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自分と世界を救うには  作者: あるつま
第1章 目覚める記憶
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10話 依頼と期待

 ハルカに引っ張られて受付のエマさんのもとに行く。ハルカが元気に声をかけた。


「エマさん!ゴブリンの巣のせん滅依頼を受けます!手続きをお願いします!」

「ゴブリンのせん滅依頼、ええと、たしか…ありました。カシ村の村長さんからの依頼ですね。ここから徒歩で二時間くらいの村ですね。……あれ?この依頼……少々お待ちください」


 エマさんは何かに気が付いたようで、奥に引っ込んでしまった。


「行っちゃったぞ。こういうことってよくあるのか?」

「いえ?いつもならギルドカードを提示して、依頼の説明を受けて、書類に名前を書いたらおしまいですよ?この依頼、何かあるんでしょうか……」


 しばらくして、エマさんが戻ってきた。


「お待たせしました。支部長から、執務室にお二人をお通しせよとのことです。こちらへどうぞ」

「え!?私もですか!?銅級なりたての私も!?」


 ハルカが驚いている。それを言うなら俺なんて依頼達成回数ゼロの鉄級なんだがな。


 執務室の前に案内された。さすがに受付のあるロビーに比べると床や壁もきれいだし、さりげなく調度品や絵画で飾ってある。偉い人も来るのだろうし当然だろう。きれいなのは単純に通る人の数の少なさも関係してそうだが。


「シャット支部長、ショウさんとハルカさんをお連れしました」

「ご苦労様っス、エマさん。どうぞお入りくださいっス」


 エマさんが扉を開け、失礼しますと告げて去っていった。きれいに整理整頓された部屋に入ると、シャットが前に会ったときのような恰好で仕事用らしき大きな机についていた。


「ショウさん、お久しぶりっス。お元気そうで何よりっス。研修の解答用紙見せてもらったっスよ。勉強熱心なのはいいことっス。これから期待してるっス。それから…」


シャットが視線をハルカに移す。


「あ、ど、銅級びょうけん、冒険者のハルカです!はじめまして!」

「こうしてお会いするのは初めてっスね、ハルカさん。初めまして、冒険者ギルドワモス支部支部長のシャットっス。よろしくお願いするっス」


 ガッツリ噛んで顔を赤くしているハルカに、気にせずにシャットが自己紹介した。俺が話を進める。


「久しぶり、と言ってもまだ二週間しかたってないけどな。シャットも元気そうで何よりだ。今回のこれは依頼についてだよな?あの村になにかあるのか?」

(ちょ、ショウさん、ため口はまずいんじゃあ…)

「ああ、自分はもともと冒険者っスから敬語である必要なんてないっスよ。あ、でも他のお偉方にはちゃんと敬語で話してほしいっス。自分が怒られるっス」


 ああ、そうか。何も考えずしゃべっていたが、シャットは俺の上司にあたる人間なのだ。しかしこの世界の敬語文化に慣れるのは大変そうだ。というか地獄耳だなシャット。


「さて、本題に入るっス。実はあの依頼、さっき確認したところ、村に近い別の都市の冒険者が同じ依頼を受けていたらしいっス。ただ、その冒険者からの連絡が一向になく、さらに村側からも何の連絡もないそうっス。普通依頼が失敗したなら失敗したで、何かしらの連絡が村側からくるはずっス。端的に言って怪しいっス。村ごと壊滅したか、依頼はおとりで村ぐるみでなにか企んでいるか、何が起きているかわからないっス。」

「なるほど、それで俺たちは何をすればいいんだ?それとも何もせず依頼を取りやめるべきか?」

「いえ。ショウさんとハルカさんには、ひとまずこの村の調査をお願いしたいっス。この村に行って、この村で何が起きているのか報告してほしいっス」

「まあ、経験の浅い俺とハルカに解決は難しいだろうからな」


 俺が納得していると、シャットが首を横に振る。


「違うっス。ショウさんならなにがあっても生きて帰ってこられると思っているから頼んでるっス。場合によっては大事件につながるかもしれないこの一件、確実にこなしてきてほしいっス」

「そうか、まだ何の実績もないけど、そういってもらえると嬉しいな。ありがとう」

「あ、あの」


 おずおずとハルカが声をあげる。尻尾が足の間に挟まれており、不安が丸わかりだ。


「ショウさんはともかく、私までそんな重要な依頼について行ってしまっていいのでしょうか。私では足を引っ張るだけかと…」


 申し訳なさそうなハルカだが、そもそも俺はこの町から出たことすら無いのだからついてきてもらわないと困る。


「心配いらないっス。半年前にハルカさんが登録した際の試験の内容や、その後の依頼の達成状況などを総合的に判断してお願いしてるっス。自分はむしろ、この調査にはハルカさんの力が重要になってくると考えてるっス。ショウさんはハルカさんの護衛みたいなもんっス」

「護衛って。いやでも、そうだよな。一般常識から学びなおしてるような俺一人に調査なんて無理だぞ、ハルカ」


 シャットの言葉に俺が続ける。すると、ハルカの尻尾が足の間から抜かれ、フリフリと揺れだした。


「わ、わかりました!冒険者ハルカ、必ず依頼をこなしてみせます!」

「その意気っス。そうしたら、現地の情報やゴブリンの生態に関してはエマさんから聞いてくださいっス。それじゃあ、よろしくお願いするっス」

「まかせといてくれ。じゃあまたな」


 俺とハルカは部屋を後にした。情報を確認して、準備をして……忙しくなるぞ。

 緊張と高揚。冒険者として初めての仕事がついに始まるという事実に、俺の胸は高鳴っていた。だからだろうか。


「こっちの『調査』も、これでちょっとは進むといいっスけどねえ……」


 シャットのつぶやきは、扉を閉める音に紛れ、俺たちの耳に届くことはなかった。



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