25.古希
「前に冨野くんのおすすめの『火の鳥』読んでて思ったんだけど、作者が書く前は『火の鳥』なかったんだよね」
「芹川さんって時々当たり前のこというよね」
「クラシックの世界で一番偉大だと言われてる作曲家って誰だと思う?」
「え? さあ、バッハとかベートーベンとか?」
「うんそのあたりかな、でもベートーベンっぽい作曲しても今は評価されないんだって」
「そうなの?」
「もうみんなベートーベン知ってるから、それを真似してもただの真似だから」
「古いってこと?」
「そうとも言えるかな、大事なのは古いものを乗り越えること。バッハがいないとモーツァルトもベートーベンもいない」
「過去の偉人が踏み台になってるわけか」
「まあ、わかりやすく言えばそうなるのかな」
「そうか、自分を踏み台にはできないから、大作、名作を生み出すってのはそれを見て評価するよりずっと難しいってことだね」
「うん、みんな歴史に出てくるような偉人を踏み台にして、それでもずっと暗闇で迷ってあがいて道を切り開いたんだと思う」
「そういえば僕のおじさんの大学の恩師が偉い先生で『○○先生古希記念論文集』ってのが出されたらしいけど」
「古希って70歳だよね」
「うん、その掲載される論文は弟子たちの寄稿になるわけだけど、一番脂の乗った時期の弟子たちに自説がボコボコに批判されるらしいよ。『もうお前の時代は終わったのだ』って突きつけられる感じなのかもね」
「あはは、それはしょうがないけど悲惨だね」
「芹川さんも僕を踏み台にしてほしいな」
「それはそういうプレイしたいってだけでしょ。君も踏み台にふさわしい人間になれるといいね」




