せっせと準備
今回から新章が始まります!
――――――――――
イベントが終了しました。
称号、『山海迷宮特殊ボス初攻略者』を獲得しました。
称号、『山海の話題』を獲得しました。
称号、『山海の行商人』を獲得しました。
――――――――――
昨日はイベントが終わった後、すぐにシラツキに帰還した。それからやることもないのでログアウトするつもりだったのだが、四脚人の子供達に誘われてカルと共に遊び相手になった。商売よりも元気過ぎる子供達の遊び相手の方が疲れた気がする。
そしてログインしたのだが、ログインすると同時に三つの称号を獲得したと通知が来た。三つとも明らかにイベント専用の称号と思われるが、一応確認しておこうか。
――――――――――
『山海迷宮特殊ボス初攻略者』
イベント名、『鮮緑の山、紺碧の海』における迷宮の特殊ボスを初めて攻略した証。
30SPが贈られる。
特定の状況を満たすことが出来たのは運か実力か?
否、その両方を兼ね備えていたからである。
獲得条件:特定のイベントにて特殊ボスを初めて討伐すること。
『山海の話題』
イベント名、『鮮緑の山、紺碧の海』で多くのプレイヤーの話題となった証。
人の噂も七十五日。貴方の噂は良いもの?それとも悪いもの?
獲得条件:イベント掲示板にて一定数以上の異なるプレイヤーが話題とすること。
『山海の行商人』
イベント名、『鮮緑の山、紺碧の海』でイベントの外から持ってきたアイテムを売買した証。
儲かりまっか?ボチボチでんな。
獲得条件:イベント外から持ち込んだアイテムを十人以上と取引すること。
――――――――――
どれも特別な効果はないが、枯渇しつつあったSPのボーナスは非常にありがたい。人類のプレイヤーと違って、私達はSPを貰えることがある住民のクエストとは無縁だからだ。特に私のように能力を多数習得しているとそうなるだろう。
称号の確認は終えたところで、今日から我々は本格的に四脚人が避難してくる原因となった獄獣達との戦いに向けて準備を始めなければならない。フィールドを徘徊する獄獣を狩るのもそうだが、他にもやっておきたいことが幾つもあった。
「うーむ…こうして実際にアイテムに変えてみると凄まじい数になったものだ」
私は所々崩壊した王宮の広間にて、私はインベントリから取り出した一種類のアイテムを眺めて唸った。そのアイテムとは、これまでの冒険とイベントで集めに集めた魔骨である。
インベントリに入っていたのだから正確な数は知っているものの、こうしてアイテムとして山にすると圧巻である。ただ、私の計画ではこの数でも若干物足りない。我ながら無謀に近い計画であるなぁ…
「それでは早速取り掛かるか…不死兵団を作り出すという、夢の計画であり地獄の作業にな!」
無数の魔骨をひたすらに集め続た理由。それは【死霊魔術】を駆使して不死の兵団を結成しようとしているのだ。少し前に考えた机上の空論を現実のものとするつもりなのである。
イベントで売りさばいた『デイウォーカー』も、本来は作り出した兵団の不死の【光属性脆弱】を克服させるために作ってもらった魔道具だ。まだ十分な数が残っているので足りなくなることはないだろう。
「前に不死を作ったのは戦争イベントの時だったか?随分と昔に感じるが、今回は数が必要な兵団作りだ。こだわって少数の強い個体を作り出すのではなく、戦闘力がほぼ一定のそれなりの個体を可能な限り作ることを意識しよう」
しいたけと作り出した不死、牛鬼。あれは当時の技術を最大限まで活かして作ったが、今回は数が必要なので一体一体の性能にこだわるつもりはない。と言うかこだわっている余裕はないのだ。
それに昔何かの本で読んだが、集団戦で必要なのは数と兵士の練度を揃えることだと言う。同じ人数と同じ装備の部隊を戦わせた時、突出した強さの一人がいる部隊よりも全員が大体同じ強さの部隊の方が勝率が良いというのだ。
私はそうなる理由は知らないし、正しい情報なのかも不明だ。ただ、兵士の実力が一定の方が作戦の立案などは簡単だろうと思う。素人判断ながら、今回はこの方針で作り出そうか。
そのためにも、私は最初に骨をその形状と大きさで仕分けすることにした。真っ直ぐなもの、湾曲しているもの、丸みのあるもの。大きいもの、小さいもの、その中間ほどのもの。そしてそれらに当てはまらない例外のもの。こうして大まかにそれらを分けていったのだ。
分別の結果、最も多いのは中くらいの大きさで真っ直ぐな骨であり、逆に最も少ないのは大きくて丸みのある骨だった。具体例を上げると前者は腕や脚の骨で、後者は大型の魔物のものと思われる頭蓋骨である。
結果は予想通りではあったが、最も少ない種類でも百個はゆうに超えている。大型の魔物の頭蓋骨など使い道に困ってしまうが…作業をしながら考えるとするか。
「分別が終わったところで…やるか!」
私は気合いを入れて立ち上がると、必要数の骨を集めて事前に決めておいた大きさと形状へと【錬金術】を駆使して変えていく。その際、私の肋骨を摘出して粉末にしたものを少しだけ混入させた。全体的な質量に対して微々たる量であるが、これで何らかの変化が起きれば儲けものだ。
そんな軽い気持ちで混ぜただけなのだが、骨には目に見える変化が起きていた。混ぜた場所から骨の色が灰色に変色し、明らかに通常の魔骨とは異なるアイテムになったのだ。私は反射的にこれを【鑑定】した。
