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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十七章 育てよう、駆け回ろう
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素晴らしき秋の一面・動 その十一

 私の呼び掛けに応えて集まったのは四人。ジゴロウ、アイリス、ルビー、そして源十郎だった。前は男四人だったが、今回は初期メンバーである。この五人というのは本当に久しぶりだ。


 ロビーに集まった我々は『アミューズメントパーク』に直行する。そして真っ先に向かったのは、当然のように『UFOキャッチャー』だった。


「おォ?話にゃァ聞いてたが、マジで色々あんなァ」

「ルビーや、欲しいものはあるかの?」

「え?いいの?」


 ジゴロウは興味津々で筐体を品定めし始め、源十郎は『お祖父ちゃん心』とでも言う何かを爆発させている。完全に(ルビー)のためにアイテムをプレゼントするつもりだ。彼女もそれに甘えるようで、ウキウキしながら源十郎の肩に飛び乗った。


「アイリスはどうする?」

「そうですね…とりあえず、皆がやっているのを後ろから見ておきます。その間に何をやるか決めますね。イザームは?」

「もちろん、『謎キャッチャー』だ」

「あ、あはは…。話には聞いてましたけど、随分気に入ってるんですね」


 アイリスは保留、私は最初から『謎キャッチャー』一択であるから迷わない。アイリスは苦笑いをしているが、私はイベント中は『謎キャッチャー』だけやるともう決めている。誰に何と言われようが、絶対に続けるぞ!


 私達はジゴロウを先頭に数ある筐体の間を歩いていった。しばらくすると、ジゴロウがピタリと歩みを止める。何か気になる筐体があったのだろうか?私は兄弟が見詰める筐体の中身を見る。そして何となく納得するアイテムが入っていた。


「酒アイテムか。まあ、鬼と言えば酒だしな」


 ジゴロウが興味を惹かれたのは様々な酒が入った筐体だった。どれもこれもガラス瓶に入っており、瓶にはラベルが貼られている。そこに書かれているのが酒の銘柄なのだろう。


 酒瓶は無数にあるが、どの瓶も栓に金属の輪がついている。どうやらその輪にアームを差し込んで持ち上げるらしい。輪の大きさはバラバラで、一番小さい輪になるとアームが入るかどうかも怪しかった。


 輪の大きさは酒瓶の大きさには関係がないようなので、中身である酒のレア度に直結しているらしい。さて、ジゴロウはどれを狙うのだろうか?


「酒かァ…俺ァ酒精が強ェ辛口が好きだなァ。兄弟はどうだァ?」

「うん?私はウイスキー派だな。アイリスは?」

「あ、私はあんまり強くない果実酒が好きですね。源十郎さんは?」

「儂は日本酒なら甘口でも辛口でも構わんぞ」

「お酒の話は未成年のボクには全くわからないね!」


 どうやら成人組は全員がイケる口らしい。他の成人連中も交ぜて酒談義をしてみたいものだ。ジゴロウはラベルをしっかり見てからアルコール度数が高い酒を見定め、その輪を狙ってアームを動かす。ゲームの中で酔っぱらっても仕方がないだろうに…口出しすることはないが。


 ジゴロウは何度か失敗したものの、五回目でようやく一本確保することが出来た。取り出し口から現れたのはクリーム色の甕で、力強い字で『鬼酔酒・桜舞』と書かれている。日本酒系だろうか?ジゴロウは嬉しそうに笑いながら、インベントリに収納した。


 それから九回目と十回目にも酒瓶を取っている。九回目に取ったのは透明な瓶に入った透明な酒で、ラベルには『白酒・桃源郷』と書かれていた。白酒と言うと、確か中国の酒だった気がする。蒸留酒であり、度数は高いはずだ。


 そして最後に入手したのは『ファイラーVSOP』と刻まれた高級そうな瓶だった。最後の一回に小さめの穴を狙ったところ、運良くアームを通すことに成功したのだ。VSOP…それは知っているぞ。Very(非常に)Superior(優れた)Old(古い)Pale(透き通った)の略称だ。


 細かいことは知らないが、ブランデーの階級のようなものである。最高級の品からは遠く及ばないが、十分に美味しいお酒だ。ファイラーというのはゲーム内の銘柄だろう。うう、私のアバターが骸骨でなければ良かったのに!


「ハッハァ!結構取れんじゃねェか!高級品っぽいから味もしそうだなァ。こりゃァ、明日もやるしかねェなァ」

「酒をそんなに集めてどうするんだ?」

「あァ?そりゃァ半分は自分で飲むに決まってんだろォ。鬼ってなァ酒好きだって相場は決まってらァ」

「あれ?もう半分は?」

疵人(スカー)闇森人(ダークエルフ)に渡して味見させんだよォ。味を知りゃァ似たようなモンを作ろうとすんだろォ?」


 それでタダ酒が飲めるようになりゃァ最高だ、とジゴロウは締め括った。おお?酒造りをしている住民がいるのは知っているが、彼らにサンプルとして提供するつもりか。その発想はなかった。


 色々な種類の酒があれば生活も豊かになるだろう。理由が欲望に忠実過ぎるようにも思えるが、そこもジゴロウの良いところだ。だが、もし上手く行ったらちゃんと金を払って飲めよ?


