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自分と世界を救うには  作者: あるつま
第3章 百年祭と白金級冒険者
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72話 迫る刻限

「ショウ殿、たった今全国の部下に不死薬の件が伝わるよう手配した。国民の避難場所に浄化師を集めるようにそれぞれの都市の浄化院に呼び掛けている。おそらく、人的被害は最小限に抑えられるはずだ」

「そうか、よかった。ただ、奴らはなぜこんなことを?」


コロシアムに戻った俺は、ハクさんに不死薬のことを報告した。

時間の無い中ですぐに全体の指示を出せる判断力とカリスマ性、さすがだ。

ついでに、ベリルがハクさんならわかると言っていた機械帝国の目的についても聞いてみる。


「……簡単だ。連中は我々に警告している。この世を覆う瘴気の恐ろしさを、そしてそれに対抗するには浄化院に、ひいては機械帝国に迎合するしかないのだとな。機械帝国と教国がつながっているのは知っているだろう?ここで我らが機械帝国に宣戦布告すれば、浄化院がこの国から撤退する可能性がある。国中に蔓延した瘴気を残してな。そうなればこの国は終わりだ」

「……つまり、反撃させないために国民を人質にとったと?」

「そういう言い方もできるな。いずれにせよ、今の我々にできることは不死薬のありかを見つけ、その散布を阻止することのみ。ショウ殿、汝も捜索に加わってくれるな?」

「もちろんだ。ただ、手がかりもなしに探すのは現実的じゃないぞ?」

「手がかりならある。ベリルは不死薬を日焼け止めに見せかけて搬入したと言っていたのだろう?今商人ギルドに呼び掛け、ここ数ヶ月の日焼け止めの在庫の動きを追っているところだ。あれは国内で生産されているものがほとんどだから、外国からまとまった量の搬入があれば目立つはずだ。その痕跡を探すのにそう時間はかからない」


ベリルの遺した言葉が、細い光明を手繰り寄せる。

ただ不死薬の捜索……それに失敗した時、捜索に当たっていた者はただではすまない。


「ハルカ、みんな、頼むぞ……」


およそ自分の危険を顧みなさそうなあいつらの顔が頭に浮かんだ。









「……遠隔操作だと?」

「ああそうさ。不死薬を見つけたとしても、散布の担当者はそこにはいない。おまけに散布装置は動かしたり、大きな衝撃を与えたりすると強制的に発動する仕組みが施されている。たとえ見つけたとしても、お前たちにはどうすることもできんさ」


どこかの民家。避難が済み家主のいなくなったそこで、コンゴウによる尋問が行われていた。

椅子に縛られた機械帝国の軍人が、余裕綽々といった態度で情報を吐く。


「解除の方法は?」

「ない。あったとしても俺は知らない」

「……こうすれば思い出すか?」

「ぐおおお!……馬鹿め!そうして時間を無駄にしているがいい、瘴気に怯える惨めな獣どもが!……うおおお!!」


電撃が男を襲う。


「質問を変えよう。不死薬の設置されている都市は?」

「ごほっ、ごほっ……魔物が多く配置されている都市と同じだ。不死薬には瘴気の散布による都市機能の停止以外にも、それぞれに配置された魔物の強化という目的もあるからな」


話したところでどうにもならないと確信した男があっさりと口を割る。


「……最後の質問だ。お前たち、機械帝国の目的はなんだ?お前たちの乗り物に積んであったこの『延命の秘薬』はなんだ?これをどうするつもりだった?」

「く、く。お前らには理解できんさ」

「……また戻る。それまでに、すこしでも利口になっておくんだな」


その後すぐ、コンゴウが手配した冒険者ギルドの人間によって、遠隔操作の件と、不死薬の配置に関する情報は各都市に伝えられた。それが伝えられたのはハクの部下が核都市に不死薬の件を伝えた直後であり、今まさに不死薬の捜索に乗り出さんとしていた人々にとって、迂闊な行動による惨劇を回避するための重要な情報となった。

しかしその内容に、「遠隔操作で行われる散布をどう阻止するのか」については含まれていなかった……。









起爆まであと数分。

それぞれの都市では、不死薬が発見されていた。



【グレタとクーロン】


「見つけたぁ!……見つけてどうすんだ?」

「見つけなければ対策の打ちようもないだろう。まずは対象を調べなくては」


半ば廃屋となっていた郊外の小屋に、機械の取り付けられた大きめの樽が鎮座する。

樽の中身が見えずとも、場に不釣り合いなその装置をみれば、それが不死薬の樽であることは間違いなかった。


「ふむ、見たところこの装置で樽に穴をあけるだけの仕組みのようだ。単純だが、それだけに対策が練りづらいな」

「単純じゃなかったら対策できたのか?」

「もし火薬などが使われていたのなら凍らせるつもりでいた」

「なるほどなあ、んで、どうすんだ?俺ら二人だけでなんとかなるか?もっと人手があった方がよかったんじゃねえか?」

「浄化師がいれば何よりだったが、足手まといがいればここの発見に時間がかかっていた。散布に間に合ったかは怪しいところだな。さて、これに関しては俺に考えがある。少し外に出ていろ」