――――――――――
不死王の妖骨 品質:良 レア度:S
不死王の力の断片が宿る灰色の骨。
力の源たる不死王に近い性質を保っている。
――――――――――
ほうほう?これは私が不死王を冠する種族となったからこそ、作ることが出来たアイテムと考えて良いのか。これはこれで面白い。
――――――――――
【死霊魔術】レベルが上昇しました。
――――――――――
おっと、ここで【死霊魔術】のレベルが上がっただと?今は【錬金術】しか使っていないのだが…私の骨を加工したからだろうか?レベルが上がったのはありがたいが。
『不死王の妖骨』を組み合わせて作り上げたのは、骨で出来たマネキンのような人型であった。歩く骸骨にしようかとも思ったのだが、あれは骨のパーツを揃えるのが難しい。私自身という見本はあれど、これでは量産するという目的にそぐわないのだ。
その一方、こちらは骨を使いやすい形に骨を加工するので、パーツの形状について悩む必要がない。既に決めている規格に合わせるだけで良いのだから。
アイリスが設計した通りに組み上げていく。それに【死霊魔術】を掛けてやれば…
「これで…記念すべき一体目の完成だ!」
完成した骨のマネキンは完成と同時に音も立てずに立ち上がる。動きは想像以上に滑らかで、まるで作り物という感じは全くない。完成度は思ったよりも高いかもしれない。
さて、これがどんな種族となっているのか。私は楽しみに思いながら【鑑定】してみた。
――――――――――
名前:設定なし
種族:不死傀儡 Lv40
職業:従僕 Lv0
能力:【体力強化】
【防御力強化】
【槍術】
【盾術】
【鎧術】
【体力回復速度上昇】
【連携】
【暗視】
【状態異常無効】
【光属性脆弱】
【打撃脆弱】
――――――――――
不死傀儡、つまり不死の傀儡と言うことか。不死に固定されている能力以外は全て事前に決めたものを設定している。来る獄獣との戦いにおいて、こいつらは壁として活躍してもらう予定だ。それを見越した選択である。
それから私は黙々と不死傀儡を作っていく。ただ、四体に一体の割合で弓兵として使うための能力に設定している。
これはシオのような百発百中の射手を育成するためではない。戦国時代よろしく、矢の雨を降らせるための一団だ。集団戦ならば、こういう部隊も必要だろう。
「ふぅ~…ずっと同じ作業と言うのも疲れる。別の作業をして気分転換するか」
作業は繰り返すことでパターン化して、自分なりに効率の良い慣れた方法を身に付けていくものだ。しかし、同じ作業を繰り返すだけというのはぶっちゃけ飽きてしまう。これが同じものを量産することの弊害かもしれない。
都合のいいことに…と言っていいのかわからないが、私にはお札の作成という役目もある。こちらも単純作業の繰り返しではあるが、お札に込める魔術を変えれば作業の内容が変わる。気分転換ならそれで十分だ。
こうして私は不死傀儡を作って飽きそうになったらお札を書く二つの作業を交互に繰り返してコツコツと作業を続けていた。ゲーム内時間で数時間が経過した時、私のいる広間にやって来る者達がいた。
「よォ、兄弟!捗ってるかァ?」
「グオン!」
それはカルを引き連れたジゴロウであった。どうやら彼らは戦っていたらしい。ログを確認すると、カルのレベルが上昇していたからだ。作業に集中するべく通知を切っていたので、今まで気が付かなかった。
「ああ。思っていたより強い兵士が出来そうだ」
「この骨人形かァ…いいねェ。使い捨てにするにゃァ勿体ねェ出来だなァ」
「私も全滅する前提で戦わせるつもりはないよ。ただ、仲間や四脚人よりも優先順位が低いというだけだ」
ペタペタと不死傀儡を触りながらそう呟くジゴロウに、私はそう言った。壁とするために作ったとは言ったが、これは私にとっても折角作った兵士だ。優先すべきは仲間と住民というだけであって、出来る限り消耗は避けたいのだ。
それに獄獣との戦いを乗り越えた後、不死傀儡は進化してより強力な兵士になるかもしれない。それもあって無駄死にさせるつもりは毛頭なかった。
「ほーん…ならよォ、動ける奴等ァ借りていいかァ?」
「うん?構わないが…どうするつもりだ?」
「レベルを上げてきてやろうかと思ってなァ」
「ひょっとしてパワーレベリングという奴か?」
パワーレベリングとは、自分達では勝てない相手を高レベルのプレイヤーの力を借りて倒し、一気に大量の経験値を得ることだ。掲示板によると種族のレベルを一息に上げることが出来るらしい。
しかし、一方で自分自身はまともに戦っていないので能力のレベルは上がりにくい。その結果、種族のレベルに比べて使える武技や魔術の種類が少なくなってしまう。
「どういう風の吹き回しだ?レベルばかり高くて技量のない相手など、兄弟の一番嫌いなタイプだろうに…」
「見くびるんじゃねェぞ、兄弟。コイツらにゃァ、強ェ奴と死ぬ寸前まで戦ってもらうのさァ。んで、俺がトドメを差すって寸法よ」
「…作ったばかりの兵士を壊しかけるつもりか。しかし、それなら能力のレベル上げにもなる。わかった、任せても…」
「話は聞かせてもらったぜ!」
ジゴロウは不死傀儡に死闘を繰り返させて、種族と能力の両方をレベルアップさせるつもりらしい。そう言うことならジゴロウの好意に甘えようと思った時、広間の扉を勢いよく開けて入ってくる者がいた。
次回は8月13日に投稿予定です。




