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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十五章 這い出でる脅威
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平原より来る者達 その一

「お前で、最後だ!」

「…助かったぞ。感謝する、魔物殿」


 しぶとく生き残っていた化物の脳天に棒を殴り付け、セイは最後の一体に止めをさした。魔物の数は多かったが、統率の執れた闇森人(ダークエルフ)と縦横無尽に移動出来るセイ達が上手く連携することで想定よりも素早く殲滅することが出来た。


 ただ、倒した魔物の死体はキレイさっぱり消えてしまっている。倒すと同時に消えてしまうので、素材は何一つ回収出来ていない。見たことのない魔物であったが故に、セイ達は剥ぎ取りを楽しみにしていたのでガッカリしていた。


 ひとまずは森が危機から脱したことで肩を撫で下ろすセイ達に、闇森人(ダークエルフ)の女性は素直に礼を述べた。彼女らだけでも切り抜けられたとは思われるが、だからと言って助太刀してくれた者を邪険にするほど彼等は恩知らずではないのだ。


「役に立てて良かったぜ」

「折角会いに来たのに、誰もおらなんだら悲しいなんてもんやないからなぁ。セイちゃん、アレ出しや」

「わかってるって」


 七甲に言われるまま、セイは懐からイザームより預かった手形を出して見せる。それを見た闇森人(ダークエルフ)のリーダーは驚いたように目を見開いてから、納得したように何度も頷いていた。


「我々に助太刀してくれる魔物というだけで薄々そうではないかと思っていたが、やはり例の客人の仲間であったか」

「そうだよ!私達はイザームとジゴロウの仲間なんだ!」


 わざわざ闇森人(ダークエルフ)の側に着く魔物などそうはいない。故にもしかしたらと闇森人(ダークエルフ)のリーダーは推測していたようだが、セイの取り出した手形を見て確信に変わったらしい。加えてまだ名前を出していないイザームとジゴロウの名前を紫舟が出したことで、その確信は更に強くなった。


 リーダー以外の闇森人(ダークエルフ)達も客人の仲間であると知って警戒を解くと、今度は好奇心を剥き出しにしてセイ達を観察している。無遠慮な視線を浴びることになったものの、それは直前にあったイベントで彼らは慣れていたので気にするものはいなかった。


「そうか。それでこの森に来たと言うことは我らの隠れ里が目的だったのか?」

「せやけど、真面目な理由なんはセイちゃんだけやで。ワイは色んな敵と戦う経験を積みたいのと、イザームはんが言ってた綺麗な池を見るため…ぶっちゃけ、物見遊山やな!」


 七甲の言う通り、明確な理由があるのはセイだけであった。七甲は本人が言うように経験を積みながら、拠点の近所にある友好的な集団の村を見物してみたいだけである。紫舟とウールに至っては純粋な好奇心でここまで来ていた。


「ふふっ、やはり外の者達は面白いのだな。それとも面白いのは風来者だけか?何はともあれ、立ち話というのも落ち着きがないだろう。我らの里へ案内しよう」


 闇森人(ダークエルフ)達と共にセイ達は彼らの里へと向かって森を歩く。カルと同じくセイの従魔達も危ない果物の香りに惹かれていたが、彼がダメだと言えば素直に諦めていた。


 イザームとジゴロウとカルが来た時は樹上を移動するルートを通ったのだが、今回は人数が多い上に樹上の移動が苦手な者がいたので素直に地上を歩いて向かうこととなった。その道中では当然植物系の魔物と遭遇したが、闇森人(ダークエルフ)達が瞬く間に処理している。


 ただ、植物系の魔物と森の外にいた魔物が戦っている場面にも遭遇した。その場合は全て纏めて排除するのだが、似たような戦闘に十回以上も遭遇していた。


「何やそこら中でドンパチやっとるなぁ。いっつもこんなんでっか?」

「いや、そうではない。ここ数日になって、森の外から侵入してくる者達が増えているのだ」

「あれってー、何なのー?」

「分からん。分からんがあれらは狂暴だ。森の神を刺激させないためにも、旨味は欠片もないが我らは戦わざるを得ない」


 闇森人(ダークエルフ)の証言を聞いて、四人は敵の正体について察しがついた。きっと今この大陸で問題となりつつある()()だろう、と。


「多分やけど、あれは獄獣っちゅう奴等やと思うで。どっかにあるらしい縦穴から地上に出てきとってな、四脚人(ケンタウロス)とかが行き場を失って困っとる。ここまで来とるとは思わんかったけど」

「そうなのか?森の外がそんなことになっているとは…これは我々も他人事ではないな。長老の判断を伺わねばなるまい」


 敵の正体が獄獣という存在だと判明すると同時に、これが自分たちだけではなく大陸全体の脅威であると知った闇森人(ダークエルフ)のリーダーは深刻そうに頷いた。里に戻り次第、イザームと会話もした長老であるラデム・マス・ファーラーンに報告することだろう。


 七甲達が真剣な話をしている中で、リーダー以外の闇森人(ダークエルフ)は持ち前の好奇心を発揮して物怖じせずにセイと彼の従魔、そしてウールと紫舟と会話したりスキンシップをとったりしていた。今いる闇森人(ダークエルフ)は女性だけと言うこともあって、最も会話が弾んでいるのは紫舟だった。


「ウール君の毛、柔らかいねぇ…暖かいし、眠くなってきた…」

「わかるよ、その気持ち!私がもっと小さかった時は背中の上で寝落ちしたことあるもん」

「人をー、ベッドにー、しないでよー」


 数人の闇森人(ダークエルフ)がセイで背中を堪能し、尤もだと言わんばかりに紫舟が頷いている。ウールは普段通り抑揚のない声色だが、セイにはどこか面倒臭そうにも感じられた。