クーロンに言われ、首を傾げながらグレタは外に出る。



しばらくの後、周辺の気温が下がったのをグレタが感じると、手帳を片手に広げたクーロンが小屋から現れた。


「おう、何したんだ?」

「何層かの氷で樽ごと覆ってきた。あれならたとえ樽に穴が空いたとしても瘴気は外へ漏れ出さん。後からゆっくり浄化すれば人的被害は抑えられるはずだ」

「はーっ!賢いなあ!」

「……そうでもない。この暑さでは氷は一日もたないだろうし、短時間の延命にすぎん。なにより結局最後は浄化院に頼らなければならん以上、加害者側の目的は果たされる……」


ハク同様、今回の一件の主旨を理解していたクーロンが悔恨の念を漏らす。


「でも、お前は何百人って人の命を救ったぞ。まずは誇れ!100点満点がとれなくても、お前は他の誰よりも高い80点を取ったんだぜ!」

「……ふん、前向きなのか能天気なのか。まあいい。反省は次の機会に活かすとしよう」





【ショウとマリア】


中心都市クオンの空き家。そこにグレタ、クーロンが見つけたものと同様の樽を見つけていた。

そして小屋の中を苛立たしそうにうろついていたマリアが、目をつむったまま椅子に座るショウに声をかけた。


「ショウ、ねえちょっとショウ!」

「なんだ?」

「なんだ?じゃないわよ!もうずっとそうして座ってるじゃない!これをどうにかするんでしょ!?」

「だから言ってるだろ?考えがあるって」

「そう言ってから10分以上そうしてるから不安なの!あんた変なところで間抜けなんだから、せめて何をしようとしてるのか教えなさい!」

「間抜けって……まあいいか。俺の特技でな、自分に迫る危険とか、脅威とか、そういうのがわかるんだよ」

「え?……ああ、前に砂漠越えをした時言ってた話?それが?」

「遠隔操作する奴の気配をそれで探ってる。多分時間が近づいたら……っ!来た、そこか!」


空き家の扉を蹴破らんとする勢いで外に飛び出すショウ。

突然のことに驚いたマリアが外に出ると、ショウの姿は既になかった。

そして約一分後、ショウが一人の人間を担いで戻ってきた。


「捕まえた。遠隔起動装置も取り上げたから、もう心配ないぞ。本人の安全のためかわからないが、案外遠くにいてちょっと焦ったがなんとかなった」

「……あたしが来る意味あった?」

「……思い出になった、とか?」

「ちょっとは活躍したかったー!」


頭を抱えるマリアに、苦笑いをするショウであった。




【ハルカとナズハ】


「あった……!」

「もう時間がない。浄化師を呼んでいては間に合わないな」


ハルカとナズハ。戦闘面で想定以上の好相性を発揮したコンビは、しかし不死薬への対処プランを持たないでいた。

他コンビに比べ不死薬の発見にやや時間がかかったこともあり、最も現実的な対処である『浄化師を連れてくる』という選択を取ることもできない。


「町の外に動かすことも、壊すこともできない……どうしたら……」


八方ふさがりの状況に、焦りばかりが募る。

刻一刻と迫るタイムリミットが彼女らを追い詰める。


「……やむをえない、ハルカ、逃げるぞ」

「でも!」

「わかっているだろう。ここにいても無駄死にだ。私たちが幽鬼となれば、被害は瘴気そのものによるものだけでは済まないぞ」

「そんな……まだ、まだ何か方法が……!」

「甘ったれたことを言うな!その善意が人を殺すと言っている!守るべき相手のことを忘れたそれはもはやただの私利私欲だ!わかったらさっさと逃げるぞ!」

「ま、待ってください!まだ……まだ……」


ナズハに腕を引かれるハルカ。

その場から離れるということ、それはここ一体の汚染を容認するということだ。

ハルカはその選択を取る覚悟ができずにいた。


「お、やっと見つけた」


その場に不釣り合いな、気楽そうな声が耳に入る。見れば、奇妙な紋様が描かれた仮面をつけた、華奢な少女がそこにいた。

散布まであとわずか。ここにいるのは冒険者か、避難の遅れた一般人。多少見た目に癖はあれど、少女が前者でないことは明らかだった。


「くそ、引きずらないといけない相手が増えたぞ!」

「悪いけど、時間がないんだ。ハルカちゃんと話せるかい?」


突然の乱入者が、またしてものんきな言葉を吐く。

ナズハは明らかにいらだっていた。


「馬鹿を言うな!緊急事態だという認識すらないのか!間もなくこの装置が作動する、そうなればここら一体が瘴気に包まれるんだ!」

「なんだ、そんなこと。じゃあこれでいいんだね?」


少女が指をならすと、樽に付いていた装置がゴトリ、と音をたてて床に落ちた。

詠唱でも、魔法陣でも、魔道具でもない魔術。

二人は目を見開いた。


「今なにを……」

「言ったはずだよ、時間がないって。ハルカちゃん、少しだけ僕と話そう」


少女に近づくナズハをいなし、少女がハルカに近づく。

尋常ならざる気配に、ハルカは一歩後ずさった。


「あ、あなたは、誰です?」

「僕?僕は……」


一瞬の間の後、少女が再び口を開く。


「僕は、リ……シュミリオだよ。ショウの友達のね」


リアル多忙につき不定期更新になります。

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