第二十六話:それだったら元からそうすればよかったじゃんってなるじゃん!
「我々が一般人の前では活動できないのをわかっていて、あの方が出てくるタイミングを見て飛び降りたんでしょう…。」
チサトが悔しそうにいった。
「なんにせよ、このままというわけにもいきません。これだけ相手方の動きが早いのも想定外ですし。また連絡しないといけません…。ですので、自分は一度神社に戻ります。」
さらに続けて自己完結し、ブツブツ言いながらアパートの階段を降りていくチサト。
結構な勢いに気圧されて周りを見ると、引き留めるものも、ましてミユキさん以外についていくものもいない。
おそらく彼は彼の仕事を全うしているのだろう…。
「あぁそうだ、近辺の守護者にも正式な通達が来るはずですから、花崎さんも一度戻った方がいいかもしれませんよ?」
そんなチサトが、階段下り際にミサキちゃんに呼びかける。
「え?あ?はい!じゃあ、先輩方また会いましょう。角谷さんとニコちゃんも。じゃあ、クロハ行くよ!」
「お?…おう。わかった。」
「それじゃ、お邪魔しました!」
走り出し、振り向き様に
よくわからないけれど、もしかしたらあれが中間管理職の苦労的なものなのかもしれないとなんとなく思った。
チサトの姿が見えなくなるまで見送る。
「土地の穢れはともかく、ヌシに協力してもらった方が良さそうだな…。」
呆然としている一行の中で、シノブがぼそっと呟いた。
「ヌシ?」
あまりにも脈絡のない話に、私は反応せざるを得ない。
と言うかまた穢れ云々の話に戻るのか。
なんだかずっと同じような話を行ったり来たりしているだけで、一向に話が前に進んでいない気がするのはきのせいだろうか?
それとも魔法少女派遣機構も大きな組織であろうし、そういった組織独特の堂々巡りだったりするのだろうか?
「えぇ…前に話した、その土地の神や精霊、ヌシ。まぁわかりやすくそう呼んでるだけだけどな。」
「でもそんな、神様が人間に協力?」
なんだか意外というか恐れ多いというか信じ難いというか、なんとも言えない話だ。
自分は元々ファンタジーのような物語は好きだし、そういうものに抵抗がある方ではない。
それに、これだけおかしなものを散々見せられて、今更否定する方が馬鹿らしい。
だがそれでもなんとなく、違和感があるようなないような?
「そもそも、うちらが生きとるこの状況を支えるために、縁ある神様やら精霊やら、あるいは祖霊やらが幾重にも関わっとるんよ。
人間は誰かの助けなしには生きられんっちゅうのは、そう言う状態を理解していた昔の人らぁの言葉ってことやな。」
今度はサトミさんが説明してくれる。
なるほど?
神も仏もないなんていうが、そんな神も仏もないような状態でさえ、維持し支えるのに多くの人なり何者かの支えがあるということ?
まぁ自分の文化圏の話でもあり、あるいはファンタジー的な物語でもよくある説明なので、理解し難い話ではないが…。
つまり、生きているだけで奇跡ってこと?
そう言い換えるとなんだか安っぽすぎて余計に納得いかない。
「えぇ…元々人間とここでいうカミは共生関係にある。人間の信仰によってカミはその力を増し、カミは縁のある人間を守り支える義務を負う。カミがいなければ人間は生きられないが、同様に人間がいなければ、カミも存在できない…。」
それではまるで契約関係…?
ん?契約?どこかで散々聞いた言葉だ。
というかまた話がぶっ飛んできたな。
何度同じツッコミをすればいいかわからないが、現状すでにあまりにおかしなものを見てしまったせいで感覚が麻痺しているだけで、今目の前で展開されている話は、変な宗教か、頭おかしい人の妄言か、そうでなければ厨二病だ。
いかんせんあまりにも物的証拠がありすぎるために否定できないだけで…。
あるいは現実とはそういうものなのか?
よくわかんなくなってきちゃった。てへっ。
こういう時は具体的な話に路線変更するのが一番である。
「つまり、これから私たちはどうすれば…?」
うん。実にスマートだ。
シノブも、なんとなく自分が言っていることが一般の観念とズレている自覚はあったのだろう。
私が話をシンプルにしたのを受けてちょっと笑っている。
じゃあ初めから端的に話してくれよ!
ある意味、今までの説明全部いらなかったじゃん…。
というかもしかして、とってもとっても今更だけど、彼らの説明も、私の言及も不必要だったりする?
重要なのは今やるべきことであって、その原理は後から理解すればよかったりする?
もしかして私が何もかも理解しようとしてたのが話をややこしくしている…?
…。
まぁ、その辺はオタクのサガだな。しゃあない。
だって気になるじゃんね?
というか夢にまで見たファンタジーが今目の前にあるんだから、興味を持って何が悪い!
というかこう、改めてファンタジーの原理を現実に息して説明されると大変胡散臭く感じる。
案外異世界転生したり突然魔法の国に入り込んでしまったりする系の主人公たちも、似たような胡散臭い感じってあったりするのかもしれない。
むしろそんな胡散臭さを排除して、明るい面だけを見せるからファンタジーなのか?
という開き直ったり脱線したりの私の心中は当然、ニコにしか伝わらないわけで。
シノブはそれを無視して話を進める。
「あぁ…そうだな。ヌシと話ができるのが一番なんだが…。」
「そのことなんやけど。」
サトミさんがシノブの言葉を遮る。
「調べてきたんや。ここのヌシのことを…。」
〜次回予告〜
アカネ:「また話にあぶれれちゃった!」
ニコ:「でも元々、こういう事務的な事柄は契約者の人間側がすることが多いんですよね?」
アカネ:「まぁそうだねん。別に幻獣が人間に比べて頭脳で劣るってわけじゃないけど、ややこしいこと考えるのは、人間の方が得意なのも確かだからねん。」
ニコ:「第二種の契約は、よくできてるんですね。」
アカネ:「そうだよん。まぁニコちゃんは第三種のクラスだから、その辺の実習とかは受けないもんね。」
ニコ:「あれ?でもアカネさんも長く生きてますけど、そういう研修みたいなの受けたんですか?」
アカネ:「ぎくっ!?いやぁ…受けてなくもなくもない…かなぁ。」
ニコ:「それは受けてないじゃないですか…。」
アカネ:「ま、ま、まぁ務まってるからいいんだよ!それより次回はヌシとお話ししたいという話。」
ニコ:「『第二十七話:隣の主はよく穢れ纏う主じゃ。』をお送りします。早口言葉みたいですね…。」
アカネ:「おったのしみに!」
幕




