第三十話:緊張感のある緊張感のない会話の後に。
話が一瞬途切れたので、ふと周りを見ると、みんなが心配のような驚きのような表情でこちらを見つめていた。
そういえば、シノブもアカネちゃんも、先ほどから会話に入ってこない。
彼女の言葉を遮ることが失礼にあたるからだろうか?
「ひ…んとって?」
やっとの隙間に、アカネちゃんが口を挟んだ。
「妾は角谷カナコの護衛にしても、情報提供にせよ、術師討伐にせよ、助力はしても自ら手を下すことはできぬ。そうするつもりもない。」
「はい。」
と、今度はシノブ。
「助力賜われることに感謝申し上げます。」
それはどういうことなのだろうか?
自分から呼び出したのだから、それなりにヨドミノヌシからしても今の状況は良くないはずだ。
だが、助力しかしない…。
まぁそういう掟だと言ってはいたが…。
「妾たちヌシやカミが個々としてどう思うかは、世に何が栄えるかを最終的に決定するものであってはならぬし、そうあるべきじゃと思っておる。
つまり、妾が如何に奴らの術を憎んでいたとしても、それが奴らが滅ぶべき理由にはならぬ。まぁ、同じ理念で動く人間がいる限りは、そちらに協力するが。最後に決めるのは人間であるべきじゃ。人の世なのだからな。」
「…意思はあるけど、決定権はないということ?」
私の言葉に、ヨドミノヌシは少し笑ったような気がした。
「妾は面倒な前置きは嫌いじゃ。端的に言おう。」
話がひと段落したところで、ヨドミノヌシがいった。
みんなが少し身構えるのがわかる。
「まずは、音羽サトミ。」
「んな!?はっはい!」
唐突に呼ばれて衝撃を受けたサトミさんが、ひっくり返りそうになりながら答える。
というかその驚き方コメディ映画みたいだな…。
「この土地の穢れは、確かに異常じゃ。おそらく規定を超えてはおらぬから放置していたのじゃろうが、これの要因は妾だけではない。それを解決できれば、何かがわかるかもしれんな。」
「は、はい!」
「次に管原シノブ。」
「はい。」
「お前は、この件について、なんとなく思い当たることがあるはずじゃな?」
「…はい。」
え?
…というかまぁそんな気はしなくなかったといえば嘘になるが。
やっぱりなんか知ってたのか…?
じゃあ先に言えよ!
「それが虚実であろうとも、真実であろうとも、歩むべき道は同じ…まぁ当分は目の前の仕事に専念するんじゃな。」
「はい…。」
「次に、ユニコーン族のニコ。」
「えぇっあぁっはい!」
唐突に呼ばれて以下略。
というか、ミサキちゃんに初めて出会ってからこのかた時折思っていたが、何かを話す時、主体は常に契約者の人間側で、魔法少女たちは口を挟まない傾向にある…。
事実、なんだかニコの声も久々に聞いた気がした。
魔法少女が主体になって戦う代わりに、人間はこういう事務的なというか折り合いをつけたり方針を決めたりという仕事をするものなのだろうか?
…ていうかこれ運動会の前の選手宣誓みたいだな…。
「そなたの能力で読み取ったことだけが真実ではない。相手の目を見て想いを馳せることじゃ。」
「えぇ…はい。」
「最後に、角谷カナコ。」
「は、はい!」
私の番がやって来た。
なんだかんだと言って、悪い人…ヌシではなさそうだが。
それでもやっぱり緊張感がある。
これがいわゆる神託というものなのだろうか?
「あまり隠し事をせぬ方が良いぞ。」
「え…?」
意外なことを言われた。
確かに話の流れ上、何をすればいいかを教えてくれる感じではあったが。
隠し事?
「そなたの周りには多くの人間が現れ、また消えて、また現れる。多くの人と関わり、信用のできるものを探すことだ…。大学とやらもそろそろ始まるだろう?」
「な!!?」
「あの場所は妾の旧友の土地じゃ。安全を配慮してくれるよう、頼んでおくことにしよう…。」
「なぁ…。えぇ…。」
それはつまり?
大学行けってことですか?
この引きこもりの私に?
…。
親や、友人…はいないが。
そう言ったものに大学サボるなとか言われるならわかる。
まさかカミから学校行けと言われる日が来ようとは思わなんだ…。
〜次回予告〜
ニコ:「まさか私にもお声をかけてくださるとは思わなかったですよ。」
カナコ:「あはは…。」
ニコ:「というか、カナコの隠し事って何なんでしょう…部屋の掃除はしましたし…。」
カナコ:「何でか結局みんなにバレたしね…。」
ニコ:「ああいうのを因果応報って言うんですよ?」
カナコ:「なんか、あの件になると途端に手厳しいね?」
ニコ:「それはそうと、次回は何やら特別編らしいですよ?」
カナコ:「何でも第百部分なんだそうで…。」
ニコ:「それはおめでたいですね!?」
カナコ:「ほんとかなぁ…まぁそこそこには?」
ニコ:「おもしろきこともなき世を何とやらですよ。」
カナコ:「それ別に何でもかんでも祭りにしようっていう意味じゃ…まぁいいか。次回は本編をちょっとお休みして、『第百部分特別編:これで何回目かの未知との遭遇。』をお送りします。」
ニコ:「お楽しみに!」
幕




