第十六話:今度は公園でガチな邂逅。
公園に向かって連れ立って歩きだすと、ニコが尋ねてくる。
「そういえば、まだ一人暮らしで一年目なんですね?」
「うん、まぁ…。」
質問の意図が読み取れず、私は口篭った。
「と言うことは、あのゴミは一年分ってことですか?」
質問の意図を読み取ってしまい、私は口篭った。
「…。」
「いや、私にもゴミを捨てていた時期はあったよ?」
「ゴミは日々捨てるものなんです!」
ぐうの音も出ない。ぐう。
「言ってる場合ですか!」
正確には、おそらく捨ててないのは半年くらいだろう。
むしろ、半年間も放置してその状態で済んでいるのが奇跡なのでは?
「なんでそんなに得意げなんですか…。というか、お隣さんとかに文句言われないんですか?」
「そういえば…。」
と言おうとして想いを巡らす。
あのアパートはあまり人が留まらないらしい。
両隣の部屋も気づいたら表札がなくなっていた。
私の部屋の異臭のせいでないと信じたい。
「まぁ、穢れも溜まっていますし。間接的にカナコの部屋のせいかもですが…。やはり穢れは汚い場所に溜まりますからね…。」
もとい、私の部屋の汚れのせいでないと信じたい。
いや、私に集まった負のエネルギーが溜まっているのだとしても、結局私のせい?
まぁいい。過去は捨て(物理)明日に生きると決めたのだ。
今日の夜燃えるゴミを捨てれば、大体のことは解決するはずだ。
…。
そういえば、今更だが、掃除は魔法でなんとかならないのだろうか?
服の染み抜きはできるのに…?
「そうですね…例えば、雑巾を杖を振って触らずに動かすことはできます。」
じゃあ軍手要らなかったじゃん、と言う言葉を心にしまいこむ。
「丸聞こえですが!?…とはいえ、あまり日常生活にあまり魔法を使わない方がいいんですよ。」
服の染み抜きはするのに?
と思ったが、確かに科学で全ての汚れを魔法のように取れるわけではないから?
いや、専門の業者に任せるお金がもったいない?
線引きがよくわからないが、まぁいいだろう。
人間界で魔法を使いたくないとか、使わない方がいいとか、使えないとか、よくある設定すぎて、今更深掘りするのが馬鹿らしいくらいだ。
そう言うものなのだろうと今は思っておくことにしよう。
「いや別にそんな難しい話ではなく…。」
ニコが話を続けようとしていたところ、世界が、変化を見せた。
と言っても、すでに二回みたように、世界が白く変色しただけだ。
これだけの変化が一瞬で起きることに驚きを感じなくなっている自分がいることに驚く。
だが、次に起こることには、流石に流れる石のような私も驚かざるを得なかった。
私たちの、前から横から、そして振り返ると後ろからも、浅黒い煙のようなものが立ち込めていたのだ。
それは煙のようだったがただの気体ではなく、大量の線香を一気に着火した時のそれのように一つの塊のように流れてもいた。
地面から巻き起こったそれらはいくつかの黒い山となり、やがて、形を成した。
その形は…。
「人…?」
「ご明察でしゅ。」
しゅ?
声がするのは、私たちが立っている方向からちょうど前方。
そこには、黒い全身マントにフードを目深に被った、いかにも変質者でしゅと言いたげなビジュアルの男だった。
「収束点の方ですね?ハコニワが発動していると言うことは、時間もございませんので、失礼ですが、いきなり本題に入らせていただきましゅ。」
しゅ?
めっちゃその語尾気になるんですけど?
多分今そんなこと考えてる余裕のある状態じゃないと思うんだけどめっちゃ気になるんですけど!?
「カナコ!」
おそらく私と同じく突然の状況やら男の語尾やらに圧倒されていたであろうニコだったが、その言葉を聞くと、私を庇うように身を乗り出す。
とはいえ、後ろにも黒い煙の人型。
この人型がどんな特性を持っているかわからないが、展開的に、おそらくヤバいものなのだろうと言うことは、想像に難くない。
まさに万事休すか?
「お命頂戴!」
やっぱりだ!
〜次回予告〜
カナコ:「なんかすごい唐突に終わりましたが?」
シノブ:「これは死んじゃうかもね?」
カナコ:「でしゅ野郎じゃない…だと!?」
シノブ:「あんな小物と一緒にしないでくれるかな?」
カナコ:「お前は誰だ!?」
シノブ:「その勢いのその問いの答えだと、俺が名乗れないんだけど?」
カナコ:「なんか初めてネタを理解されたんだけど、じゃあレスポンスまでしてよ!」
シノブ:「アカネちゃんでもこのフリは答えられるんじゃないかな?」
カナコ:「…と言うか、ここであのでしゅ野郎が出てこないってことは、やっぱりあいつは印象通りの…。」
シノブ:「次回第十七話:『それは一瞬の出来事過ぎたので私は見逃した。』をお送りします。」
カナコ:「お楽しみに…と言うかお前まじで誰だよ…。」
幕




