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自分と世界を救うには  作者: あるつま
第3章 百年祭と白金級冒険者
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70話 議事堂奪還②

69話での不死薬散布の時刻を変更し、午後5時としました。

「あの、皆さん。これから応援に駆け付けるって言っても、それぞれの都市へは結構な距離がありますよね?どうするんです?」


ハルカが疑問を口にする。

答えたのはグレタだった。


「ああ、たしかに普通に向かってたんじゃ間に合わねえ。だからハクさんにアレを使う許可を貰っといたぜ」

「アレ……ああ、アレか!限られた人間にしか使用が許可されないという……。噂が本当なら、応援としては成り立つな!」

「アレとはなんだ?お前たちの知っている知識だけで話を進めるな」


自慢げなグレタと興奮気味に尻尾を揺らすナズハに、クーロンが苛立ち気味に説明を求める。


「『砂鮫』って乗り物だ。砂鮫そのものに乗るんじゃなくて、括り付けた籠みたいなもんに乗るらしいけどな。砂漠を移動する最速の手段って聞いたぞ」

「砂鮫は魔物だから、管理や調教にとてつもないコストがかかるという。その代わりに、常識では考えられない速さが出るらしい。実際にどのくらいの速さなのかは知らないが……」

「へえ~!それなら間に合うかもしれません!急いでその砂鮫に乗れるところに行きましょう!」


逼迫した状況を理解している4人は、グレタの先行で砂鮫乗り場へと向かった。





「これが、砂鮫。なんというか……籠というよりは箱ではないか?」

「なんか楽しそうだな!」

「旦那方!急いでくだせえ!国の一大事だって話でしょう!」


砂鮫乗り場に到着した一行を、管理人らしき男が急かす。

件の魔物に取り付けられたのはクーロンのいう通り、金属の箱から角を取ったような物だった。


「今回は一番速度が出る奴にしやした。それぞれの砂鮫は目的の都市まで一直線に向かいやす」

「ほう。なら細かい説明は不要だ。私の助けを待っている人々の元に急ぐぞ!」

「待って下せえ。いいですかい、旦那方。三つの約束がありやす。一つ、中に入ったら、着いてる紐で必ず体を固定すること。二つ、乗ってる間は口を開けないこと。舌をかみやす。三つ、砂鮫が完全に止まるまで絶対に鍵をあけないこと。絶対に、忘れちゃなりやせんよ」

「わかりました。とにかく急ぎましょう!」


ハルカとナズハ、グレタとクーロンがそれぞれの箱に入っていく。

速度を重視するためか、二人分が寝そべって入る最低限のスペースしかなく、ほとんど身動きは取れない。


「最後に、これを持ってて下せえ」

「これは?」

「中は密閉されてやす。この魔道具がないと、じき呼吸ができなくなりやすから」


一つの箱に一つずつ、手で持てるサイズの魔道具が起動した状態で放り込まれる。

そして、箱の蓋が男によって閉められる。


「幸運を!」


蓋が締め切られる直前、ナズハは思った。

棺桶に入れられているみたいだなあ、と。













「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!はや゛い゛!!!!じぬ゛うううう!!!」

「ナズハさっ!しぇべっ!だめっ!!!」

「ぢぢうえ゛ぇぇぇ!!!!ははうえ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!このはあ゛ぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」













ガチャリという音をたて、鍵が外れる。

その後、ゆっくりと箱の蓋が開いた。


「……し、死ぬかと思いました……ハッ!そうだ、ナズハさん大丈夫ですか!?」


外へ這い出たハルカが思い出したようにナズハの様子を確認する。

そこには涙とその他諸々でぐしゃぐしゃになり、白目をむいて気絶するナズハの顔があった。


「………………」


嫌な予感がしたハルカがそっと近づいて匂いを確かめるが、どうやら漏らしてはいないようだった。

……少しだけしか。


静かに天を仰ぐ。

だが状況がそれどころではないことはわかっていた。


「ナズハさん、起きて下さい!起きて!」

「う、うう……ハッ!私は……?」


意識を取り戻したナズハ。

彼女が落ち着くまで数分かかるのだった。







眼前に十分すぎる殺傷能力を持った蹴りが迫る。

くぐるようにそれを躱すと、その瞬間には次の蹴りが迫っている。低空に浮遊したまま繰り出される連撃には反撃の隙がない。

百年祭の準決勝でも見た攻撃だが、速度、威力が段違いだ。あの段階では俺に分があった身体能力も、今ではでは完全に互角……いや、スーツの効果も加味すればベリルのほうがやや上か。


過剰な瘴気によって幽鬼と化したベリルは理性を失っているにもかかわらず、以前と同じように身に着けた武装をフルに活用してくる。

以前使っていたライフル銃のような大きな銃は持っていないが、代わりに属性球が装填された複数の拳銃を所持し、それらを間合いが空いた瞬間に使用してくる。

いずれの距離においても相手が有利。どうにかして隙を作らないと。


「アアア!」

「なっ!?これは……!?」


どうやら、先に隙を作っていたのは俺だったらしい。

俺に撃ち込まれた属性球は、これまでに見たことのないものだった。


「聖属性……!?」


そう、聖属性の属性球。そんなものが存在するとは思わなかった。教国とつながりのある機械帝国だから用意できたのだろう。

不意を突いたその銃撃は、俺にとっては致命的だ。全身から何かが抜け落ちるような不快な感覚。体に力を入れられない。


「ぐっ!」

「ア、ア、ア!!」


俺が弱ったのを見たベリルが掴みかかってくる。

純粋な力対決。今の俺に勝ち目はない。


「まずい……!!」

「てことは、あたしの出番ね?」

「!?」


俺を今まさに引きずり倒さんとしていたベリルに魔術が直撃する。

強い脅威を放つその光に包まれ、ベリルは声にならない悲鳴を上げる。

俺はとっさに間合いを取った。


「ショウ、今よ!」

「……ああ!」


苦しむベリルに、剣を構える。

……ごめんな。


「『一心』」


第六感が教えてくれるベリルの急所は左足の付け根。

それが彼女を救うことになると信じ、俺はそこに剣を突き刺した。





「……ショウ、どうするの?」

「魔物発生の原因はこの装置だろうが、今は停止してるみたいだ。ひとまず急いでコロシアムに戻るぞ。このままだと、この国が大変なことになる」

「え、これ以上に?それはまずいわ。行きましょう!」


ベリルの亡骸の状態を整え、ポーチから出した布で覆う。

後で弔ってやらないとな。


出口に向かうが、マリアが付いてきていない。

振り返ると、部屋でかがみこみ、何かをしていた。


「おい、マリア!どうしたんだ、急ぐぞ!」

「ごめん、今行く!」


駆け寄るマリアを抱える。

急いで戻るなら結局この方が早い。


議事堂にかけられた時計を見ると、時刻は午後3時ちょうどを指している。

―――――タイムリミットまで、あと2時間。


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