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第2章

 入学式翌日の朝。

 俺は、目覚まし時計の活躍によって起こされた。

 目覚まし時計で起きる人はわかってもらえると思うが、目覚まし時計で起きた直後というのはものすごく眠いので不快になる。

 その時、俺の機嫌など全くお構いなしのケータイが鳴った。

 どうやら風見からのメールみたいだ。

 風見のせいで、俺の不機嫌メーターの針は80%くらいにまで上昇した。

 無視しようとも思ったのだが、一応緊急連絡みたいなものである可能性も否定はできないので、メールを選択して開いた。

 メールの内容は、『朝早くすみません。今日の放課後、栞さんの所に行ってください。もちろん、超能力関係のことです。ちなみに彼女の教室は1年2組です。』というものだった。

 同じクラスなのだから、俺が学校に行ったときに言えばいいのではなかろうか。

 それはともかく、風見のためではなく、栞のために俺は行くとしよう。

 栞に会えれば、俺のエネルギーもチャージされるだろうからな。

 俺は、風見のメールに『朝から鬱陶(うっとう)しいんだよ!!』とだけ返信し、ケータイを閉じた。


 今日は全校集会と学年集会とHRだけであり、昨日に引き続き午前授業(実際4時間目の途中から午後であるが)である。

 風見はこんなに楽な日なのにも関わらず、欠席していた。

 あいつのことだから、サボっているのだろう。

 やはり、午前授業というのは短く感じるもので、あっという間に放課後になった。

 というわけで、風見の迷惑メールの通りに任務を遂行するとしよう。

 早速、1年2組の教室へと足を運ぶ。

 教室内では女子2人が楽しげに話をしていた。

 1人は栞なのだが、もう1人は俺の知らない女子だった。

 俺は教室に入らずに、扉のガラスから観察する。

 知らない人がいるから話しかけづらいというのではない。

 貴重な栞の制服をこの目に焼き付けておきたかったからだ。

 やはり栞は制服も似合っていてかわいい。何を着ても似合うやつである。

 ただ、今の俺の状況だと客観的に見たら覗き魔である。先生にでも見つかったら怖いな、これ。

 しかし、見つけてくれたのは栞だったようで、俺に笑顔で手を振ってきた。

 嬉しさ半分、残念さ半分の俺は扉を開けて栞の所まで行った。

 すると、栞がむすっとした顔で言った。

「お兄様、手くらい振り返していただきたいです」

 よくもまあ、制服姿かつ友達(かな?)の前で「お兄様」なんて言えるな。

 俺だったら恥ずかしさのあまり自殺するかもしれないのに。

 とりあえず、俺は栞の機嫌メーターを上昇させなければならない。

「栞」

「は、はい」

「すまなかった」

 機嫌を復活させるためにどんな言葉をかければいいのか色々考えたのだが、結局いいものは浮かばなかった。

 俺の語彙力のなさを実感する。

「お兄様、別によろしいですよ」

 どうやら、あのしょぼい一言で栞の機嫌は戻ったらしい。

 意外とあっさり戻ってしまって驚きだ。

 そして、最初から気になっていたことを質問してみる。

「ところで、さっき一緒に話をしていた人は誰だい?」

 待ってましたと言わんばかりにすぐさま栞は答えた。

「彼女は椿原澪(つばきはらみお)。澪は超能力者以外だけれど、私たちのことを知っている数少ない人ですよ。HISVA(ヒスバ)保有者でもあります」

 すぐさま俺は返す。

「なあ、"ひすば"って何だ?」

 栞はきょとんとした目で見ている。

 知らないことがおかしいのだろうか。

 それでも、栞は丁寧に説明をしてくれた。

「えっと、超能力の光を見ることができる能力のことを言います。超能力者はみんな持ってるけど、ごく稀に超能力者以外の人も持つことがあるんです」

 つまり、俺が風見と握手したときに出た静電気もどきの光を見ることができる能力ってことだろう。

 その光を超能力者以外でも稀に見ることができて、今ここにいる澪もその1人ってことか。

「わかった?」

 栞がやさしい笑顔で聞いてくる。

「おう」

 こっちも満面の笑みで返してやった。

「あなたたちは付き合ってるの?」

 タイミングよく澪が話しかけてきた。

 というか、澪は何という勘違いをしてるんだ!

「「違う!」」

 俺と栞は声をそろえて否定する。

「なかなかいい感じだったんだけどな」

 澪は俺たちに何を望んでいるのだろうか。

 話の流れからわかってはいるのだが、できればわかりたくはなかった。

 栞は咳払いをしてからこう言った。

「とりあえず、今日はあの倉庫に行って、お兄様と澪に超能力を実際に目で見てほしいのです」

 どうやら、栞は女子の呼び方は名前のようだ。

 なぜ男子のときはあんなに恥ずかしい呼び方をするのか気になってしまったが、聞いていいことなのだろうかと疑問に思ってしまい、聞くことはできなかった。

 栞は鞄を持ち、そして威勢よくこう言った。

「それでは、行きましょう!」

 この笑顔を俺は一生忘れないだろう。

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