番外7 離陸決心速度
「芹川さん、お昼学食ってめずらしいよね」
「うんちょっと今日お母さん忙しくて」
「じゃあ一緒に食べようよ」
「いいよ、てかめっちゃ嬉しそうだね」
「そ、そう見える?」
……
「学食ほとんど食べたことなかったけど結構おいしかったね」
「でしょ……ねえ芹川さん」
「何?」
「僕と付き合ってよ」
「ぶーっ」
「うわ、お茶こぼれちゃったね、大丈夫?」
「この喧騒の中、直球で来ると思わなかったわ」
「でも僕が芹川さんのこと好きなの知ってたでしょ」
「いやまあそれはその……」
「芹川さんはどうなのか聞きたい」
「え……? い、いや別に嫌いではないと言うか……なんというか……」
「やった!じゃあ好きなんだ」
「いやちょっと……、ちょっと待って! 隠キャオタクってそんな堂々と告白するもんなの」
「なに? その偏見」
「うぐ」
「どう考えても芹川さんも僕のこと好きだと思ってたんだけど」
「あ、これあっちだ。告白できない陰キャじゃなくて恋で何も見えない方の隠キャだ」
「うん、前は確かにそうだった。でも今は違う」
「なんでそう言い切れるの、今も勘違いかもよ?」
「初めて飛行機乗った時、まだ誘導路走ってるのに『そろそろ宙に浮くかな』とか何度か思ってたけど、実際離陸する時のケタ違いのエンジン音と背中に感じる加速力で、『あ今までの違った絶対これだ』って思った時と同じ感じ」
「……そのマニアックな割に変に説得力あるのなんなの?」
「だから芹川さんも僕を好きでいてくれてる。絶対勘違いじゃないよ」
「うぅ……」
「それに、さっき『そんな直球で来ると思わなかった』って言ったよね。それって告白されるかもって思ってたってことでしょ。でも別に僕を避けたりしなかったよね。つまり待っててくれたってことだよね」
「畳み掛けてくるのやめて。告白を論破で成功させようとしないで」
「あ……、ごめん。僕こういうの初めてだからどういうのがいいのかわからんくて」
「私だって初めてなんだからもうちょっと雰囲気を……」
「え……!?」
「あ……!いや、なんでも……教室帰るよ!」
「え、ちょっと待ってよ……!」
……
「なあ莉緒」
「なに? 早いな斉木、もう食ったの?」
「お前の後ろさ、あいつらさっきからなにやってんのかな」
「ええ……? 美月と冨野くんじゃん、奴ら最近よく一緒にいるよね」
「あいつら様子変じゃね?」
「なんか食べ終わってるのに2人共うつむいてるね」
「つい今までなんか口論みたいなことしてたけどな」
「あ、美月が走って行った」
「そして冨野は……慌てて追いかけてったな」
「もしかして冨野くんが勢いで告白して撃沈したんじゃね?」
「ははは、いくら冨野でもこんなところで告白するわけないだろ」
「そーだよな、あはは」




