第十五話:あなたはもう駄菓子すら買えない。
レジで会計を済ませようと財布を取り出す。
昨今ではセルフレジなるコミュ障にとっての神システムが存在するらしいが、この店はまだそのシステムが採用されていない。
なので必然的に有人レジでの会計を行うことになる。
とはいえ、コンビニに限らずチェーン店はこう言う時にコミュニケーションを取らなくても良いのが利点だ。
もちろん適度には会話があった方がお互いストレスなくことを進められるのかもしれないが。
私だってこう言う時に社交辞令的な挨拶をする程度の能力くらいは持ち合わせていると信じている。
しかしそれすら必要ないなら必要ないものは必要ないではないか?
まさに世界の真理である。
「1580円です。」
先ほどまであくびを噛み殺していたあの店員が、無感情な声で告げる。
その言葉に、心が凍りつく。
思ったより値段が高い?
そういえば食べ物なんかを中心に値上がりが起こっていると聞いたような気がする。
100円くらいだと思っていたおにぎりが150円以上している。
食べ物の値上がりもそうだが、単純に雑貨の値段の相場をわかっていなかったと言うのもある。
その他掃除のための道具も400円前後の価格をしているのだ。
自分はあまり現金を持ち歩かない人間なので、こう言う時は危険だ。
現金を持ち歩かないのに、カードも電子マネーも近場に行く時は持ち歩かないからである。
それはただのお金を持ち歩かない人なのだが、この際どうでもいい。
恐る恐る財布の中身を見ると残金は一千円札一枚と、百円玉が一枚、二枚、三枚…六枚。
つまり合計1600円。
ギリギリ足りているとはいえ、だいぶ心臓止まるかと思った。
これで足りなかったら、皿屋敷案件である。
飲み物を買おうとしていたら危なかった。
飲み物買えばよかったな。確かに。
今更気づいても、もう買えないけどね!
やったぜ!
考えてみれば昨日の時点で2000円持っていて、ドリンクバー200円を二人分差し引き残った1600円だ。
算数の問題のようだが、とにかく、払えればなんでもいい。
私はなるべく平静を装って店員に全財産を渡し、20円のお釣りをもらった。
これで私の財布の中身は駄菓子すらまともに買えないレベルになった。
別におろせばいいのだが、まぁそれは必要になった時でいいだろう。
結局終始無言のまま買い物を終え、店内を後にする。
「ど、ドキドキしました…。」
ニコが外に出て早々そう呟く。
「あはは…はぁ。」
それに応える私の空笑いも嘆息に変わる。
別にお金が足りなければ商品を返してもらうなり、お金を追加で持ってくるまでカゴをキープしてもらうなりあると思うのだが、それをするだけのコミュ力は流石にない。
第一、そんな迷惑をこれから混みだすこと請け合いなコンビニの店員にかけられない。
我ながら気を遣えているのだか、ただの自分よがりなんだか。
「とにかく、これで準備はバッチリですね!」
いち早く気を取り直したニコが、私にそう告げる。
「じゃあ家に…。」
と言いかけて気がついた。
考えてみれば私の部屋は今現在、人類最後の秘境となっている。
慣れている私ですらあまり気乗りしないのだから、ましてやニコにあんな危険な場所で食べ物を食べさせるわけにはいかない。
「た、確かに?」
「でも、流石に座りたいなぁ…。」
食べ物云々よりも、非常に座りたい気分だ。
昨日の昼から、自分の意思での休息を挟んでいない。
契約でぶっ倒れたのも不可抗力だったし…。
だがこの辺の地理が頭に入っていないのは実証済みである。
座って何かを食べられる場所に心当たりなど当然ない。
そもそもは一人暮らしのために住み始めた思い入れもあまりない土地だ。
引っ越してきて一年しか経っていない上に、その間ほとんど外に出ていない。
…ここは先ほどの反省を活かして、直感に頼らず穏便に情報の暴力に頼るとしよう。
つまり本日早くも二度目の登場、地図アプリケーションくんである。
検索をかけると、簡単に得たい情報が手に入る。便利な時代になったものだ。
そしてその検索によるとどうやら、このコンビニから徒歩5分程度の近場に公園があるらしかった。
特に他に行く宛もないのでここはこの検索を信じることにしよう。
〜次回予告〜
ニコ:「最近次回予告を毎回私が占めてる気がするんですよぅ。」
カナコ:「そもそもこれだけ長い間二人だけって初めてだよね?」
ニコ:「確かにそうですね。」
カナコ:「普通こういうおまけ的な部分って回が進むごとにキャラが入れ替わっていくものだと思うんだけどなぁ…。」
ニコ:「なかなかメタな発言ですね…。」
カナコ:「ニコがメタとか言ってもなんか締まらないなぁ。」
ニコ:「な、なんでですか?というわカナコは私をバカにしている節がありますね!?」
カナコ:「いいえ違います。」
ニコ:「そんな血の通ってないセリフ、カナコの口から初めて聞きましたが!?」
カナコ:「私は、思うんですよ。アホの子ドジっ子はステータスだ、希少価値だって!」
ニコ:「それは私がアホでドジってことですよね?そう言うことですよね?とうまわしに!」
カナコ:「いいえ違います。」
ニコ:「いい加減にしてください!」
カナコ:「まぁこう言う話をすること自体が新キャラフラグな訳ですが…。」
ニコ:「またメタな…。と言うことで次回は第十六話:『今度は公園でガチな邂逅!』をお送りします。」
カナコ:「読みやすい次回予告だ。」
幕




