素晴らしき秋の一面・動 その十二
アイリスにアイテムを譲渡した後、我々は皆で遊べるゲームを求めて移動を開始した。五人で協力プレイをするゲームでも良いし、逆に全員で得点を競うゲームでも良い。とにかく、全員でワイワイと遊べれば何でも良かったのだ。
「ジロジロ見られてんなァ。何でだァ?」
「お主が闘技大会で暴れておるからではないか?」
「違うよ、お祖父ちゃん。原因はアイリスだね!昨日は凄かったもん!」
ルビーが言う通り、歩いている我々には多くの視線が集まっていた。その理由は間違いなく、アイリスにあるだろう。『モグラ叩き』で他の追随を許さない、圧倒的な得点を取った彼女は有名人となっているからだ。
ただし、ジゴロウや源十郎を見る者達もいる。二人も闘技大会で大活躍のようだから、知っている者も多いのだ。逆恨みされたりしていなければ良いが。
「おォ?こりゃァいいんじゃねェかァ?」
「『ロボファイト』?おお、五人でも遊べるのは良いのぅ」
ジゴロウが見付けたのは『ロボファイト』という人型ロボットを操作して戦わせる遊びだった。プレイヤーはロボットに乗り込んで、二本の操縦桿を操作して戦うらしい。
大きなディスプレイでは戦闘の様子がライブ中継されている。戦場はボロボロになった都市であった。倒壊した鉄筋コンクリートのビルだらけの廃墟であり、今もロボットが放った流れ弾や破壊されたロボットの爆発によって地形が変わっている。
肝心の遊び方だが、まずは自分が乗り込むロボットを作る。頭部、胴体、両腕、両脚にそれぞれパーツが二十種類ほどあって、それを組み合わせるのだ。それに付ける武装も百種類ほどあって、それを組み合わせて完成させた自分のロボットで戦うのである。
最大で三十人が同時に戦い、ロボットが壊れるまで戦い続ける。誰かのロボットが破壊されたら、待っているプレイヤーが乱入する仕組みだ。生存時間とロボットの撃破数がポイントとなる。もうこれだけで一本のゲームになるのでは?その時にはタイトルをもう少し捻ったものにしなければならないとは思うが。
何度でも挑戦出来るが、一度撃破されたらポイントはリセットされるので回数をこなせばポイントが加算されていく訳ではない。ただプレイすればするほど慣れるので、決して不利にはならないようだ。
それなりに人気の競技であるようで、広い参加待ちの待合室には沢山のプレイヤーがいた。待つことになるが、ロボットは簡単に撃破されるようで回転率は高い。待合室では速いペースでプレイヤーがフッと消えては現れてを繰り返している。ああやって戦場に向かい、撃破されると同時に戻ってくるのだろう。
あの調子ならば少し待つだけで我々五人も遊べそうだ。私は待っても良いのだが、他の皆はどうだろう?
「どうする?やるか?」
「いいね!面白そう!」
「やりましょう!」
どうやら皆乗り気であるらしい。ならば早速とばかりに参加待ちの列に並んだ。それと同時に私達の視界に仮想ディスプレイが現れる。それは右上に待ち番号が表示されたロボットの設計画面であった。
自分の番が回ってきてから設定するのは時間の無駄と言うことか。私の待ち番号は『42』だから…あ、もう『41』に減った。これはなるべく急がなくては!と言っても私はゲームそのものの経験があまりない。ここは他の皆の意見を聞くか。
「こう言うゲームはどんなロボットにするのが正解なんだ?」
「正解なんてないと思うよ?ただ、大まかな方針を決めてからパーツの性能と相談しつつ設計するといいね。例えばスピード重視にするつもりなら、速度の出るパーツに重すぎない武器を選ぶとかね」
「なるほど…ありがとう」
ルビーのアドバイスを聞いた私は、どんなロボットにするのかについて方針を決める。ルビーの言うスピード重視にするか、バランス重視にするか、火力重視にするか…うーん、当然だけどどれにも長所と短所がある。さて、どうするか。
悩んでいても時間だけが過ぎてしまう。よし、ここは火力と防御力に全てを懸けよう!私には初めて触るゲームのロボットを上手に動かせる自信などない。ならば防御力で耐えながら、高い火力で敵を倒す形にするのが良さそうだ。
ロボットのパーツ選択画面を操作して、私は装甲の防御力順で表示させる。そして両腕以外のパーツを最も防御力が高いもので固めた。何故両腕だけは違うのか言うと、重量の問題である。防御力が二番目のパーツの方がかなり軽く、その分を積み込める武装の重量に注ぎ込めると判断したのだ。
その代わり、両腕は手ブレが酷いようなので連射する武器には向かないと書かれている。なら単発の武器か、そもそも武器ではないモノを持たせれば良い。
「よし、完成だ」
こうして私の設計画面で完成したのはまるで戦車のようなゴツいロボットだった。両脚のパーツは二本足から八本足、更に戦車のような履帯にオフロード車めいた大きなタイヤまであって、その中で最も防御力が高かったのが八個のタイヤで出来たパーツである。積載量も多かったのでちょうど良かった。
胴体は重厚でずんぐりむっくりした丸みのある装甲のパーツである。その両肩と背中にも武器が積んであった。右肩にはチェーンガンという連射式の機関砲、左肩には高火力の無反動砲、そして背中には小型のミサイルが詰まったミサイルポッドが背負われている。
先述した両腕にも当然、武装を積んである。右腕には単発式のライフル、左腕には片手用のシールドを持たせた。これで防御力も更に上がるだろう。
そして頭部は半円形で平べったい形状だった。厳つい胴体に比べて随分と小さく見えるが、それがどこか愛嬌を醸し出している。円らな瞳のように見えるカメラも愛らしい。うん、良い感じだ。
「俺も出来たぜェ。それよりもよォ、このゲームは全員が敵なんだよなァ?」
「ああ。あくまでも個人競技であって、協力プレイめいたことをするのはNGらしいからな。それがどうした?」
「じゃあよォ、一番ポイントが低かった奴は罰ゲームってなァどうだァ?」
…ジゴロウが何か言い出したぞ。罰ゲームって、何をさせるつもりだ?私は断ろうと思ったのだが、その前に乗り気な者がいた。ルビーである。
「面白そう!そうしようよ!」
「ふむ。それも良いか」
ルビーが賛同したと言うことは、祖父である源十郎も賛同すると言うこと。この時点で過半数が罰ゲーム賛成派になってしまった。私とアイリスは顔を見合わせてから苦笑しつつ、罰ゲームを設けることを了承した。
ではどんな罰ゲームを行うのかが問題だ。罰ゲームの定番と言えば一発芸やゲテモノを食べるとかだが、何をさせようと言うのだろうか?
