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かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
崩壊の序章
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六星長と脱線

「不合格だが合格」


 圧倒的な能力で、ミロンたちを薙ぎ払った花火は、あっけからんとそう告げてきた。


 実力が違い過ぎた。

 ミロンたちの攻撃は一度も命中することがなかった。攻撃をしても、花火は消える。そして、意外な場所から現れたかと思うと、高威力の電撃を放ってくる。


 彼らは終始翻弄されて、一方的に遊ばれていた。雷を髪の盾で防げたネリーですらも、近接戦闘に持ち込まれればなす術がなかったのだ。


「しかし、残念だな。貴君たちには期待したのだが」

「嘘ね」


 花火の言葉をあっさりと否定したのは、ネリーであった。

 彼女は自慢の艶やかな髪を、雷によって残念なアレンジに変えられている。


 ミロンが笑うと、容赦なくミロンの両の目を焼き尽くした。恥ずかしかったのだろう。


 そのようはネリーが、花火に意見する。


「貴方の試練を達成した人数は?」

「零だが?」


 花火はそもそもクリアさせるつもりがなかったようだ。

 一見、意味がわからない。しかし、ミロンには彼の行動理由が見えてきていた。


「唯一、私の妹のみが、私と引き分けたがね。あれも、クリアはしなかった」


 花火の言葉に、ネリーとツェツィーリヤが歯噛みしていた。どうやら、彼女たちも花火の試練を受けたことがあるようだ。


「さて、そろそろ本題に入りたいのだが?」


 花火が切り出した。彼はその冷たい目線で、ミロンたちを見やる。


「私は六星長。現在『創り者』が所有している六つのドームを収める六人の一人だ」


 ミロンは驚く。この人、偉かったのか、と。

 七三分けとスーツを着こなす姿は、どう見ても下っ端平社員であった。


「我々は現在、危機に瀕している。私の見立てでは、『創り者』社会の崩壊も間近だな」

「どういうことなのさ」

「我々に、明確な、敵が現れた。私はそれ故、それに対処する組織を設立しようと考えている」


 先程の『不合格だが合格』という言葉は、ここに響いてくるのだろう。


「貴君たちは、この組織に参加して貰う」

「嫌よ。私はともかくとしても、兄様に危ない橋を渡って欲しくないわ」


 花火の言葉に、ネリーが突っかかる。ミロンを虐められたことにより、彼女は少々冷静さを欠き、また苛ついていていた。


 また、それらはツェツィーリヤたちも同様であった。


「はっ。六星長様よぉ、それが人にモノ頼む態度かよ?」


 ツェツィーリヤはポケットに手を入れ、花火にガンを飛ばす。ツェツィーリヤ以外がやれば、まるで不良のように見えていただろう。けれども、どう見ても上目遣いである。かわいい。


ダサ髪(花火様)、自分の御主人様に対して頭が高えぞ、この野郎! ……でございます。少しお強いだけで調子に乗られているのでは? 家事ならば、負けませんけれど?」

「や、アリア。きみもあんまり家事できてないからね? きみがやってるの、家事じゃなくて基本粉砕だからね?」


 はあ、とミロンは溜息を吐く。

 ミロンはパンっと音を立てて掌を打ち合わせると、ゆっくりと言葉を紡いだ。


「みんな、別に花火さんは悪気があった訳じゃないよ。多分だけど、花火さんはぼくたちの為を思ってやってくれてるんだよ」


 花火が教えてくれたのは、強者との戦い方。

 そして、おそらくは、自分の倒し方を他者に教える為、であろう。


 そして、自分の能力をわざわざ教えるという行為の意味。

 もしも、ミロンが壊れれば、不要に自身の情報を晒すこととなる。では、何故教えたのか。


 それはおそらく、花火自身が『壊れ者』になったときの保険だろう。

 クーマが言っていた。


 いつ、壊れるかわからない、と。


 花火の戦闘方法を見ればわかるが、彼は意外と基本に忠実である。

 自分で戦闘中に言っていた通り、笑みは絶やさないし、考察も欠かしていなかった。


 霧島花火。

 まだまだよくわからない男ではあるが、少なくともミロンの目から見ればそこまで悪くないようにも見える。


 唇を奪われたことだけは許せないが。後、ズタボロにされたことも。

 ついでに、仲間を痛めつけられたことも、許せなかった。結構、ほぼ全てを許してなかった、ミロンである。


「くく、く。ミロン・アケディ。よくわかっているな。ようし、褒美にもう一度口付けをしてやっても良いのだが?」


 花火がとんでもないことを宣いだす。

 その反応は劇的であった。


 ネリーが、アリアが、ツェツィーリヤが同時に悲鳴に似た声を飛ばしてくる。


「兄様!? どういうこと……?」

「てめえ、クソ七三(花火様)! 御主人様に何をしたのでございますか!」

「ミロン……お前ら」


 ツェツィーリヤだけが、顔を青褪めさせてミロンたち男性陣から数歩離れた。


 ミロンは思う。

 こういう意地悪なことばかり言うから、誤解されるのだ、と。


「違うよ!」


 否定の声には、苦笑が含まれていた。

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