「次は誰がやるんだァ?今度は俺が見物させてもらうぜェ」

「ふむ…欲しいものは決まったか、ルビー?」

「うん!」


 次に『UFOキャッチャー』で遊び始めたのは源十郎とルビーであった。ルビーが選んだのは無数の短剣が詰め込まれた筐体だった。祖父へのおねだりにしては物騒だが、源十郎は嬉々として『UFOキャッチャー』に挑んだ。


 その結果は惨敗。気合いを入れすぎて最もレア度の高い短剣を狙ったせいで一つも取れなかったのだ。剣術を初めとした武術の達人も、『UFOキャッチャー』を自在に動かすことは出来ないらしい。何だか少しだけ安心した。


「お祖父ちゃん、頑張ったね!偉い!」

「うう、ルビーは優しいのぅ…」


 割りと本気で落ち込んでいた源十郎は、喜ばせようとしていたルビーに慰められる始末であった。身体の表面を手のように変形させ、肩の上に乗ったまま源十郎の角を撫でている。


 そのルビーはと言うと、性能ではなくデザインで選んだ短剣を狙っていた。彼女は時と場合によって成長する武器である『蒼月の試練』で得た短剣と、アイリスが作った短剣を使い分けている。それらの性能に現時点では不満がなく、単にコレクションとして欲しいようなのだ。


「一振りだけか…でも一番欲しかったヤツだし、実質勝ちだよね!」


 その結果、取れたのは一振りの短剣だった。白地の鞘には巻き付くような鮮やかな緑色で蔓の模様が装飾され、柄頭には同じく真っ赤なの薔薇の飾りがついている。刀身は赤い水晶のような材質で出来ており、その透明度は向こう側が見えるほどだった。


 武器の名前は『薔薇の華剣』。レア度は『S(特別級)』で、斬った相手の傷が治りにくくなる効果とごく稀に敵を混乱の状態異常にすることが出来るらしい。決して弱くはないが、わざわざ使うほどの武器でもないようだ。


 あと何故か剣を抜く度に花弁が舞うエフェクトと共に薔薇の香りが辺りに漂うという謎の機能がある。誰だ、これを作ったのは?この機能がなければもう少し強い武器になったかもしれない…でもルビーが満足しているようだから問題はない。


「次は私の番だな」


 私は四人を連れて『謎キャッチャー』の筐体に向かう。今日も何故かプレイヤーはいない。筐体をジロジロと見る者達はいるが、決して触ろうとはしなかった。面白いぞ?


 私は迷わず『謎キャッチャー』に触れ、アームを動かして黒いカプセルを取っていく。一つ、また一つとカプセルを取っていき…ああっ!?最後の一個を取り逃した!ううむ、明日こそ十個全部を取るぞ!


「兄弟よォ、何だこりゃァ?」

「ああ、見てろよ…」


 不思議そうにカプセルを見るジゴロウの目の前で、私はカプセルの一つを開ける。すると白い光が輝き、木製の椅子が現れた。ああ、光の色で察していたけどこれはハズレだな。


 何の変哲もない椅子が現れたことで、ジゴロウの困惑はより大きなものとなっていた。そこで『謎キャッチャー』について種明かしをすると、呆れたようにため息を吐いてから「まァた変なことしてんだなァ」と言われた。またとは何だ、またとは!


 ジゴロウの私に対する評価が気になるところだが、それは置いておこう。それから私はカプセルを無心で開けていく。今日は調子が悪いのか、ハズレばかりが出てくる。しかし最後の一個を開けた時、想像していなかった光が溢れた。


「おおっ!?虹色だと!?」

「大当たりかな!?」


 今まで見たことのない虹色の光を伴って私の掌に現れたのは、真っ赤な四角い箱であった。小さな金具が左右に付いていて、持ち手には小さな金槌と螺子回しの模様が刻まれている。


 何だこれは?失礼な言い方になるが、とてもではないが貴重なアイテムには見えない。とりあえず【鑑定】してみるか。


――――――――――


神の工具箱 品質:神 レア度:T(秘宝級)

 『生産と技術の女神』ピーシャが気紛れに作ったアイテムの一つ。

 工具箱の中でリアルタイムで一日以上保存した工具を使ってアイテムを作った時、ごく低確率で作成したアイテムの性能が上昇する。

 効果時間は保存時間に比例する。

 中に入れられるのは工具のみに限られるが、その代わりにどんな大きさの工具も保存可能。


――――――――――


 まさかの女神製アイテム!品質『神』など久し振りに見たぞ…だが、その効果は運が良ければ製作アイテムの性能が上昇するというもの。確定ではないのか…いや、だからこそ『謎キャッチャー』などというふざけたアトラクションの景品になっているのだろう。


 言われてみれば持ち手の模様は『生産と技術の女神』ピーシャの聖印だった気がする。ただ、この工具箱は私には必要ない。本当に必要としている人物は、私の目の前にいるではないか。


「アイリス、これはあげるよ。私ではなく君にこそ相応しい」

「ええっ!?い、いいんですか!?そんなレアなアイテム…」

「私が持っていてもインベントリの肥やしになるだけだろうし…まあ、日頃の感謝の気持ちだとでも思って受け取ってくれ」


 そう言って私は工具箱をアイリスに渡す。私が持っているよりも遥かに有意義に使ってくれそうだからだ。それにいつも様々なアイテムを作ってくれる彼女にはとても感謝している。受け取って貰わなければ私の気がすまないのだ。


 その場で当たった『UFOキャッチャー』の景品を渡すのは我ながらどうかと思うが、私の力で取ったアイテムであることに代わりはない。アイリスは恐る恐る受け取ると、嬉しそうに触手をくねらせた。私は何だか照れ臭い気持ちになりながらそれを見ているのだった。

 次回は6月13日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アイリスは触手クネクネさせて可愛いね!
[良い点] ヒロインが報われた回。
[一言] この工具箱にアイリスの持っている全ての生産用工具を入れられるんじゃない? そしたら、インベントリの節約という面でも凄いメリットあるね。 中身の工具を使って生産すれば、低確率ながら神製品が出来…
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