「で、何するの?まさか何も決めてない訳じゃないよね?」
「当たり前だろォ。最下位の奴ァ一日だけ、一位の奴の言うことを何でも聞くってなァどうだァ?」
「何でも…?それは流石に…」
「良いですね!やりましょう!」
あ、アイリス?急にやる気になってどうしたんだ?誰を最下位にして、何をさせるつもりだ?彼女とは逆に、私は何だか急に怖くなってきた。
しかし、今更この列から離れようとは思えない。残りの待ち番号は『8』だし、こうなったら最下位だけは避けるように少しでもポイントを稼ぐしかないだろう。
「おっ、俺の番だなァ。ちょいと行ってくらァ」
少しすると一番最初に列に並んだジゴロウの順番が回ってきた。ジゴロウはフッと消え、戦場へ向かったらしい。急に消えるのは知っていたが、となりにいた者が急に消えると少しビックリするな。
ディスプレイを見ると恐らくはジゴロウが乗っているらしいロボットが輸送機から投下されていた。ロボットの胴体は装甲よりも速度を重視したパーツが使われていて、両腕に着けてある武装は鉤爪だけだった。
肩と背中にあるのは武器ではなく増設ブースターである。まさか、鉤爪しか装備していないのか!?ロボットでも肉弾戦をしたがるとは思わなかった。
「むっ、私の番か」
ジゴロウの思い切りが良すぎるロボットに唖然としていると、私の番が巡ってきた。ついさっきまで設計画面だった場所には『出撃まであと三秒』と書かれている。罰ゲームを回避するためにも、腹を括るか!
「私の番だ。勝っても負けても恨みっこなしで行こう」
私がそう言うと返事を聞く時間もなく風景が切り替わる。私はロボットのコクピットにいて、操縦桿を握っていた。そしてコクピットの画面に操作チュートリアルなるものが表示された。
それによると左の操縦桿で前後左右の移動、右の操縦桿で向いている方向の調整が出来るようだ。両方の操縦桿にはスイッチが二つずつあって、それぞれ腕の武装と肩の武装に対応している。背中の武装は肩の武装のスイッチを左右同時に押すと良いらしい。つまり肩と背中の武装を同時に使うことは出来ないのか。注意しておこう。
チュートリアルを終えたところで、コクピットの画面は切り替わってロボットの周囲を映し出した。そこは輸送機の格納庫で、今まさに出入口が開こうとしているところである。出入口が完全に開くと、私が操作しなくとも自動的にロボットは前に進んで地上へ向かって落下していった。
うおおっ!?落下する私を発見したプレイヤーが銃弾を連射して来た!だが、見えないバリア的なもので銃弾は全て防がれている。コクピットに表示されている数値に変化はないので、ダメージは受けていないようだ。
どうやら落下中の敵に攻撃することは出来ないらしい。戦場に降りる前に空中で撃ち落とすことが可能であれば、先に戦場にいるプレイヤーが有利過ぎるし当然の処置か。
あ、私を撃ったロボットが別のロボットに破壊された。上を見る前に周囲を警戒するべきだったようだな。私を驚かせたのは事実なので、同情するつもりは全くないが。
「着地、と…警告音!?」
降下した私が着地した瞬間、コクピットにけたたましい音が響く。画面には右側からロックオンされていると書かれていた。
私は操縦桿を動かし、急いで右側を向く。飛んできた銃弾を盾で受け止めると同時に反撃として右腕のライフルを発射する。狙いを付けずに乱射しただけだったが、運良く敵のロボットに直撃して撃破することに成功した。
コクピットの片隅に『撃破数:1』の文字が表示されている。どうやら最初から死にかけていたらしい。と言うことはあれを追い詰めたロボットが近くにいると考えた方が良い。私の『ロボファイト』は最初から危険極まりない状態からスタートするのだった。
次回は6月17日に投稿予定です。




