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自分と世界を救うには  作者: あるつま
第2章 聖女マリアとエルフの里
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33話 エルフの里にて

「なんだ……これは」


 改めて集落を見渡す。ひいふう……7軒の家が建っている。そしてそれらに囲われるような位置に祠があり、やや遠くに例の半透明な黒い壁があるようだ。


「たったの7軒……リイド、この里にエルフは何人住んでいるんだ?」

「…………3人だ」

「3人!?」


 いやいやいや。おかしいだろ。たったの3人になるまでどうして放っておいた。というか、こんな森の奥で3人だけの生活なんて送れるのか?そもそも、魔物だらけの森の奥地にわざわざ住もうと思うのがおかしいだろう。

 疑問が尽きない俺の様子を見て、リイドが声をかけてきた。


「混乱しているだろう。詳しい事情は我らの長から説明しよう。ショウ殿、貴公の相棒を起こしに行くぞ」

「あ、ああ。そうか、今は朝だったんだな」


 俺が意識を失ってからずいぶん経っていたらしい。リイドに連れられ、ハルカが寝ているという家に向かった。





「すー……すー……」


 ハルカがベッドの上ですやすやと寝ていた。なぜかうつぶせで、おなかを地面に投げ出しつつ顔だけ前を向いている。寝方まで犬のようだ。

 小屋の入り口から少し入ると、寝ているハルカの耳と鼻がぴくっと動き、そのまま目を開いた。


「んっ…はっ!ショウさん!目が覚めたんですね!」


 ベッドから飛び起きたハルカが駆け寄ってくる。尻尾の振り方が激しい。やや距離が近いが、露骨に遠ざかるのもアレなので頭を撫でつつ優しく引きはがす。


「わふ……」


 なんだか気持ちよさそうだ。撫で甲斐のあるやつだなあ。


「オホン」


 側で見ていたリイドが咳ばらいをする。じゃれている場合じゃなかった。


「ハルカ。エルフの里について、里長から教えてもらえるそうだ」

「了解です!行きましょう!」


 最近露骨に犬っぽくなっている気がするな……まあいいか。ハルカの犬化の進行を気に留めないようにしつつ案内されて向かったのは、7軒の家の中で最も立派な家だった。


「ここだ。我々三人は普段、この家で生活している。中に入ってくれ」


 リイドが入るよう促す。3人ともこの家でか。7軒の家は少ないと思ったが、3人ならそれでも多いくらいなのだろう。


「おじゃまします!」

「お、おじゃまします」


 雰囲気をわかっていないのか、わかった上でそうしているのか。元気なハルカの様子に引きずられて挨拶してしまった。悪い事ではないのでいいのだが。

 

 中に入ると、二人のエルフがソファーのような椅子に腰かけていた。一人は俺が先ほど勇者の記憶の中で見た老人だ。老人とはいうが決して貧弱ではなく、歴戦の戦士らしい体格と貫禄を持っていた。もう一人は白髪の老婆で、杖を立て両手をそこに乗せて座っていた。


「よく来たねえ。さ、立ち話もなんだから、お座り」


 老婆が杖を軽く振ると、部屋の隅にあった別のソファーが俺たちの側に移動してきた。詠唱も魔法陣も使っていないところを見ると、魔道具だろうか。

 ソファーに座り向き直る。俺たちの後ろにいたリイドは老人と老婆の側に移動した。それを確認した老人が白く長い髭に覆われた口を開いた。


「よくぞ来た、勇者の魂を継ぐ者よ。まずは名乗らせてもらうとしよう。我が名はオーフェン。女神さまより最初に生み出されたエルフじゃ。この婆さんはラシィ。儂の次、すなわち二番目に生み出されたエルフじゃ。儂の妹といったところかの」

「初めまして。ショウと言います。勇者とのつながりについては自分でもよくわかっていませんが、それを含めた自分の正体を知りたくて来ました」

「私はハルカといいます。ショウさんの相棒です。よろしくおねがいします!」


 相手の自己紹介に合わせ、こちらも名乗る。あちらのそれはちょっとツッコミどころの多い自己紹介だったが。ひとまず聞きたいことを遠慮せず聞いてみる。


「あの、早速で申し訳ないのですが、勇者の魂を継ぐ、とはどういうことでしょうか?自分には時折思い出す勇者の記憶以外、自分と勇者を結びつけるものがほとんどありません」

「ふむ。記憶は戻りつつあるのか。お主が何者かについてじゃが、実を言うと儂らもほとんど知らされておらんのじゃ。少し前、突然女神様がここを訪ねられての。最低限の事だけ告げて立ち去られたわ」


 女神が現れた……?イメージ的に神はそうやすやすと動かないものと思っていたのだが、そうでもなかったらしい。よく考えれば、店を構えたり置手紙をしたり、結構アクティブに動いていたなあの女神は。

 そういえば、どうしてリオラは俺をわざわざ旅に出させたのだろう?自分で動けるのなら直接教えてくれればいいものを。


 これは今考えてもわからなさそうなので、次の質問に移る。


「今、女神に生み出されたっておっしゃいましたよね?どういう意味ですか?それにここに来るまでに聞いたんですが、エルフは三人しかいないというのもいったいどうして…」


 俺がしようとした質問をハルカが先に言う。ついでにエルフの現状への質問もしてくれた。オーフェンさんは小さくうなずき、言葉を返す。


「当然の疑問じゃな。端的に言えば、儂らエルフは生物ではなく、女神さまによって生み出された疑似生物なのじゃよ」

「疑似……生物?」


 聞きなれない言葉と、生物ではないという説明にハルカと俺は困惑する。


「左様。通常この世界に生み出された生物のすべては、創造主によって生み出された存在。女神としてのリオラ様は、その創造主からこの世界の管理を任された立場なのじゃよ。しかしエルフはリオラ様が自らの使命を果たすために自ら作った存在。繁殖の能力を持たない代わりに、通常の生物を大きく超えた能力を持つのじゃ」

「つまり……天使様のような存在ということですか?」


 新しい情報が多いが、ハルカが簡単にまとめてくれた。それを聞き、隣のラシィさんが朗らかに笑う。


「あら。天使様とは素敵な言い回しねえ。今度からそう名乗ろうかしら」

「やめておけ。言い得て妙ではあるが、老いた天使など誰も見とうないわ」

「まあ、ひどい」


 オーフェンさんとラシィさんのやり取りは本当に兄妹のようだ。しかしほっこりしてもいられない。まだまだ疑問は尽きないのだ。


「しかしオーフェンさんが最初に生み出されたエルフで、その……老いもあるというのなら、なぜオーフェンさんたち3人しかこの里には残っていないのでしょうか。若いエルフがリイドさんしかいないというのも不思議です」


 少し聞きづらい質問をする。この里のエルフが、普通に寿命で死んでいるとは考えづらいのだ。最初に生まれたエルフがオーフェンさんで、その次がラシィさんなら、寿命で最初に死ぬのはこの二人のはず。少なくとも若いエルフがリイドさんしかいないというのはおかしな話だ。この里に、寿命以外での死が発生していることは間違いない。


 やや失礼な俺の質問に、オーフェンさんは気にした様子もなく答えた。


「ほう、そこまで気が付いたか。よかろう。一つ一つ質問に答えてもキリがない。始めから説明するとしよう。我らエルフがなぜ作られ、なぜ滅びの道をたどっているのか。その全てをな……」


 そう言い、オーフェンさんは細い目をさらに細める。長い歴史を生きてきたはずのエルフの、真実が明かされようとしていた。

 


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