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自分と世界を救うには  作者: あるつま
第2章 聖女マリアとエルフの里
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28話 王都ヨンド②


 一通り読んでみた。書いてあることを要約すれば、勇者の剣術の由来には諸説あるが、我流と言うには動きが洗練されていたことから何者かに師事していた可能性が高いこと、しかし世に広く知られる剣術の多くに理解があるらしい筆者によれば、勇者の剣技は一般的な剣技のいずれにも当てはまらなかったため、勇者に剣を教えた人物が何者なのか一切不明であり、推測も困難であることなどが書いてあった。

そこからは勇者の剣術の特徴が書いてあった。筆者曰く、勇者の剣は基本的に回避と攻撃の融合に重点を置いており、「避けながら切る」を体現した剣術であったらしい。これは人間に膂力で勝ることの多い魔物に対しては理論上最も有効な剣術だそうだ。

 さらに特筆すべき点が一つ挙げられていた。魔物を相手取る場合、魔石を狙うか体を大きく切り飛ばすのが定石だが、勇者の戦い方は前者に偏っていたらしい。魔石は通常の生物で言う心臓の位置にあることが多いためそこを狙うのはそう難しくないのではと思うかもしれないが、人型の魔物でもない限り、魔石を直接攻撃するのは現実的でないそうだ。通常の生き物と大きく違う形をしている魔物はそもそも魔石の位置がどこかわからないし、通常の生き物と似た形の魔物が相手だとしても、激しく動き回る戦闘中に魔石をピンポイントで狙うような戦いは常人には不可能らしい。

 それを当然のように実行していた勇者はまさに魔物を殺すために生まれた存在のようで、常識はずれの動きは味方をも恐れさせた……。


 と、思いの他本格的な内容が書かれていた。要約したため省いたが、本の節々に勇者賛美のような文言が散らばっていたため、筆者は勇者の信奉者というか、ファンのような人間だったのかもしれない。多少内容が誇張されている可能性はありそうだ。

 ただ「避けながら切る」が基本であるという部分は参考になる。俺はこの言葉を記憶に残し、他の剣術の基礎の本からいくつか参考になりそうな部分を写して剣術の本の棚から離れた。


 続いて各国の情勢や地理についてだが、さすがに正確な世界地図のようなものはなかった。職員に聞いても世界地図は無いらしい。なんでも、世界地図は軍事転用の恐れがあるので各国の機密文書扱いになっているのが普通で、図書館に公開されることも出版されることもまずないとか。残念。

 しかし悪いことばかりではなく、各国の基本的な情報やおおよその方角、近年の情勢を書いた本があった。つい最近発行されたばかりらしく、可能な限りの内容を書き写させてもらった。ここで得た情報を今振り返るのも長くなるので、それぞれの国に関わる機会があれば振り返ろうと思う。

 ひとまず今いるヨンド王国に関してだけ言えば、世界の国の中でも、特に王族の歴史が深く、そのためヨンドの王族は失われた古来の知識を蓄えているとも言われており他国の行政組織からも一目置かれているそうだ。一方で産業は鉄などの鉱物資源に頼っており、鉱物の輸出先である機械帝国との間の貿易摩擦に悩まされているんだとか。おそらく、地下資源の需要も機械帝国のそれに偏っており、強気な対応ができないのだろう。

 さらに、国内になぜか強力な魔物が多く発生する森があるらしく、そこへの対処を常に迫られているため浄化院や冒険者ギルドとの結びつきも積極的にならざるを得ず、外交関係はいずれも相手に有利を取られるような形になっているという。

 なんというか、全体的に不遇な国だ。それだけの苦境に立たされているということは、本当は失われた古代の知識なんて大層なもの持っていないんじゃなかろうか。


 最後に勇者についても調べようかと思ったが、ここで閉館時間になってしまった。まだ午後の4時ごろだが、本の整理や管理など利用者がいるとできない作業があること、そして防犯上の理由から日が暮れるよりいくらか早く利用を締め切る規則になっているらしい。

 こればかりはどうしようもないので、ひとまず宿に帰ることにした。





「どうでしたか、成果のほどは?」


 宿に戻ると、先に帰っていたハルカに成果を聞かれた。俺は図書館で調べた情報をかいつまんで共有し、ハルカの成果を訪ねた。


「なるほど。じゃあ、エルフの里の位置はまだわからないということですね。私も探してはみましたけど、これといった情報はないです。でも、弓と魔法に関しては参考になる本がたくさんありましたよ!」


 そう言い、ハルカはメモ帳のような冊子を取り出す。これにハルカの成果が書いてあるのだろう。明日以降はそれらの成果を試すそうだ。


「よかったな。そうだ、明日はギルドに行かないか?エルフの里の場所は簡単にわかりそうもないし、ひとまず依頼をこなしながらゆっくり調べようと思うんだが」

「そうですね。急ぐ旅でもないですし、まずは今できることをしないと。路銀もいくらでもあるというわけではないですし、明日からは依頼をこなしていきましょうか」


 と、お互いの成果を確認した俺たちは、ひとまずの方針を固めた。

 そして、翌日。


「なんだか、見慣れない依頼があるな?」

「はい。ええと……『死の森の定期駆除依頼 参加者募集』?死の森って何でしょう……?」


 いつも受けているような依頼の表示を押しのけるように、大きな張り紙で依頼が掲示されていた。

 定期駆除依頼と言うからには、ここでは定期的に、何度も行われている依頼なのだろう。依頼主は……ヨンド王国宰相?国が依頼を出しているのか。

 ここで思い出す。図書館で調べた本の中に、国内になぜか強力な魔物が多く発生する森があると記されていた。この『死の森』とやらがそうなのだろう。


「とりあえず、詳細を聞いてみるか」

「そうですね」


 詳細を確認しに受付へ向かう。エマさんもそうだったが、やはりここの受付も美人のお姉さんだ。まあどうでもいいか。

 依頼について聞いたところ、死の森というのは王都ヨンドから徒歩で二日ほど歩いた位置にある森で、魔物がやけに多く表れるが、原因は不明。なぜ根本的な原因の解決をしないのか聞いたが、なぜか王国からそういった依頼が出されることはなく、一応国有地であるため勝手に調査するわけにもいかず定期的な魔物の駆除に終わっているそうだ。

 ちなみに死の森という名前は、勇者と邪神が戦った大陸で、魔物の温床である『死の大陸』にかけているらしい。ちょっと大げさなネーミングだ。

 参加は自由で、報酬は歩合制だそうだ。時折強力な魔物もでるので、腕に自信がないならやめた方がいいとのことだった。


「ハルカ、どう思う?」

「できれば参加したいです。自分の実力を試すいい機会になると思いますし」

「よし、なら決まりだ。すいません、この依頼、参加させてください」


 依頼は一週間後。死の森の近くには死の森への監視とけん制をかねたギルドの出張所と、それを中心にできた小規模な町があるらしく、そこを拠点に数日間魔物の駆除が行われるそうだ。


「必要な準備をして……そうだ、マリアさんに出かけることを伝えないと。私、手紙を出しておきますね!」


 王都に来て二日。早くも大きな予定が立った。まあ、マリアもこちらに着いたばかりでしばらくはドタバタしているだろうし、遊びに行くのはしばらく後だな。

 いつ以来かの本格的な戦い、命のやり取りが迫っていた……。


執筆にかけられる時間がかなり限られているので、文章やキャラの口調が少し変になっているかもしれませんがご容赦ください。

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