「じゃあセイは新しい仲間を探しに来たのね?」

「ああ。何か心当たりってあるか?」

「なら丁度いいよ。この森って防御力の高い魔物は多いから」


 『誘惑の闇森』において、生態系の頂点に君臨するのは植物系の魔物だ。植物系の魔物にはネナーシのように防御力に乏しい者もいるが、逆にアイリスと同じく防御力が非常に高い者もいる。彼の求める防御力に富んだ仲間の候補としてピッタリであろう。


 また、そんな捕食者から身を守るために進化した他の魔物達も候補に上がる。素早い速度で捕食者の魔の手から逃れる者もいれば、捕食者の牙を通さない防御力を得た者もいる。他にも身を守るために多種多様な方法を身に付けた者達が森には潜んでいるのだ。


「ならしばらく世話になるかもな。世話になる間は獄獣の処理も手伝うぜ」

「クランチャットに書き込んで、と。これで暇な奴等が来るかもしれんで」


 セイは仲間探しに向いている場所だと知って喜び、七甲は闇森人(ダークエルフ)達から聞いた情報をクランチャットに書き込んでいた。気が向けば誰かが来てくれるかもしれないし、たとえ来なかったとしても情報の共有は大事なことである。


 こうして交流を兼ねた雑談に時々戦闘を挟みながら、彼らは闇森人(ダークエルフ)の里まで歩いていくのだった。



◆◇◆◇◆◇



 不死傀儡(アンデスパペット)の製造は順調である。それは単純作業を繰り返したことで、動きの無駄が減って効率が良くなったからだろう。既にジゴロウに預けた数の倍以上が完成しており、このペースなら一週間も掛からずに兵団が誕生することだろう。


 戦いに備えてアイリスは武具を、しいたけは攻撃アイテムや各種薬品を製作している。ジゴロウ達は調練を兼ねて装備の素材を調達に行ってくれた。準備は着々と進んでいる。


「むっ、七甲の書き込みか。『誘惑の闇森』にて獄獣の襲撃を確認、と。あそこにまで来ているとは…思ったよりも事態は逼迫しているのかもしれん」


 大陸の南部にあると聞く縦穴から『誘惑の闇森』まではかなり距離がある。そこまで到達しているということは、『灰降りの丘陵』の全体に広がっている可能性は高い。


 我々の拠点である『霧泣姫の秘都』に殺到していないのは、毎日狩りに向かう四脚人(ケンタウロス)達が倒せるだけ倒しているからだ。それについ最近判明したことだが、秘都の周囲に降り積もる灰を嫌がるらしい。一定の距離よりも近付くことがないのだと言う。


 死瘴灰を嫌っているのか、それとも別の理由があるのか。調べている時間はないが、とにかくここが安全地帯だとわかっただけでも上々だ。ただし、突っ込んでくる者がいないとも限らない。そんな破天荒な個体が現れる前に準備を整えよう。


「ちょっといいかな?」

「羅雅亜?本当に今日は珍しい客が来るものだ」


 私がそろそろ気分転換にお札の製作に移ろうとした時、角で扉を開けた羅雅亜が私の下を訪れた。彼が作業を行う場所を訪れるのは珍しいことで、セイのように相談があるか急用があるかのどちらかだろう。


「そうなのかい?まあ、それよりも大変なことがあるんだ」

「大変なこと?」

「うん。獄獣の群れに疵人(スカー)達が襲われていてね。僕達とミケロとネナーシの四人で助太刀してきたんだ」

「何だと!?」


 羅雅亜は淡々と話しているが、内容はかなりヤバいものだった。疵人(スカー)と言うことはナデウス氏族が襲われたということだろうか?ムーノ殿達が無事なら良いのだが…


「ああ、心配しないでいいよ。襲われてたのは前に会った人達とは違う一族らしいから」

「…そうか。良かったと言ってはならんのだろうが、安心してしまった。だが、それはそれで問題だ。疵人(スカー)の隠形術が通用していないということなのだから」


 ナデウス氏族はその優れた隠形術を用いて脅威から逃れつつ、各地にある疵人(スカー)の集落を巡っていると聞いた。定住している集落の人々もまた、隠形術によって外敵から身を守っていると聞く。その隠形術が通用しないとなれば、危険などというものではないだろう。


 場合によっては一刻も早く事態が差し迫っていることを教えに行き、比較的安全なここで保護しなければならない。ただ、私達の側から彼らを見付ける手段がないのが問題なのだが…


「襲われていた人達はここまで連れてきたよ。チャットに書き込む余裕がなかったから事後承諾になっちゃったけどね」

「賢明な判断だと思う。他の集落にも危機が迫っていることを伝えられればいいのだが、何か方法はあるのだろうか…」

「そのことで疵人(スカー)のリーダーが話したいんだってさ。こっちのリーダーは君だろう?その場に居てもらいたくてね」

「そのために来たと言うわけか。わかった、直ぐに向かおう」


 羅雅亜が呼びに来た理由は理解した。顔見知りとその同族の危機となれば、作業などしている場合ではないだろう。私は羅雅亜と共に避難民の待つ外に向かうのだった。

 次回は9月2日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 臣民ゲットの機会だ! 頑張って恩を売ろう!
[良い点] 現地人との交流にほっこり(無惨な獄獣と植物魔物からメソラシ [気になる点] 疵人の一族って幾つくらいあるんですかねぇ [一言] 思っていた以上に時間が無かったようで。 でも現地人が対処でき…
[良い点] もしかしてプレイヤーがここに来たせいで 何かのフラグが立ったのか…
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