第二十二話:眠気に負けてるからネタが繰り返しだけど仕方ないよね?
「にゃはは、お疲れちゃん!」
アカネちゃんの声。
「立てるか…?」
サトミさんの声。
答えようと思う。
あるいは立ちあがろうと思う。
ここは神社の境内。
地面は石畳で冷たく硬い。
周囲はすっかり暗くなっている。
だが、そんな体力は残っていないようだった。
「ありゃりゃ、こりゃダメだねん。」
「はぁ。しゃあないな。接客室の奥のベットに運ぶで〜。」
「ほいほーい。」
…。
二人の会話の声も遠のいていく。
ニコがサトミさんに抱えられて、運ばれていくのがうっすら見えた。
私の体も宙に浮き、どこかに運ばれていく…。
アカネちゃん…やっぱりその喋り方の…方が…いいよ…。
ガクッ。
…。
知らない天井だ。
このボケもう二回目だ。
目を開けるとそこにあったのは暗い天井。
木製の天井だ。
全て夢だった…というオチではなさそうだ。
何せ、こんな場所、私は知らない。
おそらくアカネちゃんに運ばれて、ここに寝かされているのだろう。
「あ、起きちった?」
ほら、声も聞こえるし。
「起きたからには二度寝しない!」
顔も視界にひょこっと入ってきたし。
「うぅ、朝よわ…い…んで。」
私は一度開けた目を閉じた。
「君、思ったより図太い神経してるね…。」
おふざけはこれくらいにしよう。
お褒めに預かったところ申し訳ないが、体力の限界だった先ほどはともかく、他人の家の布団に寝かされているとわかってしまうと、二度寝するほどの石の心臓は私にはない。
というわけで、半身を無理やり起こす。
「ふわぁぁぁぁあ。」
「お、起きた起きた。一応契約後の副作用とかの可能性もあったから、このアカネちゃん、責任持ってつきっきりでつきっきらせてもらいました!」
そう言ってアカネちゃんはビシィっと敬礼する。
ていうか副作用とか聞いてないんだが?
私聞いてない!
っていうボケも二回目だな。
流石に眠いと調子も悪い。
まぁそもそも心中のボケを丁寧に拾ってくれるニコも今は…。
「あれ、ニコちゃんは?」
「ん?」
アカネちゃんが目を落とした先は、私のすぐ横。
そこには未だ眠っているニコがいた。
見ると、私の左手は未だにニコちゃんに握られている。
なんだろう。この感情は。
恋ではない。萌えをも超越している。
親心か?親心なのか?
この感情、せめてあと十年後でいいぞ私。
「あ…ん?むにゃ?」
むにゃってなんや。むにゃって。
可愛いかよ。萌え死ぬぞ?
「カナコさん…死んじゃ…ダメ…です…。」
「君、昨日一日で夢に出るほどそんなに死にかけたの?」
「あぁ、あはは…。」
残念ながら、否定できない。
しかし、眠っていても心を読めるのか?
全部を理解できている訳ではなさそうだが。
だとすると、ニコが眠っている間に色々思うのは、可哀想か?
「あ、ぬ?あ、カナコさん…生きててよかったです…。」
薄目を開けたニコが私の方を見る。
「お互いにね。」
ため息混じりにつぶやいた。
夢にまで見ていたのか、読んだ心が夢に影響したのか。
結論はわからないが、ここまできて逃げ出すわけにもいかない。
いずれ機会もあるだろうし、今は真偽は聞かないでおこう。
苦笑いしたいような、忘れたいような、ずっと覚えていたいような。
先ほどまでのことを思い出し、今後のことに想いをはせるのだった。
〜次回予告〜
カナコ:「ところで、寝てる間に心って読めるの?」
ニコ:「聞く機会があるって、ここでってことですか!?」
カナコ:「いや、思ったより気になったからさ。」
ニコ:「実はよくわからないんですよね…。」
カナコ:「えっ?」
ニコ:「えっ?」
カナコ:「本編でなんかのフラグっぽい終わり方したのに?」
ニコ:「フラグ…?」
カナコ:「というか、失礼ですが、自分の能力ですよね?」
ニコ:「なんで敬語なんですか…。私のこの能力って、息をすることみたいな感じで、どうやって、どうしてそうなのかって、あんまりわかんないんですよう…。」
カナコ:「な、ニコちゃんがいい例え話を、する、だと…?」
ニコ:「私のことなんだと思ってるんですかぁあ!?」
カナコ:「いやぁごめんごめん。でもニコちゃんって、私と喋ってる時だけ『!?』が多いよね。好感度が高いからかな?」
ニコ:「んな!?でもカナコさんも心の中では『ニコ』って呼んでくれるのに、喋る時は『ニコちゃん』呼びですよね…。」
カナコ:「なんとなく『ちゃん』とか『さん』とかつけちゃうんだよね…。」
ニコ:「という訳で次回は、『第二十三話:そして今日の日は明日に続く』をお送りいたします。次回でやっとひと段落ですね!」
カナコ:「お楽しみに。」
幕




