに、まるで見たように語る。


「生命力を武器にする。つまり、能力の使用には限度がある。だというのに、豆鉄砲を飛ばす必要があるの?」

「豆……」

「エレノアちゃん。きみは能力に頼り過ぎだよ。能力は使えば良いってものじゃないよ。使い切らないと」


 エレノアに必要なのは、能力を巧みに操る技術である。

 そして、彼女の能力は強力ではあるが、その実火力が足りていない。火力を高めようとするのならば、多くの生命力を使わねばならない。それは余りにも効率が悪い。


 また、その高火力化した攻撃をかわされるか防がれた場合、一気に不利になる。


「近接戦闘の方法を覚える。敵に確実に攻撃を命中させる術を得る。ただ離れた距離から弾を撃つだけにならないようにする」


 祭子は要するに、効率良く能力を使用しろと言っているだけなのだ。

 しかし、それはかなり難しい。


「と、思ったのでボクはとある作戦を思い付いたんだ。見たまえ!」


 言って、祭子が手にしたのは、携帯ゲーム機であった。

 二台の携帯ゲーム機が、ネリーたちの元へと投げ付けられた。彼女たちは危なげなく、それらをキャッチする。


「そのゲームを手を使わず、能力だけでクリアして見せなさい」

「私たちにゲームをやらせて、楽をする気なの?」

「違うよ。ストーリーとかは自分で体験したいし。ボクはそのゲームと同じのを八つ持っているから」


 同じゲームを八つも持つ意味があるのだろうか、とネリーは思う。


「で、で、クリアしてキャラが強くなったら対戦しよう!」


 それが目的か、とネリーは溜息を吐く。


「じゃあ、始めて。第一の特訓を。ボクは休むよ」


 それが目的か、とネリーは呆れた